湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

読書メモ(5月16日)チママンダとジョジョ

 

 

ここ数日のX(旧Twitter)でのナイジェリア熱に影響されて、ナイジェリア文学を読みたくなって、Kindleで探してみたら、素敵な短編小節集に出会った。

 

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ「なにかが首のまわりに」河出文庫

 

 

さっそく巻頭の「セル・ワン」という作品を読んだ。

 

ンマナビアという青年が、過激なカルトの引き起こした凶悪事件の容疑者として逮捕され、収容それた警察署で凄惨な虐待を受けたのちに釈放されるまでの経緯が、彼の妹の視点で語られる。

 

兄妹は経済的に恵まれた家庭で育ったのだけど、兄のンマナビアは両親に甘やかされたためか、立派なろくでなしになりつつあった。

 

彼らの住む町には、暴力が溢れていた。

 

若者たちは遊ぶ金を得るために、当たり前のように強盗を働くけれども、警察は役に立たない。

 

ンマナビアたちの家にも強盗が二度入った。

最初のは知り合いの青年で、二度目の犯人はンマナビアだと分かっていた。

 

ンマナビアは強盗を装って、母親の宝石を奪い取り、質屋に持っていったのだった。

 

けれども、両親は警察には言わずに黙っていた。

 

大学教授の父親は、ンマナビアに強盗行為のリポートを書かせただけで、叱責することもなかった。

 

息子に大切な宝石を奪われた母親は、高値で質入れしなかったことを嘆いただけだった。

 

妹は、内心でそんな両親へ強い批判の目を向けているけれども、口には出さずに黙って見ている。

 

妹が、両親や兄への批判を口に出さない理由は分からない。

 

家庭の中で、娘よりも嫡男を尊重する風潮があるのだろうか。

 

ある日、大学で、複数のカルト集団が白昼堂々抗争を繰り広げ、何人も死者を出す凄惨な事件が起きた。

 

それまでカルトに対して非力だった警察も、動かざるを得なくなり、ろくに捜査もせずに怪しそうな若者を片っ端から逮捕するという暴挙に出た。

 

カルトには属していないと言っていたンマナビアも、迂闊に夜に出歩いていたために、巻き込まれて逮捕されてしまう。

 

ンマナビアが収監されたのは、馴れ合いが恒常化した地元の警察ではなく、収監した者を「殺す」ことで知られている、州都の警察署だった……

 

 

(_ _).。o○

 

チママンダ氏は、ナイジェリアの現代作家で、現在46歳だという。

 

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Wikipediaより)

 

「セル・ワン」に描かれているのが、いつ頃のナイジェリアなのかは分からないけれど、ンマナビアが作者と同世代だと仮定するなら、1990年代ということになる。

 

百年ほど前の日本でも、容疑者が警察で撲殺されるということが起きていた。

 

即座に思い起こすのは、大杉栄伊藤野枝(1923年死亡)や、「蟹工船」の作者の小林多喜二(1933年死亡)だけれど、政治犯だった彼らは、国に対して不都合な存在として、良くも悪くも、一人の個性ある人間と認識された上で殺されたと言える。

 

けれども「セル・ワン」のンマナビアたちは、まるで下水溝のドブネズミのように、街から駆除されている。

 

ンマナビアが入れられた檻房は、当たり前のように囚人同士で恐喝が行われ、食事も奪われ、水もまともに供されない環境だった。

 

逮捕直前に肛門に紙幣を隠していたンマナビアは、最初のうちは檻房を取り仕切るボスを金で懐柔するなどして、要領よく立ち回っていた。

 

けれども、息子のかわりに逮捕されたという無実の老人が、他の囚人や刑務官たちに虐待される様子を見るうちに、ンマナビアの心情は変化していく。

 

強者が弱者を踏み躙り、尊厳を奪い取り、死ぬまで追い詰めていく。

 

そんなことが当たり前の様に起きる檻房で、ンマナビアは生まれて初めて、他者の痛みのために憤り、自分の身を顧みずに、強者に対して反抗する。

 

(_ _).。o○

 

ナイジェリアの監獄の描写に、ものすごく既視感を覚えた。

 

既視感の原因は、伊藤野枝でも小林多喜二でもなく、「ジョジョの奇妙な冒険」だ。

 

 

ジョジョの第6部「ストーンオーシャン」は、ほぼ全編、ヒロインの徐倫が収容された刑務所の中で物語が進んでいく。

 

 

冤罪で捕まった徐倫は、ろくでなしの不良だったけれど、無法地帯の刑務所の中で、理不尽な虐待に耐え、命の危険に晒されながら、弱者を守ろうとする正義に目覚め、仲間と助けあって生き延びていく。

 

そういえば徐倫の父親の空条承太郎も、ンマナビアたちの父親のように学者で、娘を救おうと面会に訪れるのだけど、徐倫は自力で心の力であるスタンドを成長させ、結果的には父親を救うことになる。

 

「セル・ワン」ではジョジョのようなスタンド使いは出てこないけど、通じるものはあると思う。

 

 

ナイジェリアでも日本のアニメは見られているというから、もしかしたら、ジョジョシリーズも放映されているかも。もしそうなら、向こうの方の感想を聞いてみたい。

 

 

 

(_ _).。o○

 

 

「セル・ワン」の作中、ここ数日X(旧Twitter)で評判の「ジョロフライス」が登場する。

 

ンマナビアの母親が作って警察署に持って行き、賄賂としてジョロフライスと肉を警察官に渡すのだ。警察官は母親に胃袋を掴まれていた。

 

 

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https://x.com/arikewithdvibe/status/1790397199374840224?s=46&t=fqJFNfD49HT39-kWoxe4kg

 

タイムラインにたくさん流れてくるのを見て興味を引かれていたのだけど、小説に出てきたのを読んだら、どうしても食べたくなって、食材の情報を探してみたら、S&Bのホームページに詳しいレシピがあるのを見つけた。

 

ジョロフライス ~西アフリカ風、鶏肉とスパイスの炊き込みご飯~|レシピ|エスビー食品株式会社

 

香辛料の種類が多いけど、うちにあるS&Bの製品だけで作れるようだ。

 

LINEで亭主にレシピを送ってリクエストしたので、近日中にナイジェリアのご馳走を味わうことができそうだ。