湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

歴史音痴と大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2)

第二回、「佐殿の腹」を見た。

 

歴史のなかで、私が一番興味があるのは、食生活、食文化だ。人の名前はさっぱり覚えられないけど、食べ物のことなら覚えやすい。

 

第一回の放映では、宴会シーンや厨のシーン、頼朝の食事シーン、おやつ立ち食いシーンなど、食べ物の出番が多かったので、ドラマそっちのけで膳や皿の上を凝視していた。

 

でも残念なことに、北条の館は昼間も薄暗いので、メニューをしっかり確認できなかった。

 

時代考証の方は、たぶんそういうところにも慎重に配慮されているのだと思うので、ファンブックなどでぜひ公開してほしいと思う。ひょっとしたら、もう出てるかな。探してみよう。

 

 

今回は、頼朝の偏食のエピソードがあった。

 

北条家の人々に渡されたメモ書きには、頼朝の好物が五つ並んでいた。

 

かに(蟹)

くり(栗)

あをな(青菜)

うり(瓜)

かうし(甘子)

 

「かうし」がわからないので亭主に聞いたら、「こうじ」、ミカンのことだという。

 

小骨の多い魚が苦手。

貝など、食べるのに手間のかかるものも嫌い。

甘い果物が好き。

 

 

そんなワガママ坊ちゃんの頼朝に、政子は小骨を全部取り去った鯵を用意して食べさせた。

 

お膳には、他に玄米ごはん、瓜を切ったらしきもの、汁物のお椀があったようだ。

 

 

瓜は、「まくわうり」とも呼ばれて、平安時代には秋の味覚として楽しまれていたようだ。

 

津軽生まれの私は、幼い頃に、祖母たちがメロンのことを「まぐぁ」と呼ぶのを聞いている。マスクメロンだろうとプリンスメロンだろうと、あの系列の果物はすべて「まぐぁ」だった。

 

その後、「まくわうり」という単語の存在を知って、津軽弁の「まぐぁ」は「まくわうり」のことだったのだなと気がついた。

 

亭主の地元(兵庫県)では、「まっかうり」というそうで、いまも親戚が栽培しているとか。

 

ドラマの中で頼朝が食べている瓜は、アボカドみたいに濃い緑色のものだ。私の知っている「まくわうり」の実は、もっと淡い色だったように思うから、品種が違っているのだろう。

 

現在栽培されている「まくわうり」を調べてみたら、北海カンロと言われる品種の皮側の色合いが、メロンよりも濃い緑色のようだ。

 

北海カンロ | 農産品紹介 | JA月形

 

 

機会があれば、食べてみたい。

 

 

(_ _).。o○

 

 

今回は、衣装にも意識を向けてみた。

 

ドラマに登場する坂東武者たちは、ほとんどみんな「直垂(ひたたれ)」という着物を着ている。

 

ただ、第一回目の北条時政は、地味な灰色の直垂姿で宴会に出ようとして娘の政子に叱られて、あざかやな黄緑色の水干(すいかん)に着替えていた。

 

今の着物と同じような前合わせの直垂とちがって、水干は丸襟で、宮廷貴族っぽい印象になる。

 

さらに、直垂は全身同じ布で作られていて、ちょっと野暮ったく見えるのに対して、水干だと上下が違う生地になるので、コントラストが目を楽しませてくれる。

 

東武者の目には、時政の水干姿は、とっても雅なファッションに見えたのかもしれない。

 

坂東…関東に住む人々の都への憧れや崇敬は、ドラマのなかでいろいろな形で描かれている。

 

京都からの土産物、洗練された衣装、都から迎える後妻。平清盛への畏怖の念も、そこに混じりあっている。

 

 

頼朝を担ごうとしている坂東武者たちは、平家への反感は強そうだけど、都の文化に対しては素直に価値を置いているように見える。

 

けれどとドラマの主役の北条義時には、いまのところ、都や平家を強く意識している様子がない。

 

義時が大切に思うのは、まず身内の安寧であり、坂東武者の穏やかな暮らしなのであって、それを脅かすようなものがあれば、まず排除の気持ちが動く。

 

源氏嫡流の頼朝も、義時にとっては、当初は身内に不協和音と危険をもたらす異物にすぎなかった。

 

 

けれども頼朝は、今回のラストで北条義時に向かって、それまで誰にも見せたことのなかった心の内を、義時一人だけに明かしてみせ、

 

「法王様をお支えし、この世をあるべき姿に戻す!」

 

と宣言する。

 

その瞬間、頼朝は、義時の心の中で、守るべき「身内」に変貌してしまったらしい。

 

頼朝という人の、なんというか、寄生獣的な気持ちの悪さは、このあたりにあると思う。

 

平治の乱で処刑されるはずだったのに、敵側の中に助命に動いた人々がいたために、伊豆流罪で済んでしまう。

 

流罪されてからも、援助してくれる人々によって生活が守られる。上等な着物が用意され、偏食にも細々と配慮される。

 

監視者である伊東氏を後ろ盾にしようとして失敗し、伊東祐親に討たれそうになっても、今度は北条が命を張って守ってしまう。

 

寄生した相手から養分を吸い上げ、手足として働かせ、いいように振り回し、自分はみるみるうちに肥大して戦力を増強し、子孫も増やす。身内に不具合なパーツがあれば、アポトーシスも厭わない。

 

化け物だと思う。

 

でも結果的には、寄生獣、じゃなくて頼朝の嫡流は残らず死に絶え、義時の子孫が代々執権として続いていく。

 

頼朝とその信奉者に振り回されるうちに、がっつり心を掴まれて寄生されてしまった義時の心の中で、これからどんな変化が起きていくのだろう。