2023年1月に読んだkindle本の記録。
一部、読了していないけれども、記録のためにメモしておく。
kindle Unlimited(読み放題)と書いた本は、期間限定の場合もあるのでご注意ください。
正岡子規「万葉集を読む」
無料で読める青空文庫版。
万葉集の一巻目に出てくる著名な和歌に対する旧態依然の評価を滅多切りにする小論。
子規らしい、切れ味のいい罵詈雑言が楽しい。
子規の句会や勉強会、きっと刺激的だったんだろうなと思う。
小林薫「強制邪霊師・斎(13)屍人の聲」
Kindle本を購入。
オカルト系はとても苦手だけど、このシリーズだけは例外。
主人公の斎さんは実在された方で、既に亡くなっているけれども、生前に相談された方々への取材によってシリーズが続いているとのこと。
おおのこうすけ「極主夫道」3巻
現在、Kindle Unlimitedで読放題利用できる作品。
顔は怖いのに、(警察官以外の)身近な人たちをほっこり暖めて幸せにする龍(たつ)さんが凄い。家事力は伝説レベル。うらやましい。
田村由美「ミステリと言う勿れ」(12)
あいかわらず、ごくありふれた日常の隣に犯罪があることを、ひやりと実感させるマンガだと思う。
冒頭、警官たちがこんな雑談をしている。
「元妻の話によると、男子を持つ母親たちは、よく集まって話し合うらしい」
「はあ、何をですか。性教育?」
「どうやったら、加害者にならないように育てられるか」
私は重度障碍者の息子の母親だけれど、息子が就学していたころ、たしかにこういう話題が母親の間でもちあがることは少なからずあったと思う。おりしも、重大な事件を引き起こしてしまった容疑者が、何らかの発達障害の診断を与えられることがあったので、なおさらそういう空気はあった。
被害者だけでなく、容疑者をも犯罪から守ることのできるような治療教育の発達を願ってやまない……などと思いつつ、あいかわらずの鋭い展開のストーリーを楽しんだ。
そして、今回も、ものすごく気になるところで次巻を待つことになった。
はやく出ないかな、次。(´・ω・`)
井上佐藤「10DANCE」(7)
kindle本を購入。
ダンスマンガ。こちらも待ち遠しかったシリーズの最新刊。
一応BLというジャンルになるのだろう。
相思相愛になった途端に別れを選択した二人のその後は、めまぐるしく、忙しかった……。
まだまだ先が長そう。
中島敦「和歌でない歌」
無料で読める青空文庫版。
古今和歌集的な和歌でないといえば、たしかにそういう和歌ではないけれど、でもしっかり短歌だと思った。そして、面白かった。
谷崎潤一郎「陰翳礼讃」
無料で読める青空文庫版。
紙の本もたぶん家にあるのだろうけど、それを書架で探して引っ張り出してくるよりも、kindleで読むほうが手軽なので、すっかり青空文庫に依存しつつある。
今回は、トイレについてのところを拾い読み。
旧谷崎邸「倚松庵」は、神戸にあって、見学もできるのだとか。
神戸に文学散歩に行くのは遠すぎるので、google mapで見学に行ってみた。
中は見られないけれど、雰囲気は多少把握できる。
庭のお手入れ、大変そう……。
国木田独歩「夜の赤坂」
無料で読める青空文庫版。
短い作品なので、さっと読める。
そして、明治時代の東京の夜の闇の深さを、臨場感をもって知るができる。
東京の町を歩いていると、時折、びっくりするほどの樹齢の街路樹が、当たり前のようにそこいらにそびえていたりして驚くことがある。関東大震災や東京大空襲、その後の区画整理などで、相当に失われたのだとしても、百年を超える樹齢の木が、まだまだ残っている大都会なのだ。
坪内逍遥「斎藤緑雨と内田不知菴」
青空文庫版。
近代文学史の知識として、斎藤緑雨や内田魯庵の名前だけは知っていても、作品に触れる機会がなかったし、まして人柄などについては全く知らなかった。
明治時代の文人たちは、とにかくよく集まって会話をし、食事などを共にしている。だから、誰かが亡くなると、生前のエピソードをふんだんに盛り込んだ、生き生きとした追悼文が、複数の文人によって発表されたりする。
今の作家はどうなんだろう。
昭和のころには文壇バーなどがあったようだけれど、令和の作家の方々は、SNSメインだったりするのだろうか。
ウィリアム・シェークスピア、坪内逍遥訳「ロミオとヂュリエット」
青空文庫版。
ジュリエットのセリフを拾い読みして、明治期の翻訳の雰囲気を楽しんだ。
ジュリエットの口調が、いまで言うところの「ロリ婆」風だったのが面白くて、むしろその雰囲気で演じられるのを見たいように思ったけれども、英文学の古典を日本語に翻訳する苦しみは、並大抵のものではなかったはずなので、面白がるのもほどほどにしておいたほうがいいのかもしれない。
横光利一「頭ならびに腹」
青空文庫版。
大正時代に発表された、印象的な短編。
線路の事故のために列車が止まり、大勢の客が乗り換えを選択したのに、一人の少年が止まった列車に乗り続けていた。その後、運行を再開した列車は、少年ただ一人の貸し切り状態で、目的地に向かっていった。
それだけのお話なのだけど、人の運命が思わぬことで明暗を分けるのを目の当たりにするようで、面白かった。
横光利一「欧洲紀行」
青空文庫版。
まだ読了できていないけど、とても面白いので、最後まで読むつもりでいる。
1936年に、日本郵船の箱根丸に乗った横光利一は、高浜虚子らと句会開いて親交をふかめながらヨーロッパに向かう。船中での観察力や思索は感受性に富んでいてみずみずしく、魅力的作家だったのだなと思わされる。
横光は、特攻隊を礼賛するなど、戦争協力をしたことで、「文壇の戦犯」としてあげつらわれることになるのだけれど、「欧洲紀行」は、少なくとも船中の記事を読む限りでは、自由主義的で、そんな極端な右傾化の気配は感じない。
イデオロギーと文学は、混ぜるな危険、ということなのだろうか。