名古屋大学の研究グループが、自閉スペクトラム症と統合失調症の発症メカニズムが重なっていることを発見したという、三年ほど前の記事を見つけた。
プレスリリースなので概要の紹介にとどまるけれども、「自閉スペクトラム症」と「統合失調症」の両方に浅からぬ縁のあるものとしては、とても興味深い内容だった。
ASDと統合失調症は、精神症状による精神医学的な診断基準により、異なる疾患として区別されていますが、最近の疫学研究からは、両疾患の病因・病態はオーバーラップしている可能性が示唆されています。
病態がオーバーラップしているのは実際に見て知っているけれど、病因のほうも重なっていることが明らかにになりつつようだ。
この研究では「ASDと統合失調症の日本人患者および健常者(全体で5500名以上)を対象」としたという。
どのように被験者を募集したのか気になるところだけど、それについてはプレスリリースには書かれていない。
研究の結果、両疾患の患者の各々約8%で既知の病的CNV(ゲノムコピー数変異)が見つかり、リスク変異のオーバーラップが存在することを確認したという。
また、病的CNV(ゲノムコピー数変異)を持つ患者の症状を解析したところ、知的能力障害の合併率が高いということも分かったという。
さらに、個々のCNV(ゲノムコピー数変異)に基づいて抽出した発症メカニズムでも両疾患にはオーバーラップが存在し、そのなかには次のものが含まれているのだという。
- 酸化ストレス応答
- ゲノム安定性
- 脂質代謝
「酸化ストレス」というのは、活性酸素やフリーラジカルが細胞を傷つける状態のことで、老化や癌、動脈硬化の原因になるものだ。身体は「酸化ストレス」がひどくなると、「抗酸化作用」で対抗(応答)して、バランスを取ろうとする。
「酸化ストレス応答」に問題があれば、身体は活性酸素やフリーラジカルに傷つけられやすくなる。統合失調症と自閉スペクトラム症の人たちは、健常な人よりも、酸化ストレスのリスクを多く抱えているということになるのだろう。
「脂質代謝」の異常ということで真っ先に連想するのは、血液中のコレステロール値や中性脂肪値が基準値を超えてしまう状態だ。
私など、血液検査のたびに中性脂肪と悪玉コロステロールが多すぎてガッカリし続けているけれども、ほとんど同じ食事をしているはずの亭主は常に正常値だったりする。不条理きわまりない話しだけれども、もともと遺伝的に脂質代謝の異常を引き起こしやすい体質を持って生まれてしまったのだとしたら、納得できなくはない。
だけど、ここで言われている「脂質代謝」は、もしかすると、脳の構造に影響するものなのかもしれない。
息子が幼児期に脳の精密検査を受けたとき、ミエリンというものが足りていないのではないかと言われた。
ミエリンは神経細胞の軸索を包み込んで保護するもので、電気コードであれば、金属性の軸の外側のビニールやゴムなどに相当するものだ。
絶縁体で包まれていない電気コードが漏電してしまうのと同じように、ミエリンでくるまれていない脳神経は、情報をきちんと伝えることができなくなる。
そのミエリンの主成分が、脂質なのだ。
息子は自閉症だけれども、統合失調症の患者でもミエリンの異常がみられるのだという。
統合失調症の脳内ミエリン形成不全を世界で初めて画像化
https://www.wakayama-med.ac.jp/intro/press/201510/h27-1019.pdf
脳の中の脂質不足を食事で補えるのかどうかは、医学の素人には計り知れないけれども、ミエリンが足りないと言われた息子には、小さいころからDHAやEPAを多く含む食品を食べさせるように心がけてきたし、時にはサプリメントも使ってきた。
それがどの程度の効果を発揮したかはわからないものの、魚料理、とくに鯖が大好物になってから、息子の聴覚過敏は徐々に改善していき、いまでは音でパニックを起こすことはなくなっている。駅のホームのアナウンスに恐怖して、駅舎を見ただけでパニックになっていた息子は、いまでは電車に乗るのが大好きだ。
統合失調症の陽性症状の状態で入院した長女さん(自閉症)が退院してきてからは、鯖缶の買い置きを切らさないようにしている。
鯖缶一個に含まれているDHAは、DHAのサプリメントの数十個分に相当する。
鯖缶も最近はお高くなりつつあるけれども、サプリメントよりもはるかにコスパがいい。
もしも食事で摂ったDHAやEPAが脳の保全に有効であるなら、それらの必須脂肪酸を豊富に含む食事を取ることで、長女さんの再発を防ぐことができるかもしれない。そうだったらいいなと思う。