服藤早苗「平安朝の母と子」中公新書
読了。
冒頭から、「有象無象に強姦されそうになった母親が、我が子を生贄して貞操を守ったことを巷で賞賛される(子は八つ裂きにされた)」という、大変にえぐいエピソードが紹介されていた本書だけれど、巻末に近づくにつれて、えぐさはますます炸裂し、読了後は胸が悪くなった。
えぐいエピソードの出典は、ほとんどが「今昔物語」だ。
若い頃にある程度読んで(怪しい意訳など作って遊んで)いたから、平安時代のグロさについてはそれなりに知ってはいたけども、服藤氏が引いていた説話のほとんどは未見だった。
住み込みの下働きの娘が病気になったので、外に捨てたら、前からいがみあっていた野良犬と食い合いをして、共に事切れていた話とか。
家の遣水に死体が浮いていたので、隣の藤原道長の屋敷のほうへ押し流しておいたら、道長がそれと知らずに出仕して宮中に穢れを持ち込んだというので大騒ぎになったとか。
子ができないまま年老いた夫婦が、近所の豊かな人に食事を恵んでもらってなんとか暮らしていたけれど、見返りのない者に施しをするのを家の者たちがよく思わないという理由で援助を絶ってしまったため、夫婦で餓死してしまった話とか…
夫を失った女が、育てきれなくなった我が子を捨てたり売ったりする話は枚挙にいとまがなく、その捨て子たちが野犬に食われ、死体の一部が貴族の屋敷や宮中に転がっていることも珍しくなかったとか…😭
平安朝の貴族や庶民には、敬老の精神も福祉の概念も、ほぼなかったらしい。
ただ、弱者への救済が全く行われなかったわけでもなく、藤原氏は、一族の中の食い詰めた女性や子どもたちを保護する施設を持っていて、一族の長が資金を出して運営していたらしい。
また、一部の寺などでも、病人の介護を請け負っていたという。大河ドラマ「光る君へ」の中でも、疫病に罹患した庶民たちが運び込まれている寺で、まひろがボランティアで介護を手伝うエピソードがあった。
けれども、弱者救済は当時の一般的な倫理観に合致したものではなかったようで、病人を道に捨ててはいけないというおふれが、何度も出されたのに、守られなかったのだとか。
「光る君へ」でも、まひろ(紫式部)が自分の屋敷に庶民の子どもたちを招き入れて食事を取らせているのを見た夫の藤原宣孝が、「穢らわしい」と言い捨てていたけれど、当時の貴族の価値観としては、宣孝のほうが常識的だったのだろう。
それにしても、平安朝の貴族たちは、あれほど仏教を重んじて、大枚はたいて寺を建てたり経典を納めたりしていたのに、仏の慈悲の心や不殺生の戒めについては、全く伝わっていなかったのだろうか。謎だ。
亭主の書斎から借りてきて、「平安朝の母と子」と平行して読み始めた。
読みやすいし、面白い。
歴史の復習をしながら、三日くらいかけて、ゆっくり読み進めたい。
メソポ・たみあ「怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶よ夫婦になりました。第二巻 TOブックス
(Kindle Unlimited利用)
読了。
突然、嫁の父親に離婚を強要された最凶夫婦が、クラスメートたちと団結して、父親が用意した新たな婚約者を正々堂々と打ち破り、愛の正当性を証明する。主人公たちのバカップルぶりがブレなくて、楽しい。
まだ続編があるけど、自制した。読み過ぎ、ダメ、絶対。