湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

「小説家になろう」で読んだ作品の感想メモ

 

 

優等生だった子爵令嬢は、恋を知りたい。~六人目の子供ができたので離縁します~ (作者:完菜)

 

全36話。

 

最終的にはハッピーエンドだけど、途中、胸糞要素満載だった。

 

「マザコン夫」「愛人」「濡れ落ち葉」といった単語が地雷になってる方にとっては、取り扱い注意な作品かも。特にワンオペ育児中の女性が読んだら、中盤あたりまでは激怒モードが続くかもしれない。

 

経済破綻寸前の子爵家の令嬢であるセレスティーヌは、資金援助を条件に、素行に問題のありすぎる公爵家の嫡男との結婚を承諾する。

 

公爵令息のエディーは、仕事ができないだけでなく、とめどもなく複数の女性と関係を結び、子を孕ませるダメ男だった。セレスティーヌが嫁いできた時点で、愛人の一人が妊娠しており、その後も立て続けに四人、母親の違う子どもをもうけた。

 

生まれた子どもたちは、全てセレスティーヌが自分の手で養育し、愛人たちは夫エディーとともに別館で悠々自適な暮らしを送っていた。

 

夫は育児には全く協力しないばかりか、本宅に顔を見せることも稀だった。

 

セレスティーヌはそんなエディーと本当の夫婦になる気になれず、白い結婚を選んだけれど、もともとセレスティーヌに全く興味のないエディーは頓着しなかった。

 

エディーは、実の母親である公爵夫人に完全にスポイルされて育っていた。父親である公爵には若い頃から愛人がいたため夫人には見向きもせず、公爵家の仕事も夫人に丸投げしてした。気丈で有能な公爵夫人は、夫に愛されない虚しさを息子で埋めるべく、母親なしではいられないような人間に育て上げたのだ。

 

そんなエディーは、母親とはタイプの違う、儚げで依存的な女性たちに惑溺する無能な男に育ってしまった。公爵夫人は、息子エディーのために、都合よく安全に付き合える愛人たちを手配することさえしていたのだけど、エディーがそれを知ることはなかった。

 

セレスティーヌは夫不在の20年間の結婚生活で、夫の愛人たちが次々と産む子どもたちを、渾身の愛情を込めて育てながら、公爵家の女主人としての役割を一人で果たし続けてきた。

 

けれども、夫に6人目の子どもが出来たから育ててくれと、軽い態度で言われた途端、セレスティーヌは、とうとう我慢の限界が来たことを悟った。

 

セレスティーヌは離婚を決意し、夫に引き止められることもなく公爵家を出て行った。すでに立派に成長していた公爵家の子どもたちは寂しがりはしたものの、愛する母親の選択を支持し、励ましてくれた。

 

公爵家を出たセレスティーヌは、そのまま実家に戻らず、友人を頼って隣国に向かい、そこで運命の出会いを果たすのだけど……

 

このままあらすじを書くのもなんなので端折るけれども、セレスティーヌの運命の相手には、行き遅れの王女が吸血ダニのようにはりついて不幸をもたらしていたので、それを駆除するのに一悶着あったのと、離婚後のエディーが女性問題を持て余して元妻に処理を押し付けようと濡れ落ち葉化して迫ってきたのを、セレスティーヌ自ら鉄拳制裁で駆除する必要があったということだけ書いておく。

 

他にもいろいろな出来事があったけれども、セレスティーヌの第二の人生は、きっと良いものになったと思う、たぶん。

 

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行き場を失った恋の終わらせ方(作者:当麻月菜)

 

全1話。

ものすごく丁寧に書かれた失恋のお話だった。

 

エステルの婚約者は誠実なく男性として評判が高かったけれども、別の女性に心変わりしても誠実で、心変わりしたことを正直に告白し、婚約解消を申し出てきた。

 

彼はエステルの父親にとことん罵られても、エステルの弟にぶん殴られても、誠実な態度を微塵も崩さず、婚約解消後は家の力を使ってスキャンダルを完全にねじ伏せ、エステルの立場を守り抜いた。

 

けれども、元婚約者は心変わりした理由についてだけは、一言も話さずに去って行った。

 

のちにエステルは、元婚約者が思い人と無邪気に過ごす姿を目の当たりにして、自分が選ばれなかった理由を知ることになる。

 

愛する男性の良き妻になりたい一心で、恋心を押し隠して、完璧な令嬢としての姿しか見せたことのなかったエステルでは、元婚約者の恋情を引き寄せることは出来なかったのだった。

 

短編なので、次の恋が始まる前にお話が終わってしまうのだけど、エステルさん、今度は素直に甘えられるといいなと思う。

 

https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n3168hm/

 

 


「こだわりが謎である」(作者:黛ちまた)

 

全36話。

 

結婚した日の夜、次期侯爵の夫に「貴女を愛することはない」と宣言されたコルネリアの、紆余曲折ありまくりの結婚生活を描いた作品。

 

夫のシュテファンが新妻にそんなことを言うに至った事情が、かなり痛かった。

 

夫が学生だったころ、平民あがりの男爵令嬢が、魅了という邪法を使って、当時の王太子や側近候補の令息たちを無差別に誑かして回ったために、貴族社会のパワーバランスがガタガタになるという事件が起きた。

 

シュテファンだけは、渦中にあっても男爵令嬢の邪法に屈することがなかったけれども、邪法に洗脳されておかしくなっている王太子たちを正気に戻そうと意見し続けたために、王太子に疎んじられ、世間でも役立たずの側近候補と厳しく非難され続けた。

 

その後、邪法の状況が露見したため、主犯の男爵令嬢は処刑され、誑かされた王太子や令息たちは正気に戻ったものの、社会を混乱させた責任を取って、廃嫡されてしまった。

 

シュテファンの名誉は回復したものの、騒動で受けた心の傷は深く、対人関係が苦手になり、女性への恐怖感もあって、結婚を避け続けていた。

 

シュテファンにとっては、王太子たちの人生を完全に狂わせた恋愛というものが、恐怖でしかなかった。

 

だから、結婚初夜に新妻のコルネリアに向かって「貴女を愛することはない」と言ったのだけれども、シュテファンの事情を知らないコルネリアが、その言葉をどう理解するかということについては、全く思い至らなかった。

 

コルネリアには、よく出来た姉や妹と比較されて、何の取り柄もない令嬢と蔑まれながら育ったという経緯があった。

 

夫シュテファンの言葉を、自分には愛されるだけの価値がないという意味で受け止めてしまったコルネリアは、それでも貴族の政略結婚に愛がないのは当たり前と割り切り、良き妻になろうと気丈に努力する。

 

ところが、世間の目は地味なコルネリアに対して非常に厳しく、社交の場では常に批判や陰口に晒され続け、次期侯爵の妻の座を妬んだ令嬢たちに危害を加えられることすらあった。

 

そんなコルネリアをいたわるシュテファンだったけれども、世間の仕打ちに疲れ果てたコルネリアに、なぜ自分を妻に選んだのかと聞かれて、馬鹿正直に本心を語ってしまう。

 

シュテファンが男爵令嬢の魅了の邪法にかからなかったのは、生まれてから一度も恋心を抱いたことななかったためなのだという。

 

尊敬の念を持って仕えていた王太子が、邪法に支配されてトチ狂い、人生をドブに捨てる様子を目の当たりにひたシュテファンは、恋そのものを強く忌避したけれども、次期侯爵として妻を娶らないわけにはいかなかった。

 

そこで、地味で何の取り柄もないコルネリアであれば、恋心を抱く要素がないと判断し、結婚相手に選んだのだというのだ。

 

それを聞いたコルネリアは、ぽっきりと心が折れた。もはや社交界で叩かれながら夫を支えて続ける気力などなく、離婚を決意して実家に戻ってしまう。

 

……そういう絶対零度といってもいいような状況から、幾多のすれ違いを経て、シュテファンとコルネリアは相思相愛の夫婦になっていく。最後の方は、砂を吐きたくなる勢いで甘かった。

 

 

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