湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

ラノベ読書日記○異世界でのんびり癒し手はじめます〜毒にも薬にもならないから転生したお話〜

異世界でのんびり癒し手はじめます〜毒にも薬にもならないか、転生したお話」(カヤ 著)

 

主人公の日常と成長の経緯に重きを置いたお話。

小説家になろう」で見つけて、かなり引き込まれて読んだ。

 

書籍化もされている。

 

 

書籍版の表紙イラストの愛らしさを裏切って、物語のとっかかりは、かなりエグい。

 

12両編成の通勤電車が事故を起こして、乗客全員が死亡する。

 

犠牲者の一人である主人公は、女神と称する存在に選ばれて異世界へ連れ出され、そこで驚くべき話を聞かされる。

 

地球の神が人類に失望して世界を捨ててしまったため、地球は、異世界の神々の狩場になっているというのだ。

 

主人公の巻き込まれた列車事故も、異世界の女神が狩のために引き起こしたものであり、列車12両分の地球人の死者の魂が、女神のおさめる世界の素材として回収されたのだという。

 

女神の世界は、安定した世界ではあるものの、エネルギー不足のために文化の発展が停滞し、人口も伸び悩んでいた。よくも悪くも我欲に満ちてパワーのある地球人の魂は、足りないエネルギーの補充のために強奪されたのだった。

 

そして、刈り取られた犠牲者のうち、エネルギー素材として毒にも薬にもならない3人の魂が選り分けられ、女神の世界にとって無難な存在として、転生を許可された。その一人が、主人公だった。

 

そんな話を聞かされた主人公は、当然のことながら、女神に強く反発するものの、逆らって勝てる相手ではない。転生にあたって3つだけ希望を叶えるという女神に対して、主人公が希望したのは、

 

 癒しの力

 丈夫な身体

 自立するまで守ってくれる保護者

 

だった。

 

そうして、20代OLだった主人公は、10歳の身寄りのない少女として、雪の降り積もる僻地に放り出されたのだった……

 

人の運命を虫けらレベルで踏みにじって憚らない神々の非人情っぷりは、このジャンルではある意味定番だけれども、それはシムシティなどのシミュレーションゲームのプレイヤーの視点に近いものであり、さらに言うなら人間をラベルや数値で考える、実社会の政治家、行政者の思考にも近いものだと思う。

 

そういうシステム側、世界のなりたちそのものに人の情が通じないことを前提として、その枠の下で命あるものたちが力を尽くして生きる姿を描くというのは、ある意味、物語の基本中の基本と言えるのかも知らない。

 

人生は理不尽極まりないものだ。

命あるものの物語は、どんな艱難辛苦を経て幸福にたどり着いても、最後には必ず死が待っている。

 

どれほど多くの人の生死を経て紡いだ堅牢な文化や歴史であっても、この宇宙そのものの永続性が保証されない限り、永遠普遍のものにはなり得ない。

 

その非情なシステムに、一見従うそぶりを見せながら、それを思いもかけない形でブチ壊せるほどのエネルギーに満ちた物語を生み出せるか否か。

 

文学の本質は、実のところそういう反逆性にあるのではないかということを、転生もののラノベを読みながら、時折思ったりする。

 

 

本作品は、「小説家になろう」の連載はまだ続いている。非情な女神によって異世界に放り出された主人公は、ありえないほど子煩悩な養い親と出会い、地域の人々にも過剰なほど愛を注がれて、次第に世界を愛するようになっていく。

 

今後、主人公と神々との直接対決があるかどうかはわからないけれど、ちょっと期待している。自分の支配世界の成長を停滞させて、他所から資源強奪するような女神は、神としてはまだ未熟だろうし、人類を捨てて逃亡したという地球の神など、落第決定だ。この駄女神と、駄目神の二柱には、絶対に何らかの落とし前をつけてもらいたいところだ。

 

コミック化もしているようだ。

読みたいなあ。

(書籍代……😭)