歴史に名を残している有名人が、後の世の創作物で散々にいじられるのは、宿命みたいなものかもしれない。
三国志の英雄たちなんて、どんどん人間離れしていって、ゲームの中の呂布が空飛んでいたりする。劉備や曹操が女性になっている作品も結構あるはずだ。
源義経や織田信長みたいに、悲劇的な最期を遂げたりすると、「実は生きていた」というその後の物語がいくらでも作られるし、異世界に投げ込まれて第二の人生を送らされたりもする。
でも火星にぶっ飛ばされたのって、土方歳三ぐらいなんじゃなかろうか。
小学生のころ、エドガー・ライス・バローズの火星シリーズ全巻を、熱烈に愛読していた。
だから、あの世界をそのまま甦らせた「火星の土方歳三」なる小説があると知って、即座に買い求めて読んだ。
すごく面白かった。
火星に行った土方歳三は、素敵だった。
でも歴史音痴な私は、本物の土方歳三がどんな人物なのかほとんど知らなかった。
司馬遼太郎の「新撰組血風録」は読んでいたけど、なんというか、描写のあざとい感じが苦手に思えて、それぞれの人物像があまり心に残らなかった。
その後、多少は幕末のあれこれを学習し、さらに平野耕太の「ドリフターズ」で、島津豊久と死闘を繰り広げる土方歳三を知ったことから、俄然興味が湧いてきた。
「火星の土方歳三」も「新撰組血風録」と、いま読んだら、きっと印象が変わるだろう。そのうち再読しようと思う。