掃除したり、息子(5歳・重度自閉症)の散髪をやったりして、夕方にはぐったり疲れた。
こういうときは、ささやかな気晴らしがほしくなる。
で、普段あまりつかわないケータイをひっぱりだして、着メロをいじってみた。
買ったときから入っている曲や、自分でダウンロードした曲など、合わせて二十数曲が入っている。
それを順番に聞いていたら、息子がいそいそとやってきて膝に座った。なんだかものすごく、感心したような顔で表示画面を眺めている。
そのうち、息子は、さっと立って行ったかと思うと、部屋中の照明を消してまわり、また膝に戻ってきた。価値ある音楽を聴くときには、視覚情報を制限して居ずまいを正し、聴覚に集中するというのが、息子のやりかたなのだ。
チャキチャキした電子音で作られた東京・中山競馬場のG1ファンファーレや、ファイナルファンタジーシリーズの戦闘BGMに、そこまでの価値があると、息子は判断したのだった。
クラシックやポピュラーも入っている。
ジムノペティ。
トッカータとフーガ。
ライディーン。
パッヘルベルのカノン。
月の光。
たしかに着メロはよくできている。
なんだか、壮大な建造物を、ものすごくチープな材料で、恐ろしくちっちゃくて精巧なミニチュアにしてみせてもらっているような気持ちになる。あんなピロピロした電子音で、よくまあここまで作りこんで聞かせてくれるものだと、息子といっしょに、私も感心しながら聞いた。
(2002年12月28日)
※過去日記を転載しています。