湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

映画「レッスン!」を観た。

末っ子が、学校で「洋画を字幕スーパー版で見てレポートを書く。ただしクラスメートと作品がかぶらないように、マイナーな作品を選ぶように」という課題を出されたという。


それで、Amazonプライムビデオでいくつか候補を出して予告編を見せていったところ、「レッスン!」という映画が気に入ったので、一緒に見ることになった。

 

 

レッスン! (字幕版)

レッスン! (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

2006年製作のアメリカ映画とのこと。

主演はアントニオ・バンデラス

アニメ映画「シュレック」で、長靴をはいた猫のプスの声をやった人だとのこと。

 

あと、私が見たことのある映画では、「インタビュー・ウィズ・パンパイア」にも出演しているようだけど、あの映画はレスタト役のトム・クルーズの印象が強烈すぎて、あとの役者さんがどんなだったか、よく思い出せない。

 

で、「レッスン!」である。

いい映画だったと思う。

 

ニューヨークの社交ダンスの講師であるピエール・デュレインは、ある夜、路駐の車をゴルフクラブで破壊している黒人少年を見かける。


ロックという名の少年は、楽しみにしていた高校主催のダンスパーティに参加しようとしたのに、入場券が濡れて汚れていたために盗品であると疑われ、常日頃から自分に目をつけている校長に門前払いされてしまったところだった。

 

入場券が濡れたのは、アル中で無職の父親を介抱していたためだった。

けれとも学校関係者はロックを不良と決めつけているため、誰も事情を聴こうとしないし、ロックも説明しようとしない。ロックはそんなふうに理解されずに抑圧されることに、慣れ切ってしまっていたのだ。


ロックは鬱屈していたけれども、もともとは車など壊すつもりはなかった。
けれども路駐の車の持ち主が自分を拒絶した校長であったことと、彼を仲間に引き込もうとたくらむ地元のチンピラたちに、腰抜けなどと挑発されたことから、ついカッとなって、チンピラからゴルフクラブを受け取ってしまったのだ。


ピエールはロックの苦しそうな表情に何かを感じ取ったのか、話を聞こうと穏やかに声をかけるけれども、周囲の人間に不信感しか持たないロックは、答えを拒否して逃げ去っていく。

 

ロックが破壊した車の持ち主が高校の校長であると知ったピエールは、その高校に出向いて、社交ダンスを教えるボランティアを申し出る。


登校時に全生徒が危険物の持ち込みがないかを機械でチェックされるような学校で、スーツを着こみ、紳士的な態度を貫くピエールの存在は、完全に浮いていた。


校長はそんなピエールを不審者と思い込み、門前払いしようとしたものの、ピエールはどうしても引き下がろうとしない。


校長はしぶしぶピエールを受け入れ、放課後の居残り教室の顧問になることを了承する。

 

実のところ校長自身も、荒れた生徒たちを何とかして更生させたいと願っている教育者だった。校長室には在学中に、犯罪などに巻き込まれて亡くなった生徒たち全員の写真が飾られていて、それが校長にとって、自らの仕事に真摯であろうとする原動力でもあった。

 

けれども学校の予算は限られており、規則と罰則で縛るだけの教育で更生する生徒はいなかった。

 

社会の底辺にいる生徒たちに、上流階級のものである社交ダンスを教えたいというピエールの申し出は、校長にとっては荒唐無稽なものだったけれども、生徒の行く末を思う教師として、どこか心を動かされるところはあったのかもしれない。ボランティアであれば予算は必要ないし、どうせ初日で挫折して来なくなるだろうと嘯きながらも、校長は自分がピエールの申し出を受けたことに自分自身で驚いたと、楽しそうに笑っていた。


そこからは、ある意味お約束通りの展開となる。

 

居残り教室の生徒たちは、自分たちとはあからさまに階層の異なるピエールに反発し、初日は全員でボイコットするものの、ピエールが見せた妖艶なタンゴに魅せられて、次第にレッスンに参加するようになる。

 

校長の車を壊していたロックだけは、頑なに参加を拒否していた。
彼の抱える事情は複雑で重く、学校へ抱く思いはあまりにも苦々しいものだった。

ロックの兄は麻薬密売に関係した暴力事件で死亡しており、加害者とされているのは、同じ居残り学級に通っているラレッタという女子生徒の弟だという。ロックの父親は兄の死を受け止められずにアルコールに逃げ、一家の家計をロックのバイトで支えている状況だった。

 

ある夜、ロックはアル中の父親と大ゲンカして家を出て、高校の守衛室に泊めてもらっていた。

同じ夜、母親の客(売春相手)に襲われかけたラレッタも、家を飛び出し、高校の居残り教室に逃げ込んでいた。

 

居残り教室で出くわした因縁の二人は、お互いの話に耳を貸すこともなく大ゲンカとなってしまい、揃って警察に補導されることとなる。その後ラレッタは母親に引き取られて帰宅。親と喧嘩中のロックは、ピエールを父親だと警察に伝え、引き取りにきてもらった。


補導されたベナルティとして、二人に課されたのは、ワルツの早朝練習だった。

互いの兄弟の因縁でいがみ合うだけだったロックとラレッタは、ピエールの指導のもと、対等なパートナーとしてワルツを踊るうちに、互いの立場や気持ちを思いやり、理解できるようになる。


一方、居残り教室の生徒たちは、それぞれの夢や希望を抱きながら、短期間で驚くほど社交ダンスの腕をあげていく。

 

ピエールは、彼らの今後の人生のために、全員を社交ダンス大会に参加させることを決意するけれども、周囲の目は全く好意的ではなく、理解者も少なかった。

 

スラム街出身の生徒たちが、身の丈に合わない社交ダンスなどに夢をもっても、それで食べていけるわけではなく、挫折してつらい思いをするだけだと批判する人々もいた。

 

特にピエールに対抗意識を燃やしていた数学教師は、役に立たない社交ダンスなどよりも勉強を優先すべきだというPTAの役員たちを動員し、ピエールの居残り教室をつぶそうと圧力をかけてきた。


そんな反対勢力に対して、ピエールは、校長をパートナーに友愛に満ちたダンスを踊って見せながら、社交ダンスで培うパートナーシップや、自分に自信をもちつつお互いを思いやる心が、生徒たちを非行から遠ざけると力説し、その場で親たちの共感を勝ち取ってしまう。


社交ダンス大会の当日、ロックはチンピラたちの誘いを断り切れず、盗みの見張りを引き受けてしまう。


けれども、土壇場でチンピラたちの脅しを跳ね返し、ボロボロの姿で会場に到着する。自分が正しいと思う道を選び、自分を信頼してくれたラレッタのために、勇気を出したのだった。


居残り組の生徒たちと社交ダンス組の人々が、ヒップポップで楽しそうに盛り上がるという、おとぎ話のようなラストシーンは、とても印象的だった。

 

ロックやラレッタのその後は描かれていない。二人と因縁の深いチンピラたちに報復されなかったか、とても気になるところだけれども、なるようになったのだと思うしかない。

 

ウィキペディアの記事によると、映画「レッスン!」(原題は「Take the Lead」)の物語は、実在するピエール・デュレインという人物の実話を基に創作されたものだという。

 

 

 映画「レッスン!」(ウィキペディア)

 

ニューヨークでは実際に小学校での社交ダンス教育が行われているそうで、「ステップ!ステップ!ステップ! 」ドキュメンタリー映画もあるのだとか。観たいと思ったけれど、残念ながらAmazonプライムビデオのリストには見当たらなかった。