女が女として見られるまでには種々なからだの堰がございます。堰は大切に守ってやらねばなりませぬ。
室生犀星「かげろうの日記遺文」
「蜻蛉日記」の作者の乳母の言葉。
自分の身に起きた第二次性徴が不浄のもののように思えて受け入れられず戸惑う少女に、その変化を大切に守るべき「堰(せき)」であると諭す。
こういう言葉が、男性作家の作品に出てくるということに驚く。
少女の性に対する思いを細やかに吸い取るように描いた上で、その先にある、結婚後の夫への愛憎や、夫を挟んで向かい合う、他の妻たちへの思いや感情の絡み合いが描写されていくので、生々しさが半端ない。
それでいて、醜さや悍ましさではなく、美しさや焦がれるようなあこがれを感じさせる物語になるのは、やはり男性作家だからなのかな、とも思う。
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