外を歩いていると、なんだかやけに、autismの人と出会う。
やけにといっても、頻度としては一日に一人ぐらい。
でも全部、違う人だし、出会う場所も全然違う。
autismの人の少なさを思えば、ずいぶん多いのである。
それに何より奇妙なことに、彼らは自分から、私を見つけてやってくるらしいということである。
たとえば私が行きつけのCD屋でDVDの棚を眺めていると、店の外で私に気づいたautismらしい女性が、すーっと店に入ってきて、私のぴったり横に立つ。
ぴったりだけど、密着、ではない。彼らはめったなことで人に触らない。触らないけれど、他人との常識的な対人間隔から見れば 異様なほどの至近距離に、ほんの数秒、あるいは 0.5秒ほど、彼らは滞在する。そして、すっと去っていく。そのときに何か言う人も多い。
言葉はもちろん、私に向かったものではない。意味も取れないことが多い。口調だけが、鋳型にはめて取ったように 気さくで、親しみに満ちている。その、とってつけたような奇妙な言葉を残して、彼らは消えるように去っていく。
思わず私は、施設に行っていて、私のそばにいない息子を心のなかで呼びかける。
ねえ、◯◯。
どうしてだかわからないけど、◯◯の世界が、近づいてきたよ。
(2001年6月14日)
※過去日記を転載しています。