長い前書きとやりきれない記憶
具合を悪くして寝込んでいる間、漫画ばっかり読んでいたように思うのに、感想をブログに書いた作品は、とても少ない。
ちかごろ健忘症がほんとにひどい。
読んだと書いておかないと、読んだことすら忘れてしまうことがある。
Kindle版を読むことが増えてきたから、紙の本の重複買いはしなくなったけど、読んだことを忘れてしまうと、過ごしてきた時間をごっそり失ったかのような、やりきれなさを感じてしまう。
やりきれなさは、脳によくない。
やりきりなければやりきれないほど、やる気がどんどんこわれていくから。
この「やりきれない」の「やる」って、「行動する」とはちょっと違う気がする。
気を紛らわす、みたいな意味の「やる」なんだろうけど、「やりきれない」以外の表現で、そういう意味の「やる」を使うこと、いまはほとんどないんじゃないかな。
思いをやる
憂さをやる
心をやる
これで、「思い・憂さ・心を紛らわす」ことだと理解できる世代、もうだいぶ上のほう限定じゃないのかな。
そして話は飛ぶ。
悲しくてやりきれない
「やれきれない」で思い出すのは、この歌。
矢野顕子のアルバム「愛がなくちゃね」で、私はこの「悲しくてやりきれない」という歌を知った。ザ・フォーク・クルセダーズの曲だと知ったのは、1982年にこのアルバムが出てから、十年もたってからだ。
CDではなく、レコードでこの曲を、繰り返し繰り返し聴いていた。
その後、アルバムをCDで買い直してはいないと思う。
iTunesで、探してみようかな。なんか、とても聞きたくなった。
昨日読んだ本のことはすぐ忘れてしまうのに、昔のことはちっとも忘れない。
四十年近い年を経て、気味が悪いほどつややかに残っている記憶が、数多くある。
このアルバムを聴いていたころ、自分を包み込んでいたのは、限りなく絶望に近いやりきれなさだったと思う。絶望しなかったのは、たぶん絶望する方法を知らなかったからだ。愚かで物を知らなかったから、絶望せずに済んだのだ。
何があったかを、改めてネットで語るつもりはない。
私が通ってきた道筋と、類似の物語が、ウェブ上にいくらでも書かれている。本も出ている。
機能不全なひととのつながりのかたち。さまざまな破綻と歪み。そんなところだ。
いまはもう、誰かに責任を負ってもらう必要も、痛む心身やゆがんだ思考パターンと格闘する必要もない。すべて、終った。終らせた。
それでも、当時聞いていた曲を聴くと、いろいろな思いがよみがえる。
悲しくてやりきれないという言葉を聞いて、悲しくてやりきれないと、自ら感じていいのだということを知ったこととか。
もう一曲。「ラーメンたべたい」。
これは別のアルバムだったか。
カセットテープ版を買ったか、自分で録音したかで、カーステレオですり切れるほど聞いたような記憶。
好きな曲だったわけじゃない。
つらいもの同士、友達になる?
話がしたい?
それって何か意味あるの?
そんなことを心の表層では思いながら、反発しながら、悲しくてやりきれないと感じていたのだったか。
生まれてはじめて一人でラーメン屋に入ってラーメンを食べたのは、つい最近のことだ。iPhoneをテーブルに置いて、誰かと文字で話をしながら。
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忘れてしまうとやりきれない。
億劫がらずに二行でも三行でも書いておこう、などと反省しつつ、「はてなブログ」を始めたときから昨日までに書いた日記を、まとめてみた。
半分くらいは、すでに読んだ記憶が薄れ始めていた。あぶなかった。
聖☆おにいさん(14) (モーニング KC)
・読んでる途中でユダあたりから頭が動かなくなったという、情けない日記。その後ちゃんと全部読んだ。
・賛否両論ある作品だけど、私は賛を送りたいと思った。
大西実生子,夢枕獏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(単行本コミックス)
見出しが目立ちすぎて、つらい… - 湯飲みの横に防水機能のない日記
・夢枕獏の小説が原作になっている漫画。この作品で橘逸勢をはじめて知った歴史オンチ。
・もはや超能力の世界。密教だからそういうものかと思いつつ。空海がずいぶん若く見える。ほとんど少年。大陸に渡ったのは中年にさしかかる頃ではなったっけ。
たむらあやこ「ふんばれ、がんばれ、ギランバレー! 」(ワイドKC モーニング)
・お友達だけでなく、自分のカウンセラーさんにもオススメした。
尾崎衣良「君は唇から毒を盛る 」(フラワーコミックス)
・ネット広告に釣られて読んだ漫画。恋愛問題でクズが粉砕されて胸がすかっとする系のお話(ひどいまとめ方)。
・楽しみにしていた最新刊を読んだ感想。物語の終わりが見えてきて淋しい…って、何巻も前からつぶやいてるなあ。
カルロ・ゼン原作、東條チカ漫画「幼女戦記」(7) (角川コミックス・エース)
・これも楽しみに待っていた最新刊。ちなみに幼女なんぞ出てこない。主人公は見た目幼女だけど中身はシカゴ学派を信奉する徹底的な無神論者で合理主義者のオッサン。
ほしばあやこ,松鳥むう,善方裕美「だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調」主婦の友社
・必要に迫られて(?)読んでみた漫画。いろいろ納得。
ハザマ紅実,ベティ・ニールズ「男爵夫人の憂鬱 (ハーレクインコミックス)」
・ハーレクインロマンスを読んでますが何か? と開き直ったブックレビュー。
・人間社会で生きる、人間とは少し違った存在の、マイノリティとしての苦悩と社会全体の葛藤を描いた作品。そのまま障害者に置き換えて読むのは杜撰だろうけど、どうしてもそういう視点になってしまう。だって、いろいろ重なるんだもの。
この十倍以上は読んでる。絶対。
でも忘れてる。
残りの人生そんなにたくさんあるわけじゃないのだから、がさが読まずに、しっとり読もう。