湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

ラノベ読書日記(傷心公爵令嬢レイラの逃避行)

 

小説家になろう」で、

 

「傷心公爵令嬢レイラの逃避行」(染井 由乃

 

という作品を読んだ。

 

悪役令嬢でも転生令嬢でもない、傷心令嬢という、目新しいジャンルに引かれて読み始めたのだけど……

 

身も心もDVでトラウマだらけの、痛すぎる令嬢だった。(;_;)

 

(以外ネタバレあり)

 

 

美しい妹だけを溺愛して、愛情をカケラも与えないレイラの両親。

 

姉であるレイラを陥れて大怪我を負わせ、レイラが意識不明だった間に、姉の婚約者である王太子を寝とって妊娠までして、まんまと未来の王妃に成り上がる妹ローゼ。

 

レイラが大怪我した途端にあっさり婚約破棄して妹に乗り換えたくせに、レイラが実家から逃げた途端に病的な粘着性を剥き出しにして、見つけたレイラを監禁し、絞殺未遂などのDV三昧をやらかした挙句、愛ゆえの刺殺をあっさり決意する、性格破綻者の王太子ルイス。

 

逃避行中のレイラと出会った直後に熱烈求婚したにもかかわらず、死んだ元カノの存在を執拗にほのめかして意図的にレイラを傷つけ、耐えきれずに逃げ出したレイラが元婚約者の王太子に拉致されてもすぐには救わず、レイラが瀕死の重傷を負うまで助けにも来ない、性根の腐りきった魔術師リーンハルト。

 

……書いただけで胸糞悪くなるような境遇だけど、こんな経験をしてきたレイラが、健全な精神など持てるはずもなく、まるでトラウマ体験を再現するかのように、肝心なところで危険な道ばかり選択してしまう。

 

せっかく実家から逃げたのに、わざわざ親に会いに戻って、自分が全く愛されていないことを確認して、改めて傷ついてみたり。

 

自分を殺そうとしたばかりか、婚約者である王太子を寝取って妊娠までした(ただしお腹の子の父親が王太子じゃなかったことが発覚したため処刑が確定して収監されていた)妹に、わざわざ面会して、憎悪に満ちた本心を聞き出して、傷ついてみたり。

 

自分を匿って求婚してくれたリーンハルトの愛情が、元々は自分に向けられたものでなかったことを、よせばいいのにわざわざ本人に確認して、傷ついて逃げ出してみたり。

 

せっかく監禁先から逃げだせたのに、DVの加害者である王太子をわざわざ面会に呼びつけて、和解のための話し合いの最中に刺し殺されてみたり(ご臨終の直前に魔術で助けられた)。

 

ほとんど自傷レベルのレイラの行動が、関係者の「病み」を増大させていくのだけど、彼女を止められる人が周囲にいなかったのだから仕方がない。

 

そもそも、このお話は、国自体が丸ごと病んでいるような設定だった。

 

レイラを地獄に落とす王太子クリスと魔術師リーンハルトは、どちらも王国の建国の祖の血筋につながっているのだけど、この血統には特定の異性に病的に依存し粘着するという、呪われた特質があったのだ。

 

王城には、監禁専用の塔があり、歴代の国王に粘着された女性が王妃ではなかった場合、その塔に幽閉されて、人生の全てを王に独占されることになっていた。

 

魔術師の一族は、先祖代々、「運命の人」と出会って結婚できるまで、何百年たっても絶対に死ねないという、恐るべき呪いにかけられていた。

 

たとえ「運命の人」に出会っても、結婚する前に相手に死なれてしまうと、同じ魂の持ち主が転生してくるまで、永遠に死ねないまま待たなくてはならない。

 

魔術師リーンハルトは、結婚直前に殺された運命の恋人が、レイラとして生まれ変わってくるのを、数百年も待っていた。

 

けれども、死んだ恋人とレイラとが、魂は同じであっても、生まれも育ちも性格も全く異なる別人格であることを受け入れられず、内心ではレイラに殺意を抱くほど拒絶していた。

 

それでも不死の孤独に飽き飽きしていたリーンハルトは、運命の人であるレイラを手放す気にはならなかったので、死んだ恋人を裏切らないために、レイラ自身を絶対に愛さないことを決意したのだった。

 

愛されないことに傷つきながら生きてきたレイラが、リーンハルトの示す愛情の空虚さに気づかないはずがない。当然逃げ出すわけだけど、レイラに危険が迫ったときに自動でリーンハルトに連絡がいうという魔法アイテムは身につけたままだった。

 

ところがそのアイテムは、レイラが瀕死の重傷を負わなければ発動しないというクソ仕様だったため、王太子に死なないように加減して首を絞められたくらいでは、リーンハルトには伝わらない。そこでレイラは、花瓶の破片で頸動脈を切るという荒技で、半ば本気で自殺を図るしかなかった。

 

ほんとうに、主人公を痛めつけてトラウマを抉るためなら、隅々までも手を抜かないという、恐ろしい覚悟に満ちた作品だと思う。

 

最終的には、レイラはリーンハルトの愛を信じて結ばれるのだけど、次の人生では病んだ男どもとは無縁の、穏やかな人生を送れるようにと願わずにはいられなかった。

 

 

この作品は、書籍化もされている。

 

 

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上

 

 

病みキャラとトラウマが好みという方には、オススメの作品である。

 

いわるゆ「ザマァ」要素も少なからずあるけれど、主人公の痛ましさと、周囲の病みっぷりのせいで、「ザマァ」が相殺されるどころか、完全にマイナスになっているため、爽快感はほぼないと言える。

 

 

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 下

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 下

  • 作者:染井 由乃
  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: 単行本
 

 

上下巻とも、傷心令嬢レイラが病み王太子と病み魔導師に取り憑かれた絵柄になっているのが、なんとも言えない。

 

(´・ω・`)