湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

古典

和歌メモ(古今和歌集・壬生忠岑)

今回は、壬生忠岑の秋風の歌。 壬生忠岑 秋風にかきなす琴の声にさへはかなく人の恋しかるらむ (あきかぜに かきなすことの こえにさえ はかなくひとの こいしかるらむ) 古今和歌集 巻第十二 恋二 586 【語釈】 はかなし…… ・頼りない。虚しい。 ・あっけ…

和歌メモ(古今和歌集・紀貫之)

今回は、古今和歌集の紀貫之の冬の歌。 巻第六に、雪を花に見立てる歌が二首掲載されているので、まとめて怪しい意訳を作ってみた。 冬の歌とてよめる 紀貫之 雪ふれば冬ごもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける (ゆきふれば ふゆごもりせる くさもきも…

和歌メモ(柿本人麻呂・万葉集)

今回は、柿本人麻呂の雪の歌。 沫雪は千重にふり敷け恋ひしくの日長き我は見つつ偲はむ (あわゆきは ちえにふりしけ こいしくの けながきわれは みつつしのはむ) 万葉集 巻第十 2334 ⚪︎沫雪(あわゆき)……積もることなく解けてしまう、はかない雪。 ⚪︎千重…

和歌メモ…葛の紅葉

蔦の紅葉を詠んだ和歌を探している。 前回の藤原定家の和歌の記事に書いたように、平安時代の勅撰和歌集集には、蔦を詠んだ歌が掲載されていない。 和歌メモ・蔦の紅葉(新古今和歌集・藤原定家) - 湯飲みの横に防水機能のない日記 新古今和歌集の蔦の歌は…

和歌メモ・蔦の紅葉(新古今和歌集・藤原定家)

蔦は、古くは万葉集で「岩綱」として詠まれているが、平安時代の勅撰和歌集には「蔦」の歌が見えず、新古今和歌集あたりから、蔦の紅葉が詠まれることが増えてきたという。 今回取り上げるのは、藤原定家の蔦の歌。 詩を歌にあはせ侍りしに、山路秋行といへ…

和歌メモ・古今和歌集(心づくしの秋)

題しらず よみびとしらず、 木の間よりもりくる月の影みれば心づくしの秋は来にけり 古今和歌集 巻第四 秋上 184 古語の「心づくし」は、心を使い尽くす、力を出し切るという意味だという。 現代語だと、細やかな配慮、気配りといった意味になるけれど、古語…

和歌メモ(古今和歌集 藤原敏行)

秋立つ日よめる 藤原敏行朝臣 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 古今和歌集第四巻 秋歌上 169 【ねこたま意訳】 まだクソ暑いし、景色とかバリバリ真夏なんだけど。 この数日かな、風が変わったっていうか、どことなく秋の気配がす…

ねこたま日記(備忘録)

こんにちは。 月曜日は外出せず、火曜日は、長女さんの車の送迎(描画セラピー)のみで、ほとんど歩かず、悲惨な歩数で終わった。 山梨(主に富士急ハイランド)に旅行に行っていた末っ子は、大量のお土産と一緒に月曜日の夜に帰宅。絶叫マシンを乗り倒して…

和歌メモ(彦星の撒き散らした水滴)

今回は、万葉集の七夕の雨の歌。 この夕降り来る雨は彦星のはや漕ぐ船の櫂の散りかも (このゆうべ ふりくるあめは ひこぼしの はやこぐふねの かいのちりかも) ( 万葉集 巻十 2052) 万葉集の時代の人々は、織姫と彦星の遠距離恋愛の物語が大好きだったら…

和歌メモ(雨の歌)後鳥羽院とゲリラ豪雨

今回は、新古今和歌集の後鳥羽院の雨の歌。 忘らるる身を知る袖の村雨につれなく山の月は出でけり (わすらるる みをしるそでの むらさめに つれなくやまの つきはいでけり) 後鳥羽院 新古今和歌集 巻第十四 恋四 1271 *村雨……断続的に、激しく降って通り…

和歌メモ(雨の歌)藤原俊成

藤原俊成の、五月雨とホトトギスの歌。 入道前関白、右大臣に侍りける時、百首歌よませ侍りけるに、時鳥歌 皇太后宮大夫俊成 むかし思ふ草の庵の夜の雨に涙な添へそ山ほとぎす (むかしおもう くさのいおりの よのあめに なみだなそえそ やまほととぎす) 新…

和歌メモ(雨の歌)

古今和歌集の、詠み人知らずの歌。 題しらず かげろふのそれかあらぬか春雨のふる人なれば袖ぞ濡れぬる (かげろうの それかあらぬか はるさめの ふるひとなれば そでぞぬれつる) 古今和歌集 巻第十四 恋歌四 731 *かげろふ…陽炎。存在がはっきりしないも…

和歌メモ(雨の歌)藤原定家

今回は、藤原定家の雨の歌。 五月雨の心を 藤原定家 玉ほこの道行人のことづても絶えて程ふるさみだれの空 (たまほこの みちゆきびとの ことづても たえてほどふる さみだれのそら) 新古今和歌集 232 *玉ほこの……「道」にかかる枕詞。古代では、玉の飾り…

和歌メモ(紫陽花)藤原定家

紫陽花の歌は、万葉集に二首だけ。 一つは前回書いた橘諸兄の歌。 もう一首は、大伴家持の歌なのだけれど、意味の分からない語が含まれているため、解釈が定まっていないという。 その後の勅撰和歌集には、紫陽花の歌は収録されず、私撰和歌集や私家集などに…

和歌メモ(雨の歌)

まず、古今和歌集の、紀友則の歌。 五月雨に 物思ひをれば時鳥 夜ぶかく鳴きていづちゆくらむ (さみだれに ものもいおれば ほととぎす よぶかくなきて いずちゆくらむ) 古今和歌集 153 *夜ぶかく……「夜深く」と「呼ぶ」がかけてある。 紀友則は、紀貫之の…

和歌メモ(雨の歌)

今回は、万葉集の長田王(ながたのおおきみ)の歌。 うらさぶる心さまねし久かたの天のしぐれの流らふ見れば (うらさぶる こころさまねし ひさかたの あめのしぐれの ながらうみれば) (万葉集 巻1-82) *うらさぶる……うら寂しい気持ちになる。動詞「うら…

和歌メモ…藤の花(古今和歌集・僧正遍昭)

藤の花シリーズ。 今回は、古今和歌集の僧正遍昭の歌。 志賀より帰りける女(おうな)どもの、花山にいりて藤の花のもとに立ちよりてかへりけるに、よみて 僧正遍昭 よそに見てかへらむ人に藤の花はひまつはれよ枝は折るとも (よそにみて かえらむひとに ふ…

和歌メモ…藤の花(金曜和歌集・律師増覚)

藤の花の歌シリーズ。 今回は、金葉和歌集の律師増覚の歌。 坊のふぢの花さかりなりけるを見てよめる 律師増覚 来る人もなき我が宿の藤の花誰を待つとて咲きかかるらんん (くるひとも なきわがやどの ふじのはな たれをまつとて さきかかるらん) ✳︎律師…僧…

怪しい藤の花の歌(金葉和歌集・大夫典侍)

今回は、金葉和歌集の藤の花の歌。 金葉和歌集は、白河法皇が源俊頼に編纂させた勅撰和歌集。 白河法皇が二度もダメ出しをして修正させたため、「初度本」「二度本」「三奏本」と、三系統の本が存在しているという、めんどくさい歌集でもある。(三回目が「…

和歌メモ…藤の花(後撰和歌集・よみびとしらず)

今回の藤の花は、後撰和歌集のよみびとしらずの歌。 後撰和歌集は、村上天皇の命で編纂され、958年ごろまでに成立したとされる勅撰和歌集。 編者は、源順、清原元輔(清少納言の父)など、「梨壺の五人」と言われる人々が中心となっていたという。 (「ねこ…

大河ドラマ「どうする家康」(12)氏真

3月26日に放映されたNHK大河ドラマ「どうする家康」第12回「氏真」を、一か月遅れで見た。 (12)氏真 出演者|松本潤 Amazon (Amazonプライム・ビデオ、NHKオンデマンド) 今川氏真の「その後」について、歴史音痴の私が知っていることは、二つ。 今川が…

和歌メモ…藤の花(藤原定家)

今回は、藤原定家の藤の花。 ゆく春をうらむらさきの藤の花かへるたよりにそめや捨つらむ (ゆくはるを うらむらさきの ふじのはな かえるたよりに そめやすつらむ) 藤原定家 拾遺愚草 重奉和早率百首(じゅうほうわそうそつひゃくしゅ) *ゆく春…過ぎ去ろ…

和歌メモ……藤の花(俊子内親王大進)

今回は、平安時代後期の藤の花。 俊子内親王大進(しゅんしないしんのうだいじん)という女性の歌。 久しく音せぬ男につかはしける とはぬまをうらむらさきに咲く藤の何とて松にかかりそめけん (とわぬまを うらむらさきに さくふじの なにとてまつに かか…

和歌メモ……藤の花(大伴家持)

大伴家持の藤の花の歌。 大伴宿禰家持、時じきの藤の花と萩の黄葉(もみぢ)の二物(ふたくさ)を攀(よ)じて、坂上大嬢に贈れる歌二首 わが屋戸(やど)の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が咲容(ゑまひ)を (わがやどの ときじきふじの めずらしく …

和歌メモ…恋の歌二首

恋するは苦しきものと知らすべく人をわが身にしばしなさばや (こいするは くるしきものと しらすべく ひとをわがみに しばしなさばや よみびとしらず 拾遺和歌集 753 【ねこたま意訳】 「愛してる」っていう、あなたの言葉は、お菓子みたいに甘いけど、いつ…

和歌メモ(藤原因香・源能有)

「古今和歌集」の藤原因香(ふじわらのよるか)の歌。 心地そこなひてわづらひける時に、風にあたらじとて、下ろし籠めてのみ侍りけるあひだに、折れる桜の散りがたになれるを見てよめる たれこめて春のゆくへも知らぬまに待ちにし桜もうつろひにけり (たれ…

和歌のメモ(万葉集・依羅娘子の歌)

柿本人朝臣麻呂の妻依羅娘子(よさみのをとめ)の、人麻呂と相別れし歌一首 な思ひと君は言へども逢はむ時いつと知りてか我が恋ひざらむ (なおもいと きみはいえども あわむとき いつとしりてか あがこいざらむ) (万葉集 巻第二 相聞 140) 【意訳】 柿本…

誉謝女王の歌についてAIにしれっと嘘をつかれた件(和歌のメモ)

数日前、SkypeでいきなりBingというAIに話しかけられた。 どうやら、Skypeで会話しながら質問に答えたり、相談に乗ってくれたりするらしい。 面白そうなので、さっそく質問してみた。 普通に検索すれば分かる内容だけど、手っ取り早くまとめてくれるので、便…

和歌のメモ(広河女王と穂積皇子)

広河女王の歌二首 穂積皇子の孫女(めうまご)、上道王(かみつみちのおおきみ)の女(むすめ)なり 恋草を力車に七車積みて恋ふらく我が心から (万葉集 4巻 694) (こいぐさを ちからぐるまに ななぐるま つみてこうらく わがこころから) 【だいぶ盛った…

和歌のメモ

万葉集から。 三角関係だったらしい大津皇子、草壁皇子、石川郎女の歌。 大津皇子、石川郎女に贈る御歌一首 あしひきの山のしづくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしづくに (万葉集 巻2-107) 【多少の深読みを加味した意訳】 山の中で君を待っていたら、僕はび…