湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

ラノベ読書メモ

 

「怒れる獅子と身代わり花嫁」(坂野真夢 著)

 

kindle unlimited(読み放題)で読んだ作品。

 

読みやすくて面白かったけど、お話の中身はだいぶエグかった。

 

他国の王女と自国の王子との結婚初夜を無理やり代行させられた、ヒロインのマリーベル(庶民)が、ものすごい紆余曲折の末に王子と相思相愛の夫婦になるという物語。

 

他国から嫁いできた王女イルゼが、初夜に身代わりを必要としたのには、極めて下世話な理由があった。

 

ここの国の王位継承者には、結婚初夜の夫婦生活を家臣にリアルタイムで観察される上に、事後のシーツまで検分されるという、プライバシー度外視のトンデモなしきたりが存在していた。この物語の世界の王侯貴族は貞節や道徳の観念がはなはだしく薄いようなので、そういうチェックでもしないと、未来の国王が王族と血縁関係全然ナシだった、なんていうことが、いくらでも起こりかねないのだ。

 

で、イルゼ王女も、初夜チェックでバレると破滅する不貞事情を抱えていたため、どうしても処女の身代わりが必要だったのだ。

 

イルゼにとって幸運だったのは、生き別れの双子の妹であるマリーベルの存在を把握していたことだった。

 

もともとイルゼとマリーベルは、父親である国王が侍女に手をつけて産ませた庶子だった。

 

ところが、子どものいない王妃が、双子の一人(イルゼ)を自分の娘にするために奪い、もう一人の赤ん坊(マリーベル)と侍女とを亡き者にしようとしたため、侍女は残った娘だけを連れて隣国に逃亡し、たまたま出会った男と所帯を持ったのだった。

 

その後、イルゼを強奪した外道な王妃が若くして死亡し、別の女性が王妃として立ったため、もともとが庶子であるイルゼは、誰にも顧みられることのない薄い存在になってしまった。そんな生い立ちの寂しさもあってか、イルゼは自己中で外道で酷薄な女性に成長し、自分の護衛騎士に依存執着して、そのまま愛人関係になっていた。

 

騎士のほうもそれなりに外道で酷薄な人間だったものの、イルゼ王女を愛する気持ちは一応本物だったようで、ゆくゆくは国王の許可を得て正式に娶るつもりだったらしい。

 

ところケチで外道な国王が、イルゼが非処女であることも知らずに、敵対国との政略結婚の駒にすることを決めてしまった。

 

外道な騎士は、イルゼを見捨てるほど薄情ではなかったものの、駆け落ちするほどの度胸もなかったため、護衛兼間男として、嫁ぎ先までついて行くことを決意。

 

その上で騎士とイルゼは、イルゼの双子の妹を探し出して、初夜だけ身代わりにすることを計画。騎士の家の忠実な使用人たちも共謀して、他国の王族を騙すための、後先を考えない一大プロジェクトを開始する。

 

一方、マリーベルの義理の父親となった男は、実子である息子だけを可愛がり、マリーベルを虐待した。夫におもねる母親もマリーベルを守ろうとしなかった。

 

リーベルを狙う騎士にとって、この夫婦は実につけ込みやすい相手だった。息子の不始末を理由にちょっと脅しただけで、二人はあっさりマリーベルを騎士に売り渡したのだ。

 

騎士に拉致されたマリーベルは、監禁先の屋敷で徹底的に礼儀作法を身につけさせられ、イルゼによって王女らしい知識や振る舞いを叩き込まれた。

 

そしてイルゼとともに王宮入りし、予定通りに初夜の寝室に送りこまれることになる。

 

ここから先も、だいぶ下世話な話が続く。

下世話の例外はマリーベルと王子との心のつながりだけで、イルゼ関連は徹頭徹尾下世話ラインを突き進む。双子なのに落差がすごい。

 

戦闘狂で脳筋気味のアンドレア王子は、政略結婚には不満だったものの、新婚初夜のイルゼ(実はマリーベル)が恐怖のあまり過呼吸になったのを哀れんで、しばらくは精神的交流にとどめると宣言。そのため、マリーベルが代役を務める夜が何日も続くことになってしまう。

 

夜毎に会話するうちに、アンドレア王子はイルゼ(マリーベル)の優しい人柄を愛するようになり、マリーベルも自分を大切に扱ってくれる王子に恋をしてしまう。

 

心が通いあうにつれてスキンシップも深まっていく。イルゼは身代わりが露見しないように、マリーベルに夜の状況を詳細に報告させて、マリーベルがキスマークをつけられて戻ってくれば、騎士と二人でそれを観察して再現するということまでした。こんな変態カップルに巻き込まれたマリーベルは気の毒としか言いようがない。

 

そうこうするうちに、やがて本当の意味での初夜が完遂され、マリーベルの代役生活は終了。翌日から、イルゼが本来の役割を果たすこととなった。

 

ところがイルゼは、自分にとっての初めての夜に、寝室で王子に睡眠薬を盛って眠らせてしまう。

 

その翌日、イルゼにとって実に都合のいいタイミングで内乱が勃発し、王子は前線に向かうことになる。

 

出陣の直前、イルゼの自室にやってきたアンドレア王子は、前の晩に寝落ちして何もできなかった分の補給を求めようとした。けれどとその部屋にいたのは、イルゼではなくマリーベルだった。

 

そこで王子は、昨夜のイルゼと今のイルゼの身体の特徴(具体的にはキスマークの位置とか)が違っていることに気づき、同じ顔の女性が二人いる可能性に思い至る。もともと、昼間のイルゼは王子に対して冷淡で、鼻持ちならない態度なのに、寝室のイルゼは別人のように暖かい愛情を見せていたこともあり、王子は急いで家臣に調査を命じた。

 

そんな微妙な状況のなかで、マリーベルは王子の子どもを妊娠してしまう。

 

ほぼ同時にイルゼも妊娠。イルゼは王子とは一度も関係していないので、相手が間男騎士であるのは明らかだった。

 

イルゼは妊娠を理由に離宮へと引きこもり、間男騎士と共に、子どもの入れ替え作戦を計画。自分たちの子どもは、マリーベルと騎士の子どもということにして、マリーベルに育てさせた上で、証拠隠滅のために頃合いをみてマリーベルを殺害しようと決めた。

 

危険を感じたマリーベルは、隙を見て逃走し、両親と弟の住む村へと向かう。

 

イルゼが身代わりを使ったという証拠を手に入れた王子が離宮にやってきた時には、マリーベルは既に消えたあとだった。

 

王子はイルゼを軟禁の上、詳しい事情を知る間男騎士を引きずって、マリーベルの捜索に向かう。いろいろあったもののマリーベルは無事発見され、マリーベルに冷たかった両親はきっちり「ざまぁ」されることとなる。

 

イルゼと間男騎士については、作者様の情状酌量が発動したのか、「ざまぁ」発動前に逃亡してしまう。二人のその後については語られないけれども、自己中で酷薄な身重の元王女と、イルゼへの忠誠心以外に何一つ取り柄のない間男騎士の二人が、庶民になって普通に幸せになるとも思えないから、生まれる子どもが気の毒でならない。

 

 

「残念令嬢  悪役令嬢に転生したので残念な方向で応戦します」(西根羽南 著)

 

小説家になろう」で読んだ作品。

書籍化の予定があるらしい。残念ながらAmazonにはまだ書籍情報がなかったけど、表紙の絵を見るのが楽しみだ。

 

なにしろ、主人公の悪役令嬢のビジュアル面での凄まじい残念さが、このお話の大事な要素なのだ。

 

特殊メイクによって顔にとんでもない傷を入れ、肥満を演出するためにドレスの下に着ぐるみレベルの厚さを仕込み、直視すると目がやられるようなデザインのドレスを纏って夜会に現れ、登校するのだ。とても見たい。

 

現代の日本から乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わってしまった四人の少女たちが、転生仲間としての絆と友情を結び、協力してゲームシナリオの不幸な人生を回避しようと奮闘するのだけど、理不尽な強制力が働くためか、どうにもうまくいかない。

 

婚約相手の恋の相手に嫌がらせしたという理由で、婚約破棄されるだけならまだしも、社交界から締め出されたり、外国留学から帰国できなくなったり、修道院に強制送還されたり。

 

仲間たちが次々と「ざまぁ」の餌食になっていくのを見送った、シリーズ四作目の悪役令嬢である主人公は、生き延びるために全力を尽くす覚悟を決めなければならなかった。シナリオの中の彼女は、ゲームのヒロインがいかなるルートを選んでも、最終的に殺される運命にあったからだ。

 

類まれな美少女でありながら、性格的に残念要素を備えていた主人公は、とにかくひたすら残念な令嬢を目指すことにした。誰もがドン引きする残念ファッションを装備し、学業では魯鈍と凡庸を極め、きらびやかな夜会では人が近寄ってこないような奇行を心がけたのだ。

 

ところが彼女がものすごく残念な令嬢になったにもかかわらず、ゲームシナリオ上の婚約者からは婚約の申し込みがあり、相手から一方的に婚約を宣言されたり、既成事実を作ろうとして襲われそうになったりする。

 

シナリオの強制力を痛感した彼女は、殺されないために、本気で戦闘能力を身につけることにした。貴族令嬢の常として基礎体力が全くなかったけれどと、手を血豆だらけにして武術を習い、倒れそうになりながらウォーキングに励み、独学で魔術を磨いた。

 

最強の残念令嬢になった主人公は、ゲームシナリオの運命と戦ううちに、シナリオには登場しなかった相手と出会って婚約することになるのだけど、その婚約者と結ばれるまでの道のりには、さらに命がけの過酷な試練が待ち構えていたのだった…

 

まだ連載が続いているので、主人公の残念さにはますます磨きがかかっていくことだろう。楽しみだ。

 

 

「婚約破棄されたが、そもそも婚約した覚えはない」(西根羽南 著)

 

残念令嬢のお話と同じ作者さんの作品。

こちらも、まだ書籍化されていない作品。

 

貧乏貴族の娘である主人公は、久々に出た夜会で、見ず知らずの高飛車な貴族青年から、いきなり婚約破棄を宣言される。

 

家に帰って父親に確認すると、婚約の事実は確かにあって、父親は敢えて娘に伝えていなかったのだという。

 

ところが、婚約破棄の手続きが完了したあとになって、元婚約者の同じ顔をした青年が家にやってきて、主人公に結婚を申し込む。主人公が即座にお断りするけれども、元婚約者の双子の兄弟だという青年は諦めようとしない。

 

そればかりか、一方的に婚約破棄を宣言した元婚約者までが、復縁してやってもいいと言ってくる。

 

実にややこしい状況の裏には、主人公が全く知らない、とんでもない事情があった……

 

このお話も、まだ連載途中なので、主人公がどういう形でしあわせになるのかは、まだ明らかではない。残念令嬢も、こちらの主人公も、恋愛感情にものすごく疎いところがあるので、恋人の男性がかなり気の毒な状況になるのだけど、そこがもどかしくも面白かったりもする。