湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

アイアイ

いま夜中の三時。
遅くなっちゃったし、いろいろあってクタクタだし、きょうは日記はお休みと思っていたが、休めない。

 

息子(3歳・重度自閉症)が、どんどん変化しているからだ。
書いておかないと、絶対忘れる。

 

息子が、歌をうたった。

 

「あーいあい、あーいあい、おちるちーんやよー。あーいあいあーいあい、ちのぱのおーちー」

 

何を歌っているのか、親にだけは即座にわかる。童謡の「アイアイ」である。息子が最初にこの歌をうたったのは、いまから一年半前、息子の療育のことで途方に暮れていたころのことだった。

 

突然、息子が私のそばにきて、いきなり「アイアイ」を、はっきりとした声で歌ったのである。そして照れくさそうに、にこっと笑った。けれども、その後どんなに誘っても促しても、息子が歌うことはなかった。

 

それから一年半後の今日、息子は二度目の「アイアイ」を歌った。家族の団欒のひとときに、とつぜん息子は、私のそばで歌いはじめた。

 

小さな小さな声だったけれど、息子の口の動きはしっかりと確信に満ちていた。息子の顔をみつめながら、「うん、アイアイだねえ」とうなずいてやり、それから私も一緒にうたった。けれども少しだけ、私の声が大きすぎたのかもしれない。息子は、にこっと笑って、自分の歌をやめてしまい、私の口元をじーっと見つめていた。

 

ここのところ、息子の療育に関連して、淋しいことや愉快でないことが重なるなどして、いささか私は追い詰められた心境にあったと思う。それだけに、息子の歌は、ほんとうにうれしかった。はじめて歌ったときといい、なんだか私を励ますために歌ってくれているような気さえする。

 

あらためて思った。息子は、言葉の話せる人になりたいのだ。歌えるひとになりたいのだ。そのことを、息子はせいいっぱい、家族に伝えようとしているのだ。

 

だったら、どんなことをしてでも、必ず話せるようにしてやりたい。歌だってうたわせたい。理解のないひとたちに療育を反対されたからといって、それが何だというのだろう。

 

負けられない勝負に挑む覚悟はできた。
息子の脳が、言語習得能力の臨界期を迎えるまで、あと三年。

ドラクエ8とファイナルファンタジー15は、息子と事細かに相談しながらプレイする予定である。

 

(2001年6月23日)

※過去日記を転載しています。