(Amazon読み放題)
もともと歴史がものすごく苦手で、室町時代についても高校受験のために上っ面を撫でた程度の知識しかない。
足利義政という名前はさすがに覚えていたけど、つい昨日まで足利義満の息子だと思い込んでいたのだから、ひどいものだ。息子じゃなくて、孫だった。
義政の関連事項として思い出すのは「東山文化」。
高校の修学旅行で、金閣、銀閣と眺めてきて、代々そんな文化遺産を遺したくらいなんだから平和だったのかな、などと漠然と思っていた私が、応仁の乱の始まりがいつだったのかを把握していなかったのは、言うまでもないだろう(恥)。
山田風太郎は、素直で優しい性質の少年だった義政が、利権の亡者のような周囲の者たち引き起こす、愛欲の絡みついた、血生臭い闘争に晒されるうちに、人間にも政治にもすっかり興味が失せて、虚無の果ての美の世界ばかりを望む、酷薄で淫蕩な、恐るべき芸術家になっていくさまを書いている。
そうか、室町時代って、変態が将軍だった時代なのかと納得したからというわけではないけど、読了後、映画「変態仮面」を観た。
原作漫画は読んだことがない。
ただ、パンティをかぶって戦う変態の物語だということだけは知っていた。
とある戦争シミュレーション系のネトゲで遊んでいた頃、プロフィールに、
「それは私のおいなりさんだ」
と書いていた人が何人もいたので、同じ同盟に所属していた女性に、あれは何か有名なフレーズなのですかと質問してみたら、変態仮面という漫画があってですねと、「おいなりさん」が陰嚢である件を含めて、いろいろ教えてくれたのだ。
映画化されたと聞いても、見るつもりはなかったのだけど、Amazonプライム・ビデオでまもなく公開終了とあったので、出来心で視聴しはじめたら、なんだか最後まで見てしまった。
愛欲に溺れた挙句に人間性を失い変態芸術家となった足利義政とちがって、変態仮面は、変態じゃなかった。
とんでもない親から生まれたところは似てるけど、ちゃんと人を愛して、正義のために為すべきことをしようとする、ピカピカの心を持った、純情な少年だった。