2006年01月14日
夢野久作風味の悪夢にうなされて目が覚めたのが夜中の二時過ぎ。
外がものすごく騒がしい。
何種類かのサイレンが、ひっきりなしに聞こえる。そのうち一つは、災害が起きたときに自治体で鳴らすものだ。
窓をあけたら、火の粉が見えた。火事だった。
寝ぼけているので距離感が分からない。火の固まりが立て続けに飛び上がるのをながめながら、なぜだか火が出る直前のその家の様子を知っているような気がして、気持ちが悪くなった。たぶん悪夢の名残だろう。
悪夢の中で、私はよく知っている家の中で迷子になって困り果てていた。
その家は現実には存在しないけれども、モデルはあって、たぶん母方の実家と、父方の祖母の実家を融合させたものだろう。
とにかく広くて、暗くて、通ってきたはずの通路が意味なく消える。台所の真上の半端な中二階に入ったとたん、あるはずの階段が見えなくなった。窓の外はまだ明るくて、人の話し声も聞こえるけれど、なぜだか窓に近寄れない。嗅ぎ慣れない発酵食品の匂いに取り囲まれると、よそ者よそ者と責めたてられているかのようで、落ち着かなくてうろうろとその場を歩くと、いつのまにか家の裏手の沢にいる。
そろそろ空が薄暗くなってきた。早く家に戻ろうと思うのだけれど、家はもうどこにも見えない。目の端に気配を感じてふりむくと、夜になった八甲田山の山肌がぞっとするほど迫っている。
逃げるように足を速めて坂を下っていたはずなのに、いつのまにか湯飲みにつがれたほうじ茶をすすりながら薄明かりの居間に座っている。
会ったこともない親戚や、もう死んでしまったはずの身内に取り囲まれて、就職がなかなか見つからないから遠い町に行こうかと思うなどと、自分の声が話しているのが聞こえるけれど、頭の中ではこれはもう二十年も前の光景のはずだとつぶやいている。
とたんに自分の家に帰りたくなる。
仕事なんてとっくにやめていて、三人も子供を育てているということを思い出したころには、これはもう夢だろうと分かっている。
なのに確かに抱いて寝たはずの末っ子がどこにもいない。
不安になってあたりをさぐると、あるはずのない場所で電話が鳴った。取った受話器から聞こえてくるのは「燃えてるから」という誰かの声と、サイレンの音。びっくりして起きあがると、窓の外が妙に明るい。末っ子が、うーといいながらこちらに寝返りしてくる。ベビー服の前がはだけているので、直してやろうと思って手をかけると、おしりのあたりがつるんとしている。えっ、と思ってよく見ると、オムツをしていない。大あわてでオムツを装着し、周囲の布団を調べたけれど、被害はなし。そんなことをしている間にも、サイレンはひっきりなしに走っていく。ここではじめて、窓を開けて外を見たら、火の粉がぽんぽんと飛んでいた。
「火事だ」
と声を出したら亭主が起きてきて、しばらく一緒に火事を見ていたけれど、
「線路の向こうやね」
と言って、また寝てしまった。
私はすっかり眠れなくなり、パソコンを立ち上げて、日記の続きや見ていた夢の記録など書いてみたけれど、保存しようとしたとたんに画面がフリーズして、書いたものは全部消滅。
しかたなく寝直したら、もとの悪夢へずるずると戻っていった。
以下省略。
朝になって、ネットにつないで「まちBBS」を開いてみたら、火事についての書き込みがあったので、サイレンや火の粉が夢でないことは確認できた。
けれどもそれ以外のことは、どこからどこまでが夢なのか、どうもよく分からない。
亭主の話では、私はかなり奇妙な寝言を言っていたらしい。末っ子がオムツをしていなかった件についても、普通ならそんなことはあるはずがないのだけれど、事の前後関係を考えると、そこは事実のような気もする。
もしかしたら、睡眠時無呼吸のせいで、脳細胞がだいぶ減っているのかもしれない……
⭐︎過去日記を転載しています。
⭐︎転載日…2025年1月17日。