少なくとも福島、新潟、山形の三県に亙って味噌漬けのものが確かに旨いのだからこれは東北地方全体に就て言えることなのだろうと思う。
その中でも野菜の味噌漬けが殊にいい。
これは味噌の問題に違いないのだから鮭などの味噌漬けもその場所で食べるならば旨いに決まっているが、それでも野菜のが何よりも印象に残る。
(中略)
先ず新鮮であるとでも言う他ない。恐らく実際に新鮮な野菜を漬けるのだろうが、それが芳香を放つ味噌に慣れて味噌でも野菜でもない別なものに変わったその味や歯触りが類を絶する意味で新鮮なのである。
その中には随分凝ったものもあって例えば瓜を刳り抜いて中に色々な野菜を刻んで漬けたものもあり、これは作り方が手が込んでいる点でも珍品であるが、もっと簡単にただ人参や大根を漬けただけのものでも旨い。
どうしてこの味噌漬けが東北で発達したのだろうか。
吉田健一「私の食物誌」
引用した文のあとにも、東北の野菜の味噌漬けへの深い感動が綴られているのだけど。
生まれも育ちも東北の私は、野菜の味噌漬けを食べた記憶がない。一度も食べていないだけでなく、見たこともない。すれ違ったまま、東北を離れてしまった。
なんか、悔しい。(´・ω・`)
レシピさがしてみようかな。