万葉集
今回は、ちょっと地味系の歌を眺めてみたい。 学校の授業などで万葉集を読まされたころ、「こんなつまんない歌のどこがいいわけ?」といいたくなるような歌、結構見かけなかっただろうか。私は見かけた。たとえぱこんなの。 日置少老歌一首 縄乃浦尓 塩焼火…
以前の記事で引用した、大友家持の歌が気になっている。 夢のごと 思ほゆるかも はしきやし 君が使の 数多く通へば (万葉集 巻4 787) 久須麻呂くん(藤原久須麻呂、藤原仲麻呂の息子)の使いがしょっちゅう来ることに対して家持くんが「夢のように思えるよ」「…
次の三首は、巻四の「相聞」の末尾近くに載っている歌である。 作者は、大伴家持。送った相手は藤原久須麻呂という男性。 大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首 春の雨は いやしき降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも(786) はるさめは いやしきふ…
死と表裏一体の恋というのが、あるらしい。 戀尓毛曽 人者死為 水無瀬河 下従吾痩 月日異 (598) こひにもぞ ひとはしにする みなせがわ したゆあれやす つきにひにけに 《ひどい意訳》 いつのまにか、物が食えなくなっていた。 誰にも言えない。家族にも。 …
万葉集には、「死」という言葉が詠み込まれた歌が五十首近くあるようだ。 四千五百首以上もある歌のなかの五十首を、多いとみるか、少ないと感じるかは、人によりけりだろうが、私は意外に少ないのだなと思った。直情的に「もう会えない! 死ぬ!」とか「苦…
前から気になっていることがあった。だけど調べてみても、分からなかった。それで、亭主に聞いてみた。 「ねえ、聞きたいんだけど」「なんや」「万葉集の時代に、ゲイの人っていたの?」「え?」「古い時期でわかんなかったら、桓武帝のあたりでもいいんだけ…
今日も万葉集の巻十二より。二首。 我背子之 朝明形 吉不見 今日間 戀暮鴨 (2841) わがせこが あさけのすがた よくみずて けふのあひだを こひくらすかも 朝烏 早勿鳴 吾背子之 旦開之容儀 見者悲毛 (3095) あさがらす はやくななきそ わがせこが あさけのす…
今日は再び万葉集。巻十二。 前回の伊勢物語の軽薄ナンパ男の歌に食傷したから、もう少し純な歌を。 妹門 去過不得而 草結 風吹解勿 又将顧 一云 直相麻弖尓 (3056) いもがかど ゆきすぎかねて くさむすぶ かぜふきとくな またかへりみむ 一云 ただにあふま…
たぶん、全部の歌に目を通したことはある。 でも覚えているのは、ほんの少しだ。 亭主にも聞いてみた。 「全部おぼえてる?」「万葉集? ちゃんと記憶しとるのは十分の一やね。見て思い出すので、半分ぐらい。万葉仮名で書いてあるのは覚えやすいけど、正訓…