十月から公開される緒形直人主演の映画を小説化したもの。当分映画を見に行けるみこみがないので、小説で我慢と思って買って読んでみたら、賢治世界の初心者の私には、期待以上に楽しめた。
いままで断片的にしか知らななくてつながりがよく飲み込めなかった、賢治と法華経とのかかわり、妹トシとの交流と別れ、農業への思いなどが、物語のなかで自然に結びついて一つの賢治像になっていて、詳しい考証のある評伝や作家論などよりも受けとめやすく思われた。
巻末に、各エピソードに関しての四十頁ほどの充実した解説もついている。
(1996年9月27日)
※過去日記を転載しています。