慢性疲労症候群のkindle本がないかと思って、ストアで検索していたら、読み放題(kindle unlimited)で読める漫画作品が出てきた。
「とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話」(佐倉色 著)
さっそくダウンロードして読了。
サイコホラーとしか思えなかった。😱
意思の疎通に重大な欠陥のある、信じられないほど仕事のできない、大手出版社の編集者、ボーノ氏。
約束を全く守らない。というか守れない。
ミスをごまかすために平気で嘘をつく。
嘘をつくことに罪悪感がないらしく、バレても全く悪びれないし、似たような嘘を繰り返す。
嫌がらせやパワハラならまだ理解できるけれども、このボーノという編集者には、悪意というものが全くないらしいのだ。これは、恐ろしい。
そういう異様な編集者とのかかわりのなかで、気持ちを踏みにじられ続けるうちに、作者は心身を病んでいったという。
やがて、読者向けの1600枚もの色紙を無償で描くことを、ボーノ氏に事後承諾で決められるという、トンデモな事態に至る。
追い詰められた作者は、今後出版社と仕事ができなくなることも覚悟して、Twitterやブログで告発するものの、ネット炎上でさらに精神的に追い込まれてしまう……
kindle ストアで「慢性疲労症候群」と検索して、無関係なこの作品が表示されたのは不思議だけど、分からなくもない。
こんな目に遭ったなら、誰だって免疫系がおかしくなるだろうし、慢性疲労症候群を発症するリスクだって激増するに違いない。
作品内で、実在の大手出版社等の名前が明らかにされているため(KADOKAWA、ねとらぼ)、事実関係の真偽なども問題になったようだ。
告発本という性質があるので、そういうことも問題になるのだろうけど、事実かどうかという以上の説得力というか、物語の力が、この作品にはあると思う。
編集者に仕事の上で踏みにじられ続けても、なぜか限界まで許容して負担を背負い続ける、孤独な新人漫画家の主人公。
編集者に対して激怒してもおかしくないのに、親のDVとモラハラに苦しめられた過去のためか、主人公は自分の感情の暴走を忌避し、本当の望みや希望をも抑圧してしまう。
主人公は子どものころ、描いた漫画を片っ端から親に捨てられ、徹底的に罵られていたという。編集者に漫画家としての尊厳を踏みにじられる状況は、過去の親との関係の再現のようでもあった。
そうした虐待の轍から脱却するためには、自分以外の人間との信頼関係が絶対に必要になるのだけれども、心身ともに極限まで追い詰められて、編集者という人種に強烈な恐怖感を抱くようになってしまった主人公は、他社のまともな編集者から声がかかっても、なかなか応じることができない。
そして、主人公が立ち直ろう、前を向こうとすると、絶妙のタイミングでミスをやらかすなどして、悪意なく心理的な追い込みをかけてくる編集者。
立派なサイコホラーだと思う。
作者はいじめや虐待を扱った作品を描いているという。いつか読んでみよう。