湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

息子がはじめて傘をさして歩いた日

はてなブログ今週のお題が「傘」だったので、いまは公開していない古い日記から、傘にまつわる記事を転載してみる。

 

 

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2009年 2月25日

 

息子(自閉症・当時小5)が、生まれてはじめて、自分で傘をさして登校した。

 

つい昨日までできなかったことをいきなり克服したので、校門を通ったところで急いで息子の後ろに回って、証拠写真を撮った。

 

 

これまで息子は、開いた傘を持つことはできても、歩き始めると、すぐに腕を下ろして引きずってしまっていた。

 

だから、雨の日には息子にランドセルの上からカッパを着せて、傘は私が持つか、息子に持たせて腕を支えてやるしかなかった。

 

もちろん練習もしたけれど、何年たってもできるようになる気配もないまま、高学年になってしまった。

 

一人で傘をさして歩くためには、傘が視界を遮らないように気をつけながら、適度なちから加減で柄をにぎり続け、腕の位置を調節し、なおかつ足も動かさなくてはならない。

 

そういう目と手足の動作協応のどれか1箇所でも不具合があれば、傘をさして歩くことはできなくなる。

 

息子はもともと右手と左手を別々に動かすことや、手足を同時に動かすことが、とても苦手だった。運動会のダンスは、どんなに練習しても、振り付けを覚えることが難しい。傘を持って歩くことも、息子にとってはダンスと同じくらい、高難易度だったのだろう。

 

それをいきなり克服できたのは、おそらくは、息子の脳内で、傘をさして歩くのに必要な回路がきっちり繋がったからだと思う。

 

日常生活が「できない」ことばかりの息子は、どうしても「できる」ようになりたいことを自分で選び、長い時間をかけて、密かにトレーニングすることがある。

 

小学校入学前、感覚過敏のせいでランドセルを背負い続けることが難しかった息子は、家族の見ていない深夜、こっそりランドセルを背負って耐える練習をしていた。見つけた亭主が、

 

「暗がりでランドセル背負ってる男がおるぞ」

 

というので、こっそり覗きにいくと、うつむき加減で、背中の慣れない感覚をじーっと我慢している息子のシルエットが見えた。

 

ランドセルを背負っての登校初日、校門を通ると同時に「わあーっ」と声を上げて笑った息子の顔は、たぶん一生忘れない。

 

ランドセルの克服は数ヶ月で済んだけれど、傘を持って歩くのには、5年以上の独自のイメージ構築が必要だったのだと思う。

 

上の写真の時点では、雨は降っていないのだけど、息子が意気揚々と傘をさして歩いているので、そのまま閉じさせずに昇降口まで歩いた。

 

雨の日が、楽しみになった。