湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

読書メモ(2025年1月1日)

ここのブログの昨日のアクセス数が、おかしなことになっている。

 

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今年の抱負と読書記録を書いただけで、いきなり2000超って何???

 

理由が分からなくて怖すぎる。😱

 

ほとんど人が来ないことに甘えて、細かいことを気にせずに好き勝手書いているのに。

 

いままで一番多かったのは、新型コロナで入院していたときの闘病日記だったけど、あの時でも瞬間(一日)最大風速はせいぜい700程度だった。

 

どこかにリンクを貼られているのだろうかと思ったけど、そういうこともなさそうだし。

 

もしかして、「はてな」側の不具合だろうか。

きっとそうに違いない。

 

ということにしておこう。

 

(_ _).。o○

 

三石由起子「これで読破! 更科日記」源光社

 

一応、読了。

 

三石由起子氏の「これで読破!」シリーズは、Kindle Unlimited(読み放題)で利用できるものも多く、よくお世話になっているけど、この「更科日記」は読み放題ではなかったので、買い取った。

 

章段ごとに、原文と現代語訳、解説がまとめられている。

 

解説部分では、主に国文学者の犬養廉氏の講義録が多く引用されている。 国文学者で犬養というと、万葉学者の犬養孝氏を思い出すけれど、Wikipediaによると、その実弟とのこと。

 

「更科日記」執筆当時の歴史的背景や、菅原孝標女に関わってくる人物の素性や関係性、詠まれている和歌の本歌など、私に足りない知識が解説部分でふんだんに語られているので、調べ物に時間を取られずに読み進められて、大変にありがたい。

 

今回初めて「更科日記」を通読してみて、一番印象に残ったのは、当時の受領階級の、女性を伴う旅行の描写だ。

 

律令制では、国司の赴任時に通行する街道には、約16キロメートルごとに駅が設けられ、官吏や使者に食料と馬を提供することになっているけれど、この制度は平安中期には廃れていた可能性があるという。

 

天候悪化や、急な病気などのために、駅までたどりつけず、設備のないところで宿泊することも、きっとあったはずだ。

 

女性や幼い子どもなど、体力のない家族を伴っての赴任の場合、どうしていたのかと、ずっと気になっていたのだけれど、その答えの一部を「更科日記」で見つけることができた。

 

 

ふたむらの山の中にとまりたる夜、おほきなる柿の木のしたに、をつくりたれば、夜ひとよ、庵の上に柿の落ちかゝりたるを、人 〳〵ひろひなどす。

 

「これで読破!更科日記」遠江三河の旅

 

父親の赴任先だった上総国から都に戻る旅の途中、大きな柿の木の下に「庵」を作って泊まったという。

 

この「庵」は、簡単に組み立てられる仮設住宅のようなものだろうか。

 

上総国を発つときの描写に、

 

「年ごろあそびなれつるところを、あらはにこほちちらして、たちさはぎて」

 

とある。

 

「こほす」は、壊す、打ち崩すと意味の動詞。

それまで慣れ親しんだ家を、単に「あらはに」(中が丸見えになるまで)破壊して騒いでいるわけではなくて、旅先に持っていくために、御簾(みす)や几帳、「庵」の壁や屋根になりそうな建具などを取り外していたのかもしれない。

 

同じ上総国からの帰京の途上、足柄山の山麓に宿泊した時には、どこからともなく三人の遊女が現れ、歌などを披露したという。

 

麓にやどりたるに、月もなく暗き夜の、闇にまどふやうなるに、遊女三人、いづくよりともなく出できたり。五十許なるひとり、二十許なる、十四五なるとあり。のまへにからかさをさゝせて、すへたり。

 

「これで読破!更科日記」足柄山

 

この時も作者たちは「庵」を設置して宿泊したようだけれど、遊女が出てくるくらいだから、旅人の利用する野営地として、それなりの設備や地元の人手が近隣にあったのかもしれない。

 

作者が初瀬詣をしたときの道中では、見ず知らずの庶民の家に泊めてもらっている。

 

所はしたにて、「いとあやしげなる下衆の小家なむある」といふに、「いかゞはせむ」とて、そこにやどりぬ。

 

「これで読破!更科日記」 初瀬詣

 

「所はしたにて」(中途半端な場所であるために)、「みすぼらしい下衆の小屋」に仕方なく泊まったというのだから、「所はした」ではない場所であれば、しかるべき宿泊所があるのだろう。

 

「いとあやしげなる下衆の小屋」というのは、おそらくは、地元の庶民の自宅なのだろう。

 

頼んで泊めてもらった家に対して酷い言い草だけれども、貴族の住む寝殿造の屋敷に比べれば、どうしたってみすぼらしく見えたのだろう。

 

NHK大河ドラマ「光る君へ」では、まひろ(紫式部)が父の藤原為時の越前任官に同行していたけれど、道中の描写はあっさり流されていて、宿泊の場面はなかった。

 

越前までの旅程では、駅の設備がしっかりしていて、野宿の必要はなかったのかもしれない。

 

(_ _).。o○

 

「更科日記」とは関係ないのだけど、「これで読破!」シリーズの著者である三石由起子氏の人生相談の動画をYouTubeで見つけたので、聞いてみた。

 

youtu.be

 

奥さんにキレて箸とかちゃぶ台とかを投げつけたせいで逃げられたのに、いけしゃあしゃあと復縁を求めているという相談者(夫)が、三石氏の電話越しの覇気で調伏されている。

 

「これで読破!」シリーズの解説文を読んでいると、時々、妙な具合に風圧の強さを感じることがあるのだけど、この人生相談を聞いて大変に納得した。

 

 

 

 

読書メモ(2024年12月31日)

 

昨日読んだ本のメモ。

 

ラノベと漫画は読み控える」と日記に書いたばかりなのに、どの口が言うのかという感じになっているけど、昨日(去年)のことなので、とりあえずセーフということにしておこう。

 

手島史詞「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?」18

 

最新刊の19巻を読む前に、おさらいのために再読。このシリーズも長くなったので、新刊が出る頃には全巻の人物関係を忘れてしまうことが増えてきたのだ。

 

読んだ小説のの内容を忘れてしまうのは情けない話だけど、新鮮な気持ちで二度目が読めるのは、お得でもあるので、気にしないことにする。

 

 

手島史詞「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?」19

 

ザガンとマルコシアスが、いよいよ直接対決する。

 

そこまでの過程で、一千年に渡って鬼畜な所業と恐怖支配を続けてきたマルコシアスの、真の目的が明らかになるのだけど…

 

目的は愛する人を守るためだとしても、肝心の愛する人が絶対に喜ばない終着点を目指しちゃっているので…

 

マルコシアスは幼少期のザガンの保護者であり、広い意味でなら身内でもあるけれど、この作品は、本当にダメなことをやっちゃってるキャラに対しては容赦のない末路を用意するようなので、次巻あたりで粉砕されて終わるのかなと予想した。

 

いつごろ出るのかな、次巻。

早めに読み返しておこう。

 

 

東條チカ・カルロ・ゼン幼女戦記」31

 

シリーズ最新刊。

めずらしく戦闘シーンがないかわりに、ゼートゥーアとの心理戦が、戦闘に匹敵する緊迫感で描かれている。

 

気に入ったアニメや漫画の原作小説を読まずにはいられない私なのに、「幼女戦記」だけは、カルロ・ゼン氏の原作小説をきちんと読んでいない。読みたいと思ったとき、書籍代の自粛期間だったせいなのだけど、そのまま何年も経ってしまった。そろそろ読みたい気持ちはあるけど、漫画版が素晴らしいので、なんだか満足してしまっている。

 

(_ _).。o○

 

あと、三石由起子「これで読破! 更科日記」を、もうすぐ読み終わる。

 

 

 

 

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天然のライトアップに輝く滝…拾遺愚草、藤原定家の歌

 

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(↑日本にこんな滝はないというツッコミは、AIイラストアプリ「Designer」にお願いします)

 

滝間月

 

やはらぐる光そふらし滝の糸のよるとも見えずやどる月影

 

(やわらぐる ひかりそうらし たきのいとの よるともみえず やどるつきかげ)

 

拾遺愚草  藤原定家

 

【語釈】

  • やはらぐる光…漢語「和光」を和訳したもの。和光同塵、和光垂迹の意。
  • 和光同塵仏教用語。仏、菩薩が本来の輝きを和らげて、塵に穢れたこの世に仮の姿を現し、衆生を救うこと。
  • そふ…添える。
  • よる…夜と、(糸を)縒るとを掛けている。「糸」と「縒る」とは縁語。

 

【意訳】

 

御仏の光が、白糸を縒るかのような滝の水に、輝きを添えているようだ。夜とは思えないほど、月の光が滝に宿っている。

 

……

 

建仁元年(1201年)の十月、後鳥羽院の熊野行幸随行したとき、藤原定家那智の滝を詠んだ歌だという。

 

往復600キロほどを一カ月かけて移動するという熊野詣は、行って帰るだけでも大変だと思うけれど、後鳥羽院たちは旅の途中で何度も歌会を開催し、和歌の研鑽を積んだらしい。

 

当時の後鳥羽院は21歳ほど。ピチピチの若者だ。

 

一方、定家は39歳。若くない。

しかも病弱だったらしく、冬になると酷い咳に悩まされていたのだとか。10月の熊野詣は、地獄のようにキツかったことだろう。

 

詞書の「滝間月」というのは、歌会で出された「結題(むすびだい)」だという。

 

「結題」は、漢字三〜四文字ほどで、二つ以上の事柄をまとめてお題として出す方式で、この場合は「滝」と「月」の両方をお題として歌を一首詠むことを求められている。

 

後鳥羽院の熊野行幸中の歌会では、「結題(むすびだい)」が多く出されたらしい。

 

この歌は、「拾遺愚草」の中では「神祇(しんぎ)」の歌として収録されている。

 

「神祇(歌)」は、勅撰和歌集の部立ての一つで、神に手向けた歌や、祭礼関連の歌、託宣の歌などが該当する。

 

熊野詣の最中に詠まれた歌であり、和光同塵の意味を帯びる「やはらぐる光」という、明らかに仏教的な言葉が読み込まれているので、「神祇歌」であるのは確かだ。

 

定家はこの歌の他にも、建久2年(1191年)に十題百首歌(十のお題に十首ずつ、合計百首)を詠んだとき、「神祇」の歌として、「やはらぐる光」の歌を詠んでいる。

 

やはらぐる光さやかにてらし見よたのむ日吉の七の御社

 

和光同塵の光よ、日吉大社を信仰する私を照らしてご覧ください)

 

この歌では、あからさまに神仏が意識されているけれど、冒頭にあげた那智の滝の歌では、歌人の意識の焦点は、どちらかというと仏の慈悲と叡智の光よりも、月光を宿して輝く滝の水のほうに当たっているように思われる。

 

糸がほどけ落ちるような繊細な滝の姿が、月光に照らされて、夜とは思えないほどに光を乱射している…その情景が歌の主題であり、「やはらぐる光」という言葉は、その情景の神聖さを高めるために「添え」られたようにも思える。

 

「結題」で歌を詠む場合、必ずしも眼前のリアルな情景だけで歌を完結させなくても良かったらしく、熊野詣の歌会でありながら、熊野とは無関係な歌枕を引っ張ってくる場合もあったらしい。

 

なので、もしかしたら定家も、月光で輝く那智の滝を見ながら「やはらぐる光」の歌を詠んだのではないのかもしれない。

 

そもそも、月夜の那智の滝は、本当に「見える」のだろうか。

 

夜中の那智の滝の写真をネットで探してみたら、紫色に光り輝く那智の滝がたくさん出てきたのでびっくりした。

 

どうやら、ライトアップするイベントがあったらしい。😅

 

ライトパープルに輝く那智の滝……

わかりやすくきれいだけど、何かちょっと違うような気がしなくもない。

 

気を取り直して検索しなおすと、星空の下で白く見える那智の滝を撮影した写真が、確かにあった。

 

定家も、同じような那智の滝を見たのかもしれない。

 

【多少怪しい意訳】

 

院のスポ根な無茶振りが酷すぎる。

 

アラフォーの喘息持ちに真冬の熊野詣なんか、させるか普通!? 

 

往復600キロの強行軍とか、春でも死ぬよ?

しかも平地じゃないのよ、山道なのよ!?

一歩間違ったら死の彷徨よ?

 

ここに来るまで、何度かキラキラした極楽浄土っぽいのが見えたから、もうこのまま素直に逝っちゃおうかと思ったのよ。

 

だけど毎回、院のスポ根な掛け声で現世に引きずり戻されちゃうんだよ。こんな風に…

 

「よーし! 今日から那智キャンプだ! 歌会千本ノック、オールナイトで行くぞー! コラ定家! お題をしっかりキャッチしろ! 一球でもミスしたら、一晩中走り込みだからな!」

 

うん、現世じゃないな。地獄だな。

地獄の獄卒より、院のほうが、よっぽど鬼だけどな!

 

骨の髄から体育会系みたいなお方だけど、脳筋じゃないところが、またムカつくっていうか…

 

政治、武芸、各種スポーツ、和歌に絵画に建築関係、なんでもかんでも、ちょっと手をつけただけで、あっという間にその道の達人の域に届いちゃうとか、もうね、人間離れしすぎだよね。

 

「上級者は二球同時に送球しろ! キャッチャーの俺の胸にズドンと来るように、キッチリ狙って仕上げろよ!」

 

また無茶なこと言ってる。

 

お題は「滝間月」だって?

「谷間の月」なら分かるけど、滝の間にどうやって月を挟むんだよ。

 

だいたい、真っ暗闇で滝の水しぶきなんか見えるわけ……

 

ん? あれ、滝、見えてる? 

いまって夜中だよね。

なんでこんなに明るいの?

ひょっとして、また極楽浄土が見えちゃってる?

てことは、今度こそ俺、死にかけてる?

 

あああ、これこそが菩薩様のお慈悲の光……

どうか次こそは、俺様体育会系皇族のいない、平和で素晴らしい来世に、私をお連れください……

 

「ゴルァ定家ァ! 腑抜けるな! 目ぇ食いしばってしっかり詠めェ!」

 

やっぱり現世だったよ…

 

 

 

(_ _).。o○

 

例によって、AIさんに和歌のイメージを伝えてイラストを描いてもらったのだけど…

 

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ちゃんと「熊野古道那智の滝、夜、月夜、平安貴族風の衣装を着た男性たち」等々と指定したのだけど、なぜか、那智の滝が盛大に拡張されてしまった。

 

背中に謎の紋が描かれた揃いの着物を着た怪しい人々も、後鳥羽院藤原定家御一行には全く見えない。

 

少し指示を変えてみたものの…

 

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滝の高さが縮んで、熊野那智大社らしきものが出張ってきた。

 

それもちょっと違うと言ってみたら、今度は滝と人が完全消滅した。

 

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いろいろ指示を入れ替えて、なんとかそれっぽくなったのが、一番上に貼ったイラスト。

 

那智の滝の拡張を撤回させるのが難しそうなので、これで妥協した。😓

 

AIに思い通りのイラストを描いてもらうための、修行の道のりは、長く険しいようだ。

 

 

(_ _).。o○

 

 

今回の歌を調べるのに助けてもらった本。

 

水垣久「拾遺愚草全釈」(全)やまとうたeブックス

拾遺愚草全釈(全五巻合冊)

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  • 作者:水垣久
  • やまとうたeブックス
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吉野朋美後鳥羽院とその時代」笠間書院

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ねこたま日記(12月10日)

こんにちは。

 

今日は夕方から歯科の予約があったので、絶対にすっぽかさないようにと、朝からものすごく緊張していた。

 

KindleiPhoneに、それぞれ二重にアラームを仕掛けていても、何かに没頭していると、あっさりシカトしてしまう。

 

読書や調べ物をして考え込んでいる時が最も危険なので、今日は歯科が終わるまでは和歌関連には近寄らないようにして、お裁縫をすることにした。

 

推しぬいを愛でることを、「ぬい活」というらしい。

 

うちの子は、20センチサイズで、狼っぽい耳としっぽがついている。

 

しっぽはマグネット式で着脱可能なので、お洋服を着せるのに邪魔になることがない。

 

先日縫ったシャツは薄手で、この季節だと寒そうなので、今日はベストっぽいのを縫って、重ね着着せてみた。

 

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自分で作った型紙に不備があって、だいぶ不恰好になってしまったけど、とりあえず暖かそうだから良しとする。

 

推しぬいの型紙の作り方をYouTubeで公開している方がいたので、ちゃんと見て勉強させてもらおうと思う。

 

お正月までにはズボンも冬物にしてあげたい。

 

(_ _).。o○

 

縫い物をしながら、矢野顕子上原ひろみのアルバムを聴いていた。

 

Step Into Paradise -LIVE IN TOKYO-

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その中の一曲が、グローバー・ワシントン・Jr.の「Just The Two Of Us」のカバーだったのだけど、甘やかでロマンチックなオリジナルとは、見える風景が全然違っていた。

 

魔界とか火星とか、およそ生存に適さない環境に、たった二人で放り出された恋人たちが、想像を絶するような敵の軍団と死闘を繰り広げて、崖っぷちに追い詰められながらも辛うじて生き延びて天空に聳える城を目指す、という印象で、とてもラブソングには聞こえないのだ。

 

恋人に愛を囁いているというよりは、峻烈な宿命に臆せずに立ち向かえと叱咤しているかのような矢野顕子氏の緊迫した歌声と、眼前の怨敵に猛攻を叩きつける重戦士の如き上原ひろみ氏のピアノのせいだろうと思う。

 

とても好きだ。

また聞こう。

 

(_ _).。o○

 

歯科診察は、すっぽかすことなく、無事に行けた。次の予約日は、クリスマスイブ。忘れないように、あちこちに貼り紙をしておこう。

 

(_ _).。o○

 

夜は、古典をいろいろと読み漁った。

 

「うつほ物語 ビギナーズ・クラシックス」「角川ソフィア文庫

 

 

Kindle Unlimited(読み放題)で利用できる、「宇津保物語」のダイジェスト版。主要な章段と現代語訳、分かりやすい解説がついている。

 

学生のころに、岩波古典大系の全編を上っ面だけ走り読みしているけれど、ややこしい物語なので、ほぼ記憶に残っていなかった。概要だけでもつかみたいというときは、角川のビギナーズ・クラシックスはとても便利でありがたい。

 

あとは、「更科日記」を少し。

 

 

 

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君のかわりに秋の風吹く(額田王、万葉集)

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今回は、額田王と鏡王女(かがみのおおきみ)の歌。

 

額田王は、天武天皇の妃だけれど、天武の兄の天智天皇とも恋愛関係にあったらしいと言われている。

 

鏡王女は、天智天皇の妃だったけれど、後に藤原鎌足の正妻になった女性。

 

額田王の父親が鏡王であるため、鏡つながりで、二人は姉妹だという説や、同じ一族の中で育ったのではないかという説あるけれど、確かなことは分からないようだ。

 

同じ男性をめぐるライバル同士だったかもしれない二人が、歌のやり取りをしているのが面白い。

 

額田王、近江天皇天智天皇〕を思ひて作れる歌一首

 

君待つとわが恋ひをればわが屋戸のすだれ動かし秋の風吹く

 

(きみまつと わがこいおれば わがやどの すだれうごかし あきのかぜふく)

 

万葉集 巻四 相聞 488

              巻八 秋の相聞 1606

 

【意訳】

 

あのお方の訪問を心待ちにしておりましたら、私のの家のすだれを思わせぶりに揺らす、秋の風が吹きました…

……

 

相聞の歌なので、額田王はこの歌を鏡王女に送ったことになる。

 

同じ男性と関係を持っている女性に、「彼がうちに来ないんですけど」という手紙を送るということは、「お宅のほうにいらしているのでは?」と、暗に問いかける意図があるのかもしれない。

 

問いかけられた鏡王女は、だいぶ返答に困ったのではないだろうか。

 

鏡王女の作れる歌一首

 

風をだに恋ふるはともし風をだに来むとし待たば何か嘆かむ

 

(かぜをだに こうるはともし かぜをだに こむとしまたば なにかなげかむ)

 

万葉集 巻四 相聞 489

    巻八 秋の相聞 1607

 

 

【語釈】

ともし…うらやましい

 

【意訳】

あのお方の訪れがないのだとしても、風の訪れを待ち焦がれているあなたが、羨ましいです。

 

せめて風でもいいから、訪れを期待して待てるのであれば、何を嘆くことがあるでしょうか。私のところには、風すら来ないのですから…

 

……

 

自分のところには風すら来ないと言って、額田王を羨ましがる鏡王女は、ちょっとヤケになっている印象もあるけれど、敢えて自分を下げることで、落ち込んでいる額田王を励ましているようにも読める。

 

 

(_ _).。o○

 

本多平八郎氏による英訳も見てみる。

 

To Emperor Tenji by Lady Nukada

 

No. 488

As I sit longing for my lord,

there comes, instead, the autumn wind making a visit to my bower,

tap-tapping at the bamboo-blind.

 

 H.H.HONDA「THE MANYOSHU    A NEW AND COMPLETE TRANSLATION 」北星堂書店 1967年


long for …待ち焦がれる、思慕する

bower…東屋、夫人の私室、(詩語)隠れ家、(古語)寝室

 

【意訳】

 

天智天皇へ 額田王より

 

我が君を待ち焦がれております時に、秋風が代わりに我が寝室を訪れたのです。竹のすだれをコンコン叩いて…

 

……

 

風が「bamboo-blind」を揺らす音が「tap-tapping」と訳されている。

 

タップ、タッピングというと、トントン、あるいはコンコンとノックするイメージだ。

 

現代日本人が普通にイメージする簾に風が当たっても、トントン・コンコン系の音がするとは考えにくい。

 

英訳で想定されている 「bamboo-blind」は、竹を紐状にせず、厚みのある板状のものを組み合わせた物かもしれない。

 

No. 489

I envy you, my sister, whom

at least the wind calls on; if I

could but wait for a man to come,

I should be glad, and never sigh!

 

LADY KAGAMI

 

H.H.HONDA「THE MANYOSHU    A NEW AND COMPLETE TRANSLATION 」北星堂書店 1967年

 

【意訳】

 

最低でも風には呼ばれているお姉様が妬ましい。

 

せめて誰か男が来るのを待てるなら、私はハッピーだし、ため息なんか絶対つかないんだから!

 

……

 

本多氏は、額田王と鏡王女を姉妹と考えたようだ。

 

実際、姉妹レベルの親しい間柄でなければ、このような微妙な内容のやり取りはできないだろうと思う。

 

 

【だいぶ怪しい意訳】

 

「ちょっとヌカタ姉さん!」

「あら〜カガミちゃん、こんな夜更けに血相変えてどうしたの?」

「どうしたもこうしたも、男に送る手紙をウチに送りつけるなって、何回言ったら覚えるのよ!」

「あらあら、彼が居そうな家に届けるように、侍女たちに頼んだんだけど、またハズレだった?」

「大ハズレよ!」

「ということは、私の一人勝ちね。ふふふ、今日あたりは大穴狙いでイケるかなーって、あの子たち全員、彼がカガミちゃんちに『いる』ほうに賭けてたんだけど」

「ひとんちを大穴とか言うな! てか、侍女まで巻き込んで、亭主のしけこみ先を賭け事にするとか、何考えてるのよ」

「いいじゃないの〜。人生なんて、楽しんでナンボよ」

「まったく…で、ウチらの亭主、近頃はどこに通ってるわけ?」

「さあねえ。興味ないわ」

「あんな亭主ラブな切ない歌詠んでるのに?」 

「送り先、カガミちゃんだもの」

「そういえば、そうだったよ…」

「お姉ちゃんのこと心配して来てくれたのね。ありがと」

「べ、別に姉さんが寂しがってるんじゃないかとか思って飛んで来たわけじゃないからね!」

「ふふふ、そういうことにしておきましょうか。今日はもう遅いし、泊まっていくでしょ?」

「あー、うん、世話になるわ」

「なら今夜は女子会ね! パーっと飲みましょ!」

「ほんと、人生楽しんでるよね、ヌカタ姉さんって…ねえ、実際のところ、姉さんはあの亭主のこと、どう思ってるのよ」

「そうねえ、お通いもほぼないわけだし、このまま自然にフェイドアウトしていったらいいかなーって」

「それでいいの?」

「いいの。なんとなく薄っすらだけど、あの人の周りって、先行きが危うい気がするのよね」

「ん? どゆこと?」

「このままついていったら、諸共に、ぐしゃっと滅びちゃったり、とか?」

「ちょ! ヤバいこと言わないでよ! 人に聞かれたらどうするのよ!」

「カガミちゃんにしか言わないわよー」

「だとしても! 姉さんのそういう予言っぽいのって、わりと洒落にならないんだから」

「うふふ、そんなに褒めなくても」

「褒めてないから。怖いって言ってんの。でもまあ、そんな感じがしてるんだったら、姉さん的にはフェイドアウト一択か」

「カガミちゃんは、どうするの?」

「どうするも何も、ウチはそもそも嫁の数にも入ってない感じだし、既にフェイドアウト完了してるでしょ」

「なら、ほとぼり冷めた頃にでも、また一緒に同じ男と結婚する?」

「またそういうめんどくさいことを…」

「冗談よ。カガミちゃんの次の結婚は、だいぶマシだと思うわよ?」

「それも予言?」

「ただの勘よ。かわいい妹の幸せを願ってる姉の」

「調子いいんだから…でも、ありがと」

 

 

(_ _).。o○

 

二人の元旦那だった天智天皇の死後すぐに、弟の天武天皇壬申の乱を引き起こし、天智の第一皇子だった大友皇子弘文天皇)は自害。

 

額田王の娘であり、大友皇子の正妃だった十市皇女は、壬申の乱を生き延びて、実の父親である天武天皇のところに身を寄せたようだ。

 

十市皇女は三十歳ほどで亡くなってしまったけれど、彼女と大友皇子の血筋は、今上天皇まで繋がっているのだとか。

 

また、藤原鎌足と再婚した鏡王女は、鎌足の次男である藤原不比等の母であるとも言われている。

 

もしもそうだとすれば、摂関政治の絶頂期だった平安中期の主要人物たちは、ほとんどが、額田王と鏡王女の子孫ということになる。

 

(_ _).。o○

 

いつものように、英訳をAIに作画してもらった。

 

冒頭に貼った一枚と、下の一枚は、額田王の歌による。

 

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次の二枚は、鏡王女の歌より。

 

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怖いけど、結構好みだ。☺️

 

 

 

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