ハーレクインコミックの読書メモ。
今回は二冊。
どちらの作品も、毒親に育児放棄されて育ったヒロインが、毒親ゆえに孤独に育ったヒーローと出会うお話。
「秘書以上、愛人未満」(橋本多佳子 漫画、マヤ・ブレイク 原作)
ヒロインのブリアナは、かつて社内恋愛の相手に汚職の濡れ衣を着せられ、逮捕されたことがあった。
信頼していた相手に裏切られて傷ついたブリアナは、二度と恋愛しないことを心に誓って、刑務所の中で「溺れたくなければ泳げ」という刺青を彫った。
その後、過去を隠して現在の会社に就職したブリアナは、敏腕社長のサキスの有能な秘書として、実績を積んでいったけれども、サイボーグ並みに隙のない働きぶりだったため、異性関係が華やかなサキスがブリアナを女性として見ることは全くなかった。
ところが、自社のタンカーが座礁事故を起こし、二人で現地に飛んだことから、二人の間に感情的なつながりが生まれてしまう。
社長のサキスは、サイボーグみたいだと思っていた秘書が、実は感情豊かな美女だったことに気づいてしまって目が離せなくなり、ブリアナの方も、サキスの孤独な生い立ちが、ヤク中の母親に捨てられた自分の過去に重なることを知って、心を寄せるようになる。
けれども、相思相愛であるにもかかわらず、根深い人間不信を抱えている二人は、裏切りに傷つくことを恐れて、ドライな愛人関係しか結ぶことができない。
ところが、サキスの会社を揺るがしたタンカーの座礁事故が、実はブリアナの元彼の仕掛けた会社乗っ取りの陰謀であることが判明。ブリアナは、自ら囮になって、元彼の陰謀を暴いて会社を救ってから、逮捕歴を隠して就職していた責任を取って辞職する。その後、サキスがやっとブリアナにプロポーズし、ブリアナもそれを受けたので、最強の秘書兼妻が誕生。めでたしめでたし……。
紙面の限られたコミック版なので、二人の抱えるトラウマの重さや、葛藤しつつ脱却していく過程については、かなり端折られてしまっている。それでも強引に納得感のあるエンディングに持っていくことのできるハーレクイン系の漫画家さんは、いつもながらすごいと思う。
「大富豪と手折られた花」(篠原正美 漫画、ペニー・ジョーダン 原作)
こちらも毒親育ちのヒロインとヒーローが、愛されなかった惨めな生い立ちに囚われることをやめて、自分の人生をつかみとっていくお話。
有名な俳優一家の娘として育ったルシーラは、演技の才能に恵まれないために家族に無視され、オーデションにも落ち続けて、鳴かず飛ばずの日々を送っている。
名優たちを身近に見て育ったルシーラには、俳優の素質を見抜く才能があるのだけれど、本人はそのことに気づいていない。
そんなルシーラに目をつけた企業家のニックは、彼女に俳優たちを支援するエージェントになるように勧め、強引に仕事に巻き込んでしまう。ニックも俳優一家の息子だったけれども、才能のないことに苦しんで、別の道を選んだという経緯があったため、ルシーラの苦悩を察していたのだ。
当初は耳を貸さなかったルシーラだけれども、次第に自分の本当の才能に気づきはじめ、仕事の喜びを感じ始めるとともに、ニックに密かな恋心を抱くようになる。
ところが、ルシーラの恋心を、打算のために媚びを売るのだと誤解したニックは、ルシーラをきっぱり拒絶。傷ついたルシーラは、ニックに依存せずに新しい仕事に生きようとするものの、過去に虐待されたトラウマまで蘇ってしまい、精神的に破綻をきたしてしまう。
すったもんだの末に誤解が解けて、お互いに家族問題のトラウマを乗り越えようということになり、ハッピーエンドとなる。
毒親克服がテーマのハーレクイン作品が多いのは、読者のニーズによるものなのだろうか。
スーザン・フォワードの「毒になる親」が出たのは、もうかなり前になるれけども、心理を分析してくれる書籍だけではなく、ハッピーエンドが約束された克服の物語を味わうことで、実人生を生きぬく勇気を得たいという読者も多いのかもしれない。
日本の毒親系漫画というと、すぐに思い出すのは、萩尾望都の作品群だ。
「メッシュ」「残酷な神が支配する」「イグアナの娘」などは、その代表格だろうけれど、他の作品にも多かれ少なかれ、登場人物のだれかの背後に、ヤバい親の影がある。ハーレクインと大きく違うのは、必ずしもハッピーエンドにはならないところか。
懐かしいけど、読み返すには気合がいる作品ばかりだ。
あ、また名乗るの忘れた。
以上、ねこんでるねこたまが、寝転びながらお送りしました。
(´・ω・`)