(2005年12月10日)
末っ子(生後11ヶ月)を連れて、息子(7歳・重度自閉症)の三時間目の学科の授業に入ってきた。
息子、私の顔を見るなり大感謝区、ではなくて大カンシャクモードを炸裂。
さっさとランドセルを背負い、学帽をかぶって、先生に向かって「さよーなら」を連呼するので、「まだお帰りじゃないよ、お勉強だよ」と説得するも、聞く耳持たず、いきなり担任の先生を平手打ちし、補助の先生につばを吐くという暴挙に出た。
どうやら、強い日差しの下で鉄棒をやらされたあと、休み時間の喧噪にさらされて、視覚、聴覚とも、かなり疲労して辛くなっているところに、私の顔が見えたので、一秒でも早く家に帰りたくなってしまったようだった。
とりあえず、ランドセルと学帽を手の届かない場所に遠ざけてから、着席させ、十分ほど両手を握って「おちつく、おちつく」と言い聞かせると、息子は自分でも「おちつく、おちつく……」とつぶやきはじめ、すっと力が抜けたように穏やかになった。
それで勉強をはじめようとしたのだけれど、息子に与えられた課題は色鮮やかなタイルを指示された通りに並べるというもので、視覚に過敏になっていた息子はまたもや拒否。荒れそうになったので、こりゃダメだと思い、先生に課題を変えていただいた。
ひらがなを記入するプリントを二枚ほど、苛立ちつつも書き殴って仕上げたところで、ようやく本格的に落ち着いてくれたので、持参した単語カードや写真カードを使って、マッチングや読みの練習をしてみたけれど、今日はとにかく見ることがうまくいかないようで、いつもは百発百中の二択まで正答率が五割に下がっている。
見るのが辛いし、聞くのも辛いのだから、見ながら聞くなどという離れ業は、とてもじゃないができないのである。
こういうときは、ほんとうは無理せずに、薄暗くて静かなところで少し休んで、くだものや甘いものなどでカロリー補給するのが、息子の脳には必要なのだと思う。小学校は、やっぱり過酷な場所なのだ。
それでも、辛いからといって、先生を叩いたりつばを吐いたりしていいわけではないので(あとで平謝りした)、そのことについては、やはりきちんと自己コントロールできるように、教えていかなくてはならないだろう。
コントロールは、できるはずなのである。だって、療育教室の先生や親には、そういう行動をほとんど取らないのだから。
学校の先生方は、忍耐づよく息子の相手をしてくださっているけれど、少しナメられてしまっているように思える。
ほんとうは、叩かせる前に止めなければならないのだ。問題行動を繰り返させると、本人も周囲も、どんどんコントロールが難しくなってしまう。
そのためには、常に息子の行動に気を配って、寸止めできるように気を張っている必要がある。マンツーマンで息子の相手をする療育教室の先生や私ならば、それが可能だけれど、大勢の相手をしている学校の先生方は、息子の目には、さぞかし「隙だらけ」に見えているのだろう。
自閉症児が問題行動を取るのは当然と思って寛容に受け止めてくださっている先生方の意識を、説得によって変革し、問題行動を虱潰しに消していくようお願いするのは、正直、気が重い。
それは、いまでも手が足りずに苦労されている先生方に、さらなる負担を強いることになるからである。それよりも、私が毎日学校に行って、荒れている息子の相手をするほうが、はるかに気が楽である。
もっとも、ほんとうはそんなことではいけないとは思う。いつまでたっても親が負担を背負っているのでは、学校が自閉症児にとってのよい教育環境を整える機会を、ずるずると先延ばしにすることになるからである。
でも、施設時代にそういう話し合いが不毛に終わる経験をイヤというほどしてきているので、もうこりごりなのである。
なんか、話が尻切れとんぼになったが、もう眠いのでここで中断。
⭐︎過去日記を転載しています。
(転載日…2024年12月18日)