峰なゆか「AV女優ちゃん」1 扶桑社
現在、Kindle Unlimited(読み放題)で読めるマンガ作品。
中学まで、スクールカーストの最底辺でいじめられていた主人公(著者?)は、敢えて最低ランクの高校に進学し、いわゆる高校デビューを果たす。
その後、東京のデザイン系の専門学校に進学したものの、何かと金のかかる学生生活だったために、キャバクラでバイトをすることに。
そこで声をかけられて、さんまの「恋のから騒ぎ」のオーディションを受けたところ、ユニークな話題を買われて合格したものの、番組内では発言する機会もなく、全く目立たなかったという。
番組のせいでバイトが出来ず、食費に困っていたところ、街でAVにスカウトされ、出演することに。皮肉なことに、「恋のから騒ぎ」に出演した経歴のおかげで、デビュー作がそれなりにヒットしたのだとか。
デビュー後のエピソードは、正直に言って、腐臭漂う如き黒歴史というか、社会の底辺を流れるどぶ泥を見せつけられるようなものばかりで、読むのが少ししんどかった。
とくに、書店で開催されるAV女優のサイン会に集まる「オタクの中でも相当極まったディープなオタク」たちの生体観察には、心をえぐるものがあった。
彼らが集まる会場には、ワキガ臭、頭皮臭、加齢臭、口臭、リュック臭が充満し、窓が蒸気で曇るほどだという(想像したくない…)。
サイン会では身体障害者がたびたび訪れて、健常なオタクたちに心ない言葉をぶつけられて笑い物にされているという。
けれども、笑い物にされている障害者は、AV女優に心ない言葉をぶつけて侮辱するために、サイン会に足を運んでいたりするのだという。
主人公は言う。
さらなる弱者は
さらなる弱者だと認識した人間を
見つけてはたたく
自分より弱いと思える
人間なんて滅多にお目にかからないので
わざわざ会いに行ってまで
だから私は
弱者が嫌いだ
私は強者に
なりたい
幼いころ、 一人で学ぶことや、努力することが好きで、周囲から浮いていた主人公は、単に「友だちがいない」ということを理由に、学校の教師やクラスメートによって、強制的に「弱者」のレッテルを貼られてしまった。
主人公をバカにしていじめる生徒たちの頂点に君臨していたのは、身持ちの悪そうな見た目を極めた、いわゆるヤリマン女子たちだったという。
強者になろうとした主人公が、自ら底辺を目指して流れて行き、社会的にはどん詰まりとしか思えないAV女優の道に進んでしまった原因が学校教育にあるというのは、なんとも皮肉な話だ。
(_ _).。o○
巻末に、著者の峰なゆか氏と、女性学研究者の田嶋陽子氏の対談が掲載されている。
田嶋 私がテレビに出ていた頃は、「女は人前で怒っちゃいけない」と思われていた時代だった。当時、あの蓮舫さんだってお尻を出して踊ってた時代だったんだから(笑)。テレビで怒るなんて人間じゃないとすら言われていたのよ。
「女は怒っちゃいけない」という縛りは、たしかにあったと思う。
現実には、怒らない主婦や母親なんて、まずいないのに、女性が怒ることのできない場というのは、たしかにあちこちにあった。
蓮舫さん、いまは怒っているイメージが強いけど、若い頃は怒れなかったのかな…