主婦向け「お悩み相談サイト」の類には、読むと目の覚めるような、奇想天外な相談文がときどきあるので、眠いのに眠っちゃだめなときには寄ってみたりする。
奇想天外っていっても日常の範囲内のことだから、科学の常識を無視したような話はないけれど(あればいいのに)、たとえば、
「結婚二十年になりますが、絶対にあけるなといわれていた夫の部屋のクローゼットをこっそりあけてみたら、どう見ても非合法なものと思われる、とんでもないビデオが数千本もみつかりました。どうしたらいいでしょうか」
なんてのを見ると、狭い家に共生していてなんで二十年も「数千本」に気づかないわけ? ビデオってめちゃめちゃ嵩張るよ、とか裏返った声で内心叫ばずにはいられない。
夫婦は所詮他人っていうけど、そこまで「分からない」っていうのは、もはやミステリーの領域。うちの亭主が大学の学生向け授業ガイダンス用プリントにまで書いたという台詞でいうと、
「見たくないから見ない、気がついても言わない、
言ってもきかない。 そして破局を迎える. 」
(押井守「イノセンス」のバトーの台詞)
というやつなのだろうけど、夫婦の間でこういう目隠し状態が成立する背景には、なまじっかのハードボイルドよりも怖い、えぐい心理戦がありそうで、背中がぞーっと寒くなる。で、眠れなくなる。
そこまで怖くなくても、最近すごく不思議に思うのは、配偶者に携帯のデータ見られて浮気が発覚したのだけどどうしましょう、とか、連れ合いの携帯見たら浮気相手からのメールが充満してたんですけどどうしましょう、という相談が異様に多いこと。
どうしてまた、見られちゃ困る携帯を、そこいらへんにほっぽって置くのだろうか。
置くなら置くで、データ消すとか、隠ぺい工作するとか、何か考えりゃよさそうなもんなのに。私には理解不能な現象だ。
しかしこの問題で困ってる人はほんとうに多いようで、さっきテレビつけたら、夫の携帯で浮気の証拠を見つけてしまった妻のための尋問方法を紹介していた。
- ねえ、あなた最近帰り遅くない?
- 浮気してるんじゃないの?
- 疑ってごめんね。信じてるわ。
- ところで、真理子って誰?
ポイントは、「ごめんね。信じてるわ」と、途中で一度、敵を安心させたあと、本題をいきなり突きつけることだそうだ。気が緩んだときに逃げようのない攻撃をすると、ガードする余裕もなく、うっかり泥を吐く率が高くなるんだとか。
なんというか、まあ・・・。
家のなかでこんなエグい戦闘はやりたくない。
むしろフライパンで後頭部かち割ったほうが、よほどすっきりしそうだし、私ならそうする。