息子(23歳・重度自閉症)にデパケンを処方していただいてから六日になる。
(敷いてあるハンカチは仙台で買った伊達政宗キティちゃん)
一日二回、夕食後に一錠、寝る前に一錠。
けっこう大きな錠剤だけど、幼少期からビタミンなどのサプリ類を飲むのに慣れているので、いやがらずに飲み込んでくれる。
飲み始めた翌日には、息子の行動に変化が現れた。
まず、常同行動が激減した。
とくに、同じことを何度でも聞いてくることが、一切なくなった。
これまでの息子は、ショートステイの前日になると、ほとんど一日中、
「あしたおとまり?」
という質問を繰り返していた。回数を数えたことはないけれど、おそらく一日に数百回は繰り返していたと思う。
「あしたおとまり?」
「そうだよ」
「あしたおとまり?」
「うん。◯◯(介護施設名)におとまりだよ」
「あした、◯◯におとまり?」
「おとまりだよ。同じことを」
「なんかいもいわない! あしたおとまり?」
こんな感じで、どのように応答しても、何か別のことで気をそらそうとしても、とまることがなかった。ちなみに問いかけに反応しないようにしても、余計に繰り返しが増えるだけだった。
繰り返し質問するのは、ショートステイや買い物に出かけることなど、息子が大好きな行動に関するものばかりだ。
楽しい予定を待つこと自体も、息子にとっては多大なストレスになるのだと思う。
同じことを何百回も繰り返して聞かれることは、家族にとっても小さくない負担だった。阿鼻叫喚の大パニックよりはずいぶんマシだけど、休んでくつろいでいても、本を読んでいても、
「あしたおとまり?」
「あしたおとまり?」
「あしたおとまり?」
「あしたおとまり?」
「あしたおとまり?」
と聞かれ続けると、地味にメンタルが削られていくのだ。
それが一日二回のデバケン服用で、キレイさっぱり無くなってしまった。
心の底からありがたいと思う反面、どうしてそんなにすぐに効くのだろうという疑問も生まれる。
ウィキペディアによると、デパケンの主成分であるバルプロ酸ナトリウム(Sodium valproate、略称: VPA)には、次のうよな作用があるのだという。
デパケンは、てんかんや双極性障害、片頭痛に対して処方される薬だけれど、息子のような発達障害の気分変調やイライラに対しても処方される場合がある。
うちの長女さん(自閉症)も、中学生のころ、一時期処方されていたのだけど、残念ながらはっきりした効果はなかった。
けれどもGABAのサプリで大パニックが落ち着く息子ならば、もしかしたら効くのではないかと思っていたし、ぜひとも効いてほしいと願っていた。
どうやら願いは、かなえられつつあるようだ。
デパケンを処方してくださったS先生は、薬で落ち着いて問題行動が減っていくにしたがって、コミュニケーション面でのスキルが改善し、意思疎通がしやすくなっていくのではないかとおっしゃった。そうなってほしいと切に願う。
↓デパケンを処方してもらった日の日記