湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

昼下がりの古代歌謡 


前回、「古事記」から、日本武尊(やまとたけるのみこと)の断末魔の歌を引用した。


その歌のなかで、「乙女」のベッド脇に「つるぎのたち」を置いてきた、ということを、日本武尊が名残惜しげに訴えていた。その「乙女」とは、「美夜受比売(みやずひめ・宮簀媛)」という女性である。

 

前回の歌の少し前に、その「美夜受比売」との結婚初夜に、やりとりした歌が出てくる。

 

どちらも、なんというか、「こんな歌、書いて残すか普通」といいたくなるような内容の歌である。


まず、日本武尊が詠んだ歌。

 

比佐迦多能 阿米能迦具夜麻 斗迦麻迩 佐和多流久毘 
比波煩曾 多和夜賀比那袁 麻迦牟登波 阿禮波須禮杼 
佐泥牟登波 阿禮波意母閇杼 那賀祁勢流 
意須比能須蘇爾 都紀多知邇祁理

 

ひさかたの あまのかぐやま とかまに さわたるくび 
ひはぼそ たわやがひなを まかむとは あれはすれど 
さねむとは あれはおもへど ながけせる 
おすひのすそに つきたちにけり

 


見慣れない言葉がいろいろと出てくるので、ざっと辞書(岩波古語)を引いて確認してみた。


「とかま」は「鋭くやかましいさま」。


「くび」は「白鳥」の古名。


「ひはぼそ」は「か弱く細いこと。


「まかむ」の「まく」は、相手に腕をまわして抱く、抱きしめる。女と一緒に寝る。娶る。


「さねむ」は「さぬ(さ寝)」も、異性と一緒に寝る。


「おすひ(襲)」は上着の一種。

 

で、「つきたちにけり」の「つき(月)」は、この場合、月に一度やってくる、女性の生理現象である。

 

恨み言なのか、責任転嫁なのか、よくわからない歌である。

 

この歌に対して、美夜受比売は、こう答えた。

 

多迦比迦流 比能美古 夜須美斯志 和賀意富岐美 
阿良多麻能 登斯賀岐布禮婆 阿良多麻能 
都紀波岐閇由久 宇倍那宇倍那宇倍那 岐美麻知賀多爾 
和賀祁勢流 意須比能須蘇爾 都紀多多那牟余

 

たかひかる ひのみこ やすみし わがおほきみ 
あらたまの としがきふれば あらたまの 
つきはきへゆく うべなうべなうべな きみまちがたに
わがけせる おすひのすそに つきたたなむよ

 


「まちがたに」の「がたに」は「がたし」の語幹に助詞「に」がくっついた形で、意味は「~することができずに」。

 

「うべなうべなうべな」は、「納得・肯定」を表す副詞「うべ(諾)」に感動の助詞「な」をくっつけたものを、三回繰り返したもの。姫、そうとう、イラついていると思われる。

 


    《意訳もどき》

 

   ---日本武尊くんの主張---

 

 長いこと、ほったらかして、悪かったよ。
 でもな、俺はな、
 今日こそは、やろうと思って、来たわけよ。
 やわやわしたお前の細腕、首に巻いて、
 合体を決行しよーと、思ってたの。

 

 だからさあ、わめくなって。
 お前の声って、白鳥そっくりな。
 見かけ、白くて首ほそくてきれいだけど、
 声最悪。黙っとけ。


 できねーの、俺のせいじゃないだろ?
 よりによって今日、なんで生理なんだよ。
 なんだよその血。
 服につけてんじゃねーよ。
 なんとかしろよ。
 頼むよほんと。

 

   ---美夜受比売の反論---


 OH! アタシのsunriseなプリンスよ~。
 とってもイケてるBig Boss~。
 ア・ナ・タ 来るのが so late!
 It was much too late だっちゅ~の!
 えんげーじしたの
 いつだったと思ってんのよコノ BAKATINっ!!
 何年もたちゃ、
 月だって出たり入ったり
 するっちゅーのよコノ BOKEKASUUUUっ!

 MOVING UP !MOVING UP !!MOVING UP !!!
 むべなむべなむべなっ。

 

 まったくよ。
 仕事とアタシと、どっちが大事よ my darling.
 待ちきれなかったアタシが悪い?
 marriageするの? どーするの?
 もう、ちょ~最悪~なwedding night.
 アンタもろとも血ぃ見したろかい All night!

 


「初夜」がどうなったかは不明だが、とにかく二人は無事結婚し、日本武尊くんは大切な草薙の太刀を、姫のベッド脇に置いて、再び旅立ったのだった。

 

(2005年05月24日)  

 

 

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※他ブログに同内容の記事を掲載していましたが、今後、こちらにまとめていく予定です。