古今和歌集の、詠み人知らずの歌。
題しらず
かげろふのそれかあらぬか春雨のふる人なれば袖ぞ濡れぬる
(かげろうの それかあらぬか はるさめの ふるひとなれば そでぞぬれつる)
古今和歌集 巻第十四 恋歌四 731
*かげろふ…陽炎。存在がはっきりしないものなので、「それかあらぬか」との意味のつながりから、枕詞と見る。
*それかあらぬか…それなのか、それではないのか。
*ふる…「古」と、「降る」がかけてある。
*ふるひと…昔、関係していた相手。元カレもしくは元カノ。
読んですぐに連想したのは、竹内まりやの「駅」という歌。
おかげで意訳もそっちに引っ張られてしまったのだけど、後悔はしていない。😐
【怪しい意訳】
春雨の降る日に、見覚えのある服の人を見かけて、胸が震えた。
顔は見えなかった。
でも、あの歩き方、ほんのちょっとしたしぐさ。
昔好きだったあの人だと、すぐに分かってしまう自分が悲しい。
もうとっくに終ってしまった恋なのに。
かげろうみたいに、脆くて儚い関係だったのに。
どんなに月日が経っても、彼にだけは泣かされてしまうのね。
できることなら、さりげなく声をかけて、「元気だった?」って聞きたかったけど、きっと一生無理だと思う。