朝の、まだ暗いうちから、息子(7歳・重度自閉症)が起きて、気持ちよさそうに歌っていた。
おおきなくりの木の下でとか。
アンパンマンマーチのハミングとか。
今日はご機嫌なんだなと思って聞いていて、ふと、あることに気づいた。
どの歌も、フルコーラス、しっかり歌っている。
びっくりした。
息子には、長いフレーズを続けていうことが、難しい。
たぶん記憶の読み出しとか、音声を組み合わせて出力するプログラムとかに、厄介な障害を持っているのだと思う。単語も、ひらがな四文字以上の長いものになると、どんなに練習しても、続けては発音できない。頭かおしりが切れてしまう。
それなのに、今朝は、歌をフルコーラス、すらすら続けて歌っている。しかも音程をはずさない。
いつのまにか、ふわっと、階段を一つ、のぼってしまったのだろうか。
さっき、その話を長女さん(8歳)にしたら、
「そうだよ。このごろ歌ってるよ」
と言った。私より先に気づいていたらしい。
「この調子で、しゃべれるようになっちゃえばいいのにね」
と私が言うと、
「そのうち治るでしょ」
と、事も無げに言う。
そうだったら、どんなにいいか。
「普通、自閉症っていうのは、治らないって言われてるんだよね」
と私が言っても、長女さんは、
「んじゃ、治ったら、世界中にとっても、すごいことなんだ。治れ治れー」
と言う。
子供って、強い。
つくづくそう思う。
(2005年05月14日)
※過去日記を転載しています。