湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

松本ハウスの本

 

Kindle Unlimitedで読める精神疾患関連の書籍はとても多い。

 

その中から統合失調症関連の本を探し出して、片っ端から読んでいる。

 

昨夜はお笑い芸人のハウス加賀屋と、その相方の松本キックの共著である「統合失調症がやってきた」を途中まで読んだ。

 

 

お笑い方面には全く疎い私だけれど、ハウス加賀屋という人のことは記憶していた。

 

6年以上も前になるだろうか。

 

夜、息子の療育教室から帰宅すると、子どもたち(特に末っ子)が必ず見る番組がいくつかあった。

 

 

世界入りにくい居酒屋

グレーテのかまど

バリバラ

 

 

どれも、当時NHK教育(いまはEテレとかいうのだったか)で放送されていたものだと思う。

 

中でも子どもたちが特に気に入っていたらしいのは、バリバラという障害のある方々が出演するバラエティ番組だった。

 

普段テレビ番組にほとんど興味を持たなかった息子も、なぜか熱心に画面を見つめていることが多かったように記憶している。

 

 

私はテレビが苦手なので、きちんと画面に向き合って番組を見ることはあまりなかったのだけど、ある日、バリバラの画面からとんでもなく異様な気配が出ていたために、思わずまともに見入ってしまったことがあった。

 

それはハウス加賀屋が統合失調症患者を演じるドラマだった。

 

記憶しているあらすじを書いてみる。

 

統合失調症のために生活がままならいことに苦しむ青年が、あるとき、障害者だけが集う不思議な酒場(だったと思う)に行き着く。

 

そこの人々は、ダウン症や肢体不自由など、さまざまな困難を抱えながらも、自らの人生に誇りと喜びを持っていて、行き場を失っていた青年を普通に受け入れてくれた。

 

けれどもそこで青年は、障害を完治させるという不思議な木の実(だったと思う)をもらう。

 

その実を食べると統合失調症は消えるけれども、それまでの出会いの記憶も失ってしまうという。

 

青年は悩ん末に木の実を食べることにした。

 

青年の人生を翻弄していた統合失調症は消え、同時に店での大切な出会いの記憶も失われてしまう。

 

けれども健常者として働けるようになった青年は、店で知り合った障害のある友人と再会し、かつてと同じように、ごく自然に親しくなっていく。

 

 

そんなドラマだった。

 

 

ハウス加賀屋の怪演にあっけにとられながら視聴したあと、出演者たちのトークのコーナーになり、ハウス加賀屋自身が統合失調症患者であることが語られた。

 

 

トークの詳細は覚えていないけれども、統合失調症は投薬のような医療行為で「すっかり治る」性質の病気ではないこと、むしろうちの息子の自閉症と同じように、自分の人生に根深く絡んで切り離すことのできないものであるらしいことが察せられる内容だったと思う。

 

松本ハウスの共著である「統合失調症がやってきた」では、コンビそれぞれの生い立ちが語られている。

 

ハウス加賀屋の子ども時代は悲惨としか言いようのないものだった。

 

幼い頃から周囲の人々の意向を先読みして逆らうことのない、極端に従順な子どもだったという。

 

元から柔和な性格だったというのもあるのだろうけども、アルコール依存らしき父親の激しいDVと、息子を英才教育に駆り立てて自由を与えない母親という、見事な機能不全家庭に生まれてしまった子どもとしては、繊細な心を守って生き延びるために、常に自由意志を殺して暮らすしかなかったのかもしれない。

 

最初にハウス加賀屋の異常に気づいた大人は、小学校時代の塾の先生だったという。名門中学を目指す進学塾での授業中、なぜかノートのページをめくることができなくなってしまったハウス加賀屋は、ノートの最初の見開き2ページが真っ黒になるまで書き込みを続けていたという。塾の先生が母親にノートの異常性を連絡したことから、息子がただ事でないことが両親にも伝わり、過酷な塾通いを強いられることはなくなったという。

 

けれども中学に進学後、幻聴が始まった。

授業中、クラスメートに「臭い」と言われ続けていると思い込んだハウス加賀屋は、誰になだめられても自分が臭いのだと信じて疑わず、病院に相談して無理やり脇の下を切開する手術まで受けたけれども、幻聴は解決せず、学校に行けなくなってしまった。

 

高校進学後、機能不全の家庭から離れるようにと精神科の医師に勧められて、グループホームに入居。そこで症状が一段落したときに、漫才をやろうと思い立ったのだという。

 

 

相方の松本キックの生い立ちも凄い。鴨長明方丈記に深く共感するような高校生だったそうで、周囲に取り繕うことなく、無駄と思うことややりたくないことを一切やらずにいた結果、卒業する意義を感じられない大学を中退し、全く眠れなくなり、夜な夜な交番の前に立っておまわりさんを凝視することで精神の安定を図るしかないというどん底の状態を経て、お笑いのオーディションを受けてハウス加賀屋と出会ったのだという。

 

 

ゆうべは、二人がデビューしてから全く笑いを取れなかった時期を経て(ハウス加賀屋の異様さに観客席がざわついただけだったという)、ボキャブラ天国などに出演して超売れっ子になってしまったところまでを、末っ子に音読してもらった。

 

今夜は続きを読んでもらおう。