湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

「ざまぁ」堪能装置としての物語

小説家になろう」の作品には、検索に便利なタグがつけられていることが多い。

 

異世界転移

ブコメ

女性視点

残酷な描写あり

 

他にもたくさんあるけど、最近よく目につくのが、

 

 

  ザマァ

  ざまぁ

 

というタグだ。

 

この系列のタグにもさまざまな下位分類がある。

 

イケメンザマァ

ヒロインザマァ

ザマァは最後のほう

国家レベルのザマァ

 

など。

 

「ザマァ」タグの付いている作品には、主人公を不当に虐げたり、罠にはめて破滅させようとする敵役が、必ず出てくる。

 

義理の娘である主人公を幽閉して、あの手この手で虐待し、頃合いを見計らって死なせようとする酷薄な義母と、その連れ子たち。

 

勇者や聖女として異世界から無理やり召喚した主人公のスペックが低いことを理由に、無一文で城から追放し、暗殺部隊まで送りつけてくる王族。

 

王子の婚約者である主人公に濡れ衣を着せて陥れ、未来の王妃の座を奪おうとする、極悪可憐な少女。

 

主人公の運命が理不尽であればあるほど、それに打ち勝った時に、敵役が食らうことになる敗北の痛みも、一層激烈になる。

 

一昔前だったら「勧善懲悪」なんていうラベルがつきそうなパターンだけれど、「勧善懲悪」と「ザマァ」は、必ずしも同じものではないように思う。

 

「ザマァ」系の物語で虐げられているのは、ほぼ主人公一人だけで、その不幸も個人的なものに止まることが多い。主人公の敵役は、主人公さえ虐げていれば満足するような輩がほとんどで、必ずしも社会に仇をなす極悪人というわけではないからだ。

 

だからこそ、主人公に個人的な感情を寄せて読み進めていた読者は、虐げられていた主人公の運命が逆転する爽快感と共に、個人的に恨みを感じる敵役が破滅して苦しむことに対して、罪悪感を覚えずに嗜虐的な喜びを味わうことになる。

 

それが「ザマァ」という感動なのだと思う。

 

現実の生活では滅多に経験することのない「ザマァ」が、小説の中で量産され、消費されていくのは、それを求める人(読者)が多いからなのだろう。

 

作者さんの中には、敵役にも心を寄せて、救済のサイドストーリーを編む方も少なくない。

 

「ザマァ」の洗礼を受けたことから、それまでの悪辣な人生を見直して、地道に生き直す敵役の物語も、それはそれで味わい深いものではある。どちらかというと、私は敵役がちゃんとリサイクル(?)されて真っ当な人間になるお話が好きだ。

 

でも改心も生き直しも難しい敵役も、もちろん存在するわけで、その人々の末路は、いろんな意味で極めて痛いものとなる。

 

お昼過ぎに、kindleの読み放題で読み始めた小説も、「ザマァ」の度合いが恐ろしく激烈だった。あまりにも「痛い」ので、一気に読みきれず、ブログ書きに逃げ出したほどだ。

 

○「もう、いいでしょう。」(綾瀬紗葵 著)

 

 

主人公は王の娘にして、第一王位継承者でもある少女。

 

彼女はなぜか父王に愛されず、神殿に閉じ込められて、無能で腹黒い神殿長とその取り巻きの嫌がらせを受けながら酷使され、孤独な日々を送っていた。

 

彼女には、幼い頃に父王に決められた婚約者がいたけれど、長じて騎士団長となった婚約者も横暴極まりない人物で、国王に見向きもされない彼女を蔑んで、たまに会うたびに暴力を振るうか罵詈雑言をぶつけるだけだった。

 

そんな救いのない暮らしに、突然の転機が訪れる。

 

婚約者が、好きな女が妊娠したという理由で、いきなり婚約破棄を宣言したのだ。

 

主人公はそれまで、人望のない婚約者の不始末を、影でせっせと尻拭いして支えていたのだけど、慕う気持ちはとっくに失せていたため、素直に婚約破棄に同意する。

 

けれども、元々は国王が決めた縁談であるため、当事者だけで決められるはずもなく、主人公は神殿を出て、王城の父王に会いに行く。

 

父王は、実は本心では娘を溺愛していたのだけど、いろいろな事情のせいで態度に示すことができず、遠ざけていたのだということが明らかとなる。けれども成長した娘と会った父王は、名実ともに極甘の親バカに変貌し、国の存続よりも娘の幸福を優先する決定を下す。

 

で、そこからの「ザマァ」展開は、これまで読んだ「ザマァ」系作品の中でも、ほとんど類を見ない「痛さ」だった。

 

主人公に婚約破棄を叩きつけた騎士団長は、怒髪天状態の祖父に呼び出されて、そこで凄まじい制裁を受けることになる。

 

祖父は不始末をしでかした孫の下腹部を驚くべき剣技で切り裂いて、睾丸を切り取ってから(剣で二個の睾丸を串刺しにして見せつけているシーンがあった…)、四肢全部をも切り捨てて、その上で傷口を魔法で焼いて止血し、死ぬことを許可しなかった。それは肉親の温情などではなく、死ぬまで末永く激痛を味わい続けろという、空恐ろしいまでの憎悪による行為だった。

 

彼はその後、回復魔法によって四肢は復元されたものの、睾丸は治してもらえず、股間の激痛に喘ぎながら、無一文の平民として生きるしかなくなってしまったのだった。

 

というところまで、読んだ。

 

ちなみにこの恐ろしい祖父は、不義の関係で出来たひ孫が生まれ次第、見せしめに自ら刺し殺すつもりでいるらしい。主人公が必死で止めようとしているけれども、先を読んでいないので、どうなるかは不明。

 

 

まだちょっと、読む勇気が出ない。(´・ω・`)