うちの息子(23歳・自閉症)は、幼児期に脳の精密検査を受けたとき、その結果を見た医師の一人に、
「ミエリンの発達がとても遅れている」
というようなことを言われた。
ミエリンのいうのは、ニューロンを包み込んでいる脂肪の鞘だという。鞘がしっかりしていなければ、漏電してしまって、脳細胞の間で情報がきちんと伝わらなくなる。その結果、日常生活や学習、知的発達に支障をきたす……素人なりにミエリンについて調べて、そんな風に理解した。
息子は生後8ヶ月くらいまでは、ごく普通の赤ちゃんだったと思う。目が合えばにっこり笑い、音楽を好み、母乳をとてもよく飲んで、すくすくと育っていた。
ちょっと巨大で(出生時の体重は4400グラムだった)、全身の皮膚が異様にただれやすいという問題はあったけど(母乳が触れただけでただれるので顔は常に酷い状態だったし、自分の爪でどこでも傷だらけにしてしまうから常に手袋をはめさせていた)、のちに「自閉傾向を伴う重度の広汎性発達障害」などと診断されるとは、想像もしなかった。
息子の様子がおかしいと気づいたのは、一歳を過ぎてしばらくたったころだったか。
急激に頭が大きくなり、頭蓋骨を包み込む頭皮が追いつかないかのようにぱつんぱつんで、頭髪の生え方もおかしくなった。
そして、あまり笑わなくなった。
ベビーカーに乗せて外に連れ出すと、火がついたように泣くことが増えた。大きな電機店に入ったときのことはいまも忘れられない。頭をぐらぐらとゆらし、朦朧とした表情になったかと思うと、白目を剥いて気絶したように寝てしまったのだ。
そして、待てど暮らせど、片言すら出なかった。
一歳半の検診のときに、発達の遅れがあるかもしれないといわれ、二歳過ぎに発達障害の診断が出た。
脳の精密検査を受けたのは四歳ぐらいだったか。何人もの医師に検査結果を確認してもらい、さまざまな(わりとお先真っ暗な)所見をいただいたのだけど、そのうちの一つが、「ミエリンの発達が遅れている」だった。
なぜこんな話を長々と書いているかというと、昨日届いた本「シリコンバレー式頭のよくなる全技術」に、いきなりミエリンの話が出てきたからだ。
少し引用。
オリゴデンドログリア(乏突起膠細胞。早口で3回言ってみて!)と呼ばれるタイプの脳細胞が、ミエリンの形成のために働いている。
この細胞は、成人期のあいだ絶えず新しいミエリンを生み出し、ミエリンの壊れた部分と交換している。ちょうど電気をネットワーク内で滞ることなく確実に行き渡らせるために電気会社が電気系統をメンテナンスするように、この特化した細胞は神経管理網内でミエリンの管理に励んでいる。
そしてこのメンテナンス役の細胞はきちんと仕事をするために、ホルモンーー特に甲状腺ホルモンとプロゲステロンーーの適切なバランスに頼っている。
(中略)
プロゲステロン値の低い男性は、髪が抜け、太り、男でもおっぱいが出来る(男のおっぱいについては、かつてホルモンがめちゃくちゃで体重約140キロだった僕が保証する)。
(引用文中の太字箇所は引用元でも太字で書かれている。大事なところらしい……)
幼児期に細身だった息子が急に太りだしたのは、小学5年になったころだった。
それまでは食も細く、偏食もあったので、なかなか体重が増えず心配していたのだけど、十歳を超えたあたりから急にたくさん食べるようになった。
パン、果物など、糖質の高そうな食べものが目に入ると、あるだけ全部口に入れてしまうから、控えさせようと思って取り上げたり隠したりしたのだけど、その度にパニックを起こすようになってしまった。
現在の息子の体重は90キロ前後、おっぱいは………………ある。(;_;)
「シリコンバレー式 頭のよくなる全技術」には、過剰な食欲についても詳しい原因を示しながら解説し、対処法を提示しているようだけど、紙の本の活字を読むのはまだ相当つらいので、読み解けるのはだいぶ先になりそうだ。
なので、まずミエリン対策のところだけ、実行可能なところをメモしておく。
こういう暮らしをしていれば、海馬の片隅で脳神経がどんどん新しく作られて、ミエリンの修復をしてくれるオリゴデンドログリアもどんどん増えるのだそうだ。
長くなったのでプロゲステロンについては、また改めて。(疲れた)