湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

映画「武士の献立」

Amazonプライムビデオで、「武士の献立」という映画をみた。2013年12月に公開された映画で、監督は朝原雄三。

 

江戸時代の食材や、郷土料理満載で、歴メシ好きにはたまらない作品なのだけど、加賀騒動という、大変血生臭い史実が絡んでいるので、美味しいばかりのお話ではなかった。

 

 

主人公の春(上戸彩)は、幼い頃に家族を失い、加賀六代藩主の側室、お貞の方様(夏川結衣)に長く仕え、可愛がられてていた。

 

春は、一度は結婚したものの、あまりにも気が強いというので一年もたたずに離縁され、お貞の方様の元に出戻ってきていた。春を我が子のように案じるお貞の方様に再婚を勧められても、自分に結婚は無理と言って固辞するばかりだった。

 

春には、類まれな料理の才能があった。

有名な料理屋の家に生まれ、いつとも分からないころから料理に親しむうちに、調理の腕だけでなく、食材を見抜く目を養ってきたのだった。春は、未知の食材であっても適切に取り扱い、必要とあれば、新たな調理方法を自力で開発することもした。

 

加賀藩江戸屋敷で殿の食事を支えている舟木伝内(西田敏行)は、汁物の具にした「鶴もどき」の正体が干した鰤であることだけでなく、調理方法や調味料の産地まで当てた春の才能に惚れ込み、息子の嫁に欲しいと望む。

 

伝内の息子、安信(高良 健吾)は、早世した兄に代わって国元で「包丁侍」として働いているものの、料理に全く興味が持てず、腕も上がらないため、上司や親類に叱責されるばかりで、気持ちをすっかり腐らせていた。

 

その安信の嫁になって支えで欲しいと土下座しながらどこまでも迫る伝内に絆されて、というか、断ろうにも断わり切れず、春は加賀に嫁ぐことになる。

 

江戸から金沢まで百二十里、女性の足で十五日はかかる長旅を経て、ヨレヨレになって舟木家にたどり着いた春を待っていたのは、バツイチの嫁の到来を「脂の乗った戻り鰹」と称賛して心から歓迎する大らかな姑と、祝言でも初夜の床でも不機嫌な顔を隠そうともしない、大人げのない年下の夫だった。

 

安信は、自分より遥かに優れた料理の腕を持つ春を疎ましがり、八つ当たりのように「古狸」と呼んだりもした。春はそんな安信を挑発し、悔しがらせながら、うまく料理を仕込んでいく。

 

安信は、決して料理音痴ではなかったようで、春の指導のもと、意外なほど素直にメキメキと腕を上げていき、やがて職場でも出世を遂げる。

 

けれども、二人はなかなか子どもに恵まれず、気持ちの上でも、どうしても縮まらない距離があるのを春は感じていた。

 

やがて春は、夫の安信の過去を知ることになる。安信には、かつて佐代(成海璃子)という想い人がいたけれども、嫡男の兄が死んで家を継ぐ立場になっために、剣道場の一人娘である佐代とは結婚できなくなり、それまで懸命に努力してきた剣の道も諦めることになってしまったのだという。

 

その後、安信の親友が佐代の婿になって、道場を継いでいた。

 

春は安信の複雑な気持ちを察しつつも、何も言わずに支え続けていた。

 

やがて、加賀藩に不穏な空気が流れ始める。

 

第六代藩主の前田吉徳は、足軽の三男坊に過ぎなかった大槻伝蔵(緒方直人)を重用し、藩政改革をしようとしていた。

 

それに対して、保守派の重臣たちは強く反発。

 

安信の親友である今井定之進(柄本佑)は、身分に囚われることなく人材を登用する大槻を慕い、安信にも仲間になるようにと声をかける。自分の剣の腕で大槻を保守派から守ろうと宣言する定之進の熱意に、安信も心を動かされる。

 

ところが、改革途上で前田吉徳が亡くなり、後ろ盾を失った大槻派は、藩政から追いやられてしまう。

 

保守派である前田土佐守直躬(加賀丈史)は大槻を失脚させて死に至らしめたばかりか、春の主人であったお貞の方様にも、大槻との不義密通及び藩主毒殺の罪を着せて、絞殺。

 

定之進の家もお取り潰しとなり、身重となっていた佐代と共に、金沢から去って行った。

 

その後、前田土佐守直躬の指示により、国元に徳川家や近隣の大名を招待して、饗応料理を振る舞うことになり、舟木伝内、安信親子が頭取と補佐を務めることに決まった。

 

舟木家にとっての晴れ舞台ではあるものの、安信は、定之進夫婦を追いやった土佐守の指図を受けることに強く反発し、また、料理などでは歪んだ藩政を正せないという思いもあって、定之進たち旧大槻派の若者たちによる土佐守暗殺計画に参加することを決意。

 

暗殺決行直前の夜、安信はそのことを春に打ち明け、春の身を守るために離縁状を書いたことを告げる。

 

けれども春は、安信の隙をついて、刀を持って逃げ出してしまう。 

 

春のせいで襲撃に間に合わず、定之進たちが既に討たれてしまったことを知った安信は、怒りのあまり春を切り捨てようとしたけれども、自分を生かそうとする春や母親の深い愛情を知って思い留まる。

 

饗応料理の当日、安信は立派に努め上げて、振る舞った饗応料理は高い評価を受ける。

 

舟木親子渾身の料理を味わって人の心を取り戻したらしい土佐守直躬は、二人を呼び寄せ、二度と若者たちを粛清するような、酷い行いはしないと誓う。

 

無事に大仕事を終えて帰宅した安信は、家の中のどこにも春の姿が見えないことに気づく。

 

春は、安信が未亡人となった佐代と結ばれることを願って、自ら去っていったのだった……

 

 

って、そこで終わったら、さすがに怒るところだけど、安信はちゃんと春を探し出し、心を尽くして自分の元に戻ってくれるようにと願う。

 

 

 

(_ _).。o○

 

舟木伝内・安信親子は実在した人物で、伝内の著作は現代まで伝わっているようだ。

 

 

映画の中では、さまざまな料理や食材が出てきた。

 

中でも強く印象にのこっているのは、柚子の実で作る能登半島名物の「ゆべし」。お貞の方様の好物だったようで、エンディングでは安信と春が旅先で地元の人に分けてもらっているシーンもあった。

 

加賀藩の「ゆべし」は、柚子の身をくり抜いて、中にいろいろなものを詰め込んで、冬の間長く自然乾燥させて作るものらしい。

 

私は東北の「ゆべし」しか食べたことがないけれども、それとはずいぶん違うもののようだ。

 

調べてみたら、全国各地にいろんな「ゆべし」があるようだ。

 

食べくらべてみたい…。