湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

生麦生食生豚肉

こんにちは。

 

幕末に「生麦事件」というのが起きている。

 

生麦村というところで、薩摩藩士がイギリス人を切り殺したために、薩摩藩とイギリスが戦争になってしまったという物騒な出来事だけれど、見るたびに、なんか食中毒っぽい名前の事件だと思う。

 

私も知らなかったのだけど、穀類には、毒素によって食中毒を引き起こすセレウス菌が付着していることが多いのだという。

 

100度で30分加熱してもセレウス菌は死なないそうなので、調理した弁当や焼き飯などで繁殖してしまうこともあるそうだ。

 

www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp

 

 

うーん、怖いな。

ごはん、麺類などの作り置きには、十分に気を付けよう。

 

なんで食中毒の情報なんかを調べているのかというと、昨日ちょっと困った事件が起きたからだ。

 


生肉事件


朝、うつらうつらしていたら、聞き捨てならない会話が聞こえた。


「お前、生肉食ったやろ!」

「わかっちょる!」

「生肉なんか食べたらあかんやろが!」

「わかっちょる!!!!」

 

叱っているのは亭主で、口答えしているのが息子。

 

息子の口答えがちゃんと場面にあった「言葉」になっていることにも驚いたけど、そんなことよりも「生の豚肉」である。

 

身体が悲鳴をあげるのを無視して起き上がり、事情を聞いた。


前の日に亭主がお好み焼きを作ってくれたのだけど、トッピング用に買った豚のスライスが三枚ほど余ったので、冷蔵していたのだという。たぶん朝食のスープにでも使う予定だったのだろう。


で、朝になって確認してみたら、その豚肉が消えていたので、息子に問い詰めている最中だったのだ。


強く叱られた息子は、台所のプラゴミ入れに腕を突っ込んで、豚肉が入っていたトレイを取り出し、亭主を睨みつけながら、


「いけません!」


と叫んで、勝手口のドアを開けて捨ててしまった。


それを見て、やっぱり生肉食べたのかと愕然としながら、手元のiPhoneで情報検索を開始。(トレイはあとで亭主が拾いに行った)


想定される食中毒の種類と症状を整理した。


カンピロバクター

潜伏期間…1日~7日(平均2~3日)

症状…発熱・腹痛・吐き気・下痢・血便・その他


サルモネラ

潜伏期間…6時間~3日(平均12時間)

症状…腹痛、38度くらいの発熱、下痢など

 

E型肝炎ウィルス


潜伏期間…2~9週間(平均6週間)

症状…発熱、悪心、腹痛、黄疸など

 

 

冗談ではない。


生の豚肉を食べたからといって、必ず食中毒になるわけではないけれども、「万が一」よりはリスクが高いはずだ。


ただ、息子の「異食」行動は幼少期からずっと続いていて、これまで、いかなるものを口に入れても、お腹を壊すということがなかった。生肉も、今回は家族が気づいたけれど、おそらく前科はあると思う。

 


長女さんによると、ここ数日、「過食」から「異食」にスイッチが切り替わる気配があったという。

 

私の目には、ハイテンションでご機嫌に見えていたけど、長女さんは、情緒不安定で精神的に消耗している感じがしたので、いろいろ警戒していたそうだ。

 

とはいえ、息子の起床時間は、家族の見守りの目が途切れる朝の4時過ぎである。


冷蔵庫にカギをつけるという案は、息子の幼少期に却下している。

 

市販の乳幼児対策のものでは、簡単に開けてしまうだろうし、より強固なものを特注などして設置して、それが開けられないとなれば、最悪冷蔵庫ごと破壊しかねないと判断したのだ。身長175cm、体重90Kgの息子と相撲になれば、冷蔵庫に勝ち目はない。

 

息子のIQは20台(田中ビネー式)だけれど、生活面での知能は決して低くない。

 

一度見たものは短期記憶、長期記憶とも優れた能力を発揮する。

 

推理力も高いので、好物のお菓子など、どこに隠しても発見してしまう。自分が使う電気機器の操作法は、教わらなくてもできるようになっている。機器のボタンやスイッチについているマークである程度機能を類推して、あとは家族の操作を横で見て覚えてしまうのだ。


既存の知能テストでは、息子のようなタイプの重度知的障害者の本当の知的能力を測ることができない。なぜなら、ほとんどのテストは、言語を介して設問の求めるところを知り、自分の能力を伝えることができなければ、「能力がない」と判定してしまうからである。息子の視覚方面の認知力や記憶力は、おそらく私(IQ139)よりはるかに高い。

 

それほどの知能があるなら、なぜ、冷蔵庫の生肉を食べてはいけないということを学習できないのかと問われるかもしれない。


それに対して、私たち家族は、「それとこれとは別なのだ」と答えるしかない。


ここのところの息子の不安定さを察知した長女さんは、変なものを食べてはいけないということを、何度も言い聞かせていたという。


「ダメなものを食べて、病気になって病院にいくことになっても、自分のせいだからな。わかっちょるか?」


分かっていたから、亭主に強く叱責されて、


「わかっちょる!」


と、姉の口調をまねして言い返したのだ。


分かっているのに、「異食」が止められない。
自分でもやりたいわけでもないのに、禁止されている行為を衝動的にやってしまう。


これは、息子が幼少期からずっと抱え続けている困難の一つなのだ。

 

療育や介護の場面では、「問題行動」という言葉でくくられるものだけれども、私はその言葉を使いたくない。これは、脳の器質的なものからくる問題だと思うからだ。

怪我や病気で脳の一部が損傷すると、認知能力の低下だけでなく、感情や欲求を抑えることが難しくなる場合があるといわれる。

 

そうした脳損傷が引き起こす症状に近いものを、息子はおそらく生まれつき抱えてしまっているのだと思う。

 

やってはいけないと分かっているのに、自分の意志にかかわらず行動を起こしてしまうことに、一番困惑して苦しんでいるのは息子自身だ。「問題行動」というくくり方は、困った行動に息子本人も括り付けて、まとめて「問題」としてしまう気配がある。


でもそうした行動は、息子にとっても悲しくてつらい「問題」なのだ。だから、息子と一緒に「問題」を解決、あるいは回避する方法を模索するべきだと思う。その視点を忘れてしまうと、おそらくみんなが苦しむことになる。


というわけで、当面の対応として、冷蔵庫の冷蔵エリアに生肉を宵越しで保存しないこと、夜間は冷凍してしまうことにした。


それから、よく長女さんがやってくれるのだけど、息子にとって魅力的な食品を冷蔵庫内に少量入れておくことで、生肉などに手を出すスイッチが入らないように予防線をはっておくこと。


あとは、息子本人と、食品について話し合う機会を増やすこと。

 

家族の食の安全のためにも、とっとと元気になって、台所にかかわる機会を増やしたいと切実に思った。