一九一六年から一九一七年にかけての冬、ウィーンやその他の都市で「新しい病気」が突然現れ、それからの三年間であっという間に世界中を席巻した。
この眠り病の症状は、同じ症状を見せる患者が二人といないほど多様なばかりか、あまりにも奇妙だった。
「眠り病」こと嗜眠性脳炎は、十年間で五百万人の命を奪ったあと、一九ニ七年に突然、謎の収束を遂げたという。
スペイン風邪と言われているインフルエンザの第一波は1918年3月とされていて(Wikipedia)、「眠り病」と時期は重なるものの、オリバー・サックス博士は、原因となったウィルスは明らか違うとしている。
その上で、インフルエンザのウィルスによって、「眠り病」を引き起こす脳炎ウィルスの作用が強くなったり、体の抵抗力が弱まったりする可能性は否定できない、と言っている。
同じ時期に起きていた第一次世界大戦(1914年〜1918年)も、人々の免疫を弱める原因だったかもしれない。
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「レナードの朝」という作品を知ったのは、息子が重度の自閉症と診断され、脳に関する情報を手当たり次第集めていた頃だった。
最初に出会ったのは、映画の方だったかもしれない。
映画のなかの嗜眠性脳炎の患者たちは、ドーパミンの前駆物質であるLドーパを投与されたことで、劇的に回復する。
けれども強い副作用もあり、次第に効果は薄れていき、元の状態に戻ってしまう。
息子の障害は脳炎由来ではないけれど、映画の中の患者たちの振る舞いが、部分的に、息子の不自然な身体運動の様子に似ているように思えてならなかった。
それで、なんとか食事でドーパミンを増やす方法はないものかと、ずいぶん調べたりもしていた。
近年になって、自閉症の人の脳内では、ドーパミン受容体が減少していて、それが自閉症発症に関係しているという研究報告が出ているという。
22年前の私の直感は、あながち外れてはいなかったということになる。