湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

今日のテキスト(3)和歌

お友だちに、楽しくて元気があって夏っぽい和歌を探してほしいというリクエストをいただいたので、いろいろ眺めて、とりあえず四首選んでみた。

 

夏山の木末(こぬれ)の茂(しげ)に霍公鳥(ほととぎす)鳴き響(とよ)むなる声の遥けさ

 

大伴家持 (万葉集 1494)

 

*遥けし…遠い。遥か遠くだ。

 

【意訳】

夏の山の梢のしげみから、姿の見えないヒバリの声が響き渡る。その声のなんと遥かであることか。

 

「鳴き響(とよ)む」という、言葉が気に入って、選んでみた。夏山の上に広がる天空を満たすかのように響きわたるヒバリの鳴き声。ちょっと天国っぽいと思う。

 

 

夏山のみねのこずゑしたかければ空にぞ蝉の声もきこゆる

 

よみ人しらず (和漢朗詠集

 

【意訳】

夏山の峰で、蝉が鳴いている。木々の梢があまりにも高みにあるために、まるで空の彼方から声が響いてくるかのようだ。

 

こちらは詠み人知らずだけれども、上の家持の歌と同様に、空を満たす音に浸る感動を歌っている。

 

 

やはらぐる光をふらし滝の糸のよるとも見えずやどる月影

 

藤原定家 (拾遺愚草)

 

【いんちき意訳】

滝の水がまるで糸を撚るかのように落ちていく。その水に月の光が宿り、穏やかな光を降りそそぐ。夜なのに、夜でないような、水と光のシンフォニー。

 

上の二首は音と空間を詠んでいたけど、定家のこの歌は、音と光を詠んでいる。聞いて元気が出る歌と言う感じではないけれども、美しさに心洗われて、夏バテで失った生命力を取り戻せるように思う。

 

ひざかりはあそびてゆかむ影もよし真野の萩原風立ちにけり

 

源俊頼 (散木奇歌集)

 

【意訳】

 

強い日差しの下は遊びながら行きましょう。日陰に宿るのもいいですね。真野に広がる萩の原に、涼やかな風が立ちますよ。

 

「萩原」と「風立つ」があるので、秋の歌なのだろう。前半の「日盛り」は残暑ということか。

 

「あそびて行かむ」には、本歌があるそうで、この歌は派生した歌ということらしい。そのうちちゃんと調べよう。

 

↓参考にした本

鳥居正博「古今短歌歳時記」(教育社)

何年も前に定価15000円で買ったけど、Amazonを見たら中古が2899円で売っていた。

 

この本、季節に関する言葉などの解説は充実しているけれど、個々の和歌の現代語訳や解釈がないので、使いにくいと思われて、安値になっちゃったのかな。

 

岩波文庫版「万葉集」。

こちらは全訳と親切な補注がたっぷりあるので、歴史音痴で古文が苦手な私には大変ありがたい。