湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

ラノベ読んだメモ(小説家になろう)

いっぱい読んだので、感想メモが追いつかない……。

 

面白い作品を書いて読ませてくれる作者さんたちに、感謝。

 

「捨てられ令嬢は錬金術師になりました。稼いだお金で奴隷剣士を購入します」(束原ミヤコ著)

 

凄腕の錬金術師となった元令嬢と、国に売られて奴隷となった元英雄の物語。

 

元令嬢は、義理の妹に婚約者を奪われた上、身ぐるみ剥がれて貧民街に捨てられたところを錬金術の師匠に拾われたものの、なぜか師匠が出奔して行方不明になったため、工房を継いで稼いでいた。

 

それなりの自衛戦力はあるものの、一人で頑張るのには限界があると感じていた令嬢は、敵国の英雄だった奴隷が売りに出されていると聞き、即買いを決意。

 

ところが買い取った奴隷の青年は、隷属の魔法で縛られているにもかかわらず、主人を主人と思わぬ不遜な態度を変えようとせず、あっという間に、元令嬢がせっせと奴隷の青年を世話する関係になってしまう。

 

とはいうものの、似たような孤独を抱えた者同士で、なんだかんだで信頼関係も構築されて、力を合わせて錬金術の仕事を回していた二人だけれど、穏やかな日々は長くは続かなかった。

 

元令嬢を陥れた義妹は、義姉から奪い取った婚約者の王太子が国王に即位したため、王妃となっていた。

 

もともと義姉を深く妬んでいた義妹は、義姉から全てを奪い取って苦しめることを喜びとしていたのだけど、落ちぶれたはずの義姉が錬金術師として身を立てたばかりか、自分の夫よりスペックの高い男を奴隷としていると知って我慢ならず、罠にかけて処刑するために、いきなり手勢を差し向けて逮捕しようとする。

 

身の危険を感じた元令嬢は、奴隷の青年が自分を助けにこないように隷属の魔法で縛った上で強制的にワープさせて逃し、自分だけ捕まって城に連行される。

 

元令嬢は正々堂々と無実を訴える覚悟で捕まったのだけど、待っていたのは人ならざる者に支配されておぞましい存在と成り果て、もはや話の通じる余地もない義妹だった……

 

お話は一応完結しているけれど、未回収のフラグが多数残っているし、気になる伏線もいろいろあるので、続編がきっと書かれるのだと思う。楽しみだ。

 

元令嬢のオタク系女子っぽいキャラが、結構好みだった。

 

イメージとしては、川原泉作品のヒロインに近いかもしれない。悲惨な生い立ちなのに明るくて前向きで、努力家で、妙に飄々としていて、ピュアだけど多少の打算もあって、でも心にはとんでもない孤独と虚無を抱えていて、いつボッキリ折れても不思議じゃないところとか。

 

そういうヒロインに、恐ろしく美形で無愛想で有能で俺様なヒーローが組み合わさるところも、川原泉作品っぽいかもしれない。なんか懐かしいので、いろいろ再読したくなった。「フロイト2/1」とか、「美貌の果実」とか、「笑う大天使」とか。

 

 

「姉の身代わりの急造婚約者ですが、お相手の王子とは仲良くやれてるみたいです」(新道梨果子著)

 

絶世の美女である姉が、第二王子との婚約発表の夜会で、第二王子の親友である他国の王子と一目惚れからの相思相愛状態に陥ったため、急遽その場で第二王子の婚約者に仕立て上げられてしまった妹のお話。

 

いわゆる悪役令嬢もののような定番の「ざまぁ」ストーリーではなく、コメディタッチのホームドラマだった。

 

姉妹や兄弟、友人同士、親子関係の微妙な心理の変化を丁寧に描きながら、刺激的なドラマの中で、エピソードごとにきっちり見せ場をもってくる感じで、うまい作者さんだなあと感心しながら読んだ。

 

 

「追放された聖女は、捨てられた森で訳アリ美青年を拾う  今の生活が楽しいので、迎えに来られても帰りたくありません」(別所燈 著)

 

ほぼタイトル通りに物語が進んでいくのだけど、追放とは名ばかりの実質的な処刑だったり、拾った美青年は余命いくばくもなかったりと、かなりダークなお話だった。

 

主人公の苦しめられ方が半端なく酷かったせいか、「ざまぁ」度数も極めて高かった。

 

「聖女」を苦しめた家族や貴族、神殿関係者、王家などは、全員もれなくグロい最後を遂げた。ついでに国も滅亡した。

 

「ざまぁ」の破壊力が強烈だったので、他が少し霞んでしまうのが、ちょっともったいない感じもあった。

 

追放された直後の主人公が、魔物だらけの森で苦境に陥るどころか、最凶の聖女として無双しまくるシーンには胸のすく思いがした。主人公のキャラが好きだったので、長年虐げられていた彼女のそういう見せ場がもう少し欲しかった気がする。

 

 

「虐げられた公爵令嬢は辺境の吸血伯に溺愛される」(束原ミヤコ著)

 

壮絶な虐待を受けて育った二人が結ばれて、人としての感情や愛情を取り戻すお話だった。

 

公爵令嬢のほうは、実母亡き後、父親とともに屋敷に乗り込んできた後妻と連れ子に家を乗っ取られ、シンデレラ状態に。

 

成人後、彼女を支援しようとした王家の意向で第二王子と婚約するものの、妬んだ義妹に嵌められて暴行され、婚約破棄に追い込まれる。

 

そんな令嬢を、吸血伯と恐れられる辺境伯が金で買い取り、自邸に引き取る。

 

辺境伯の生い立ちも壮絶だった。

 

屋敷の地下牢に囚われていた敵国の将と実母が不倫して生まれた子だったのだけど、実の父は戸籍上の父に殺害され、母はおそらく拷問死、戸籍上の父親もなぜか変死。まだ幼かった辺境伯も地下牢に入れられていて、死体の生き血を飲んで生き延びていたらしい。

 

公爵令嬢も辺境伯も、出会った時点では感情を喪失したような状態だったけど、相手を支えなくてはならないという強迫観念めいた思いが、少しずつお互いの心を血の通った人間らしいものに近づけていき、やがてあたたかな家族となってく。

 

もっとも、公爵令嬢に害をなした者たちへの吸血伯の報復は、それなりに苛烈を極めていた。

 

短編だったけれども、できれば長編で、辺境伯の心の推移などじっくり読みたかった気がする。