ロバート・フルガム「気がついたときには、火のついたベッドに寝ていた」
集英社文庫 500円
全米で大反響を巻き起こしているベストセラーエッセイ集、なのだそうである。
たいていハッピーに終わる、いくつものおかしな、それでいて滋味豊かなエピソー
ドが、心に残る本だった。
普通なら深刻で重たい話を引き合いに出してしかめっ面で言いたくなるような人生の深刻で面倒な局面について、この作者はどうしても笑いながら前向きに語らなければならないと心に誓っているかのようだった。
もしそうだとしたら、ほんとにありがたいことである。テーマ的にちょっと説教臭いところもあるけれど、著者は兼業牧師なのだから仕方がない。
それにしてもアメリカ流のジョークやユーモアに満ちた場面というのは、日本語に翻訳されると、なんだかシュールな、場合によってはおそろしく馬鹿げた雰囲気になることが多いように思う。
この本も例外ではなくて、書いてあることは実話なのに、なんだかリアリティを感じられない箇所がたくさんあった。社会を幸せにするために誰彼かまわず否応なしに抱きつく主義の教会で、抱きつきたい側と抱きつかれたくない側とで真剣に攻防戦をやっているなんて、冗談小説みたいな話がほんとにあるのかと思うと、アメリカという国が改めて遠い彼方に思えてくる。
古風な?日本人の私にとってはプロ野球の選手が勝利を祝って抱き合うのさえ、むさく
るしく思えるのに。
(1996年9月25日)
※過去日記を転載しています。