「カナヤコ―女鍛冶職人物語」(小栗 左多里 著)
妄想癖が原因でイジメられながら育った少女が、ふとした出会いから鍛冶職人の世界に入り、萎縮しきった後ろ向きの人生から脱却していく物語。
主人公の妄想のレベルはすさまじく、はじまってしまうと現実を完全に意識の土俵外に押し出してしまう。そのせいで仕事にも支障をきたし、恋人も友人もできず、自己評価も下落する一方だったのに、鍛冶という、物を作る世界では、困り物だった妄想が一転してすばらしい才能となる。
その逆転が心地よい。
鍛冶屋の師匠となるおやじさんや、妻子を捨てて蒸発したダメ父が、「いかにもいそうなタイプ」をはるかに通り越して、どこにもいそうにない人になっちゃってるとことかも、よかった。
終わり方が、なんとなく尻切れっぽかったのが残念。
連載されてた雑誌が無くなっちゃったのが理由らしい。ちょっともったいない。
(2005年04月07日)