息子(3歳・自閉傾向のある重度広汎性発達障害)が、昨日口にした言葉。
おしり・あし・ぼう・はし・あつい
「ぼう」「はし」は、なぜか、自分のおちんちんをじーっと見つめて言った言葉である。
息子は、つい最近、自分におちんちんというものがあることを発見した。これは一体なんだろう、という表情で、しばらく考え込んでいたのだが、きのう突然、「ぼう・・・はし」と言った。「ぼう」と「はし」は、一年ほど前、私が教えた言葉である。棒の大好きな息子が、私の箸を振り回して遊んでいるので、
「それはね、棒だけど、箸っていって、ふりまわしたりしない棒なんだよ」
と言って、取り上げたのだ。そのとき以来、箸を見ると、ごく稀に、「ぼう・・・はし」と言うようになっていた。その言葉が、おちんちんをじーっと見つめているうちに、息子の心に浮かんできたのだろう。
「ぼう・・・はし」
息子の脳のなかで、カテゴライズが行なわれた瞬間である。
これは、言語習得をするうえで、ものすごく大切なことである。
けれども、ちょっと間違っている。
「これは確かに棒だけど、箸ではないよ。おちんちんって、言うんだよ」
私がそう教えると、息子は「おちんちん」と言いたそうに、唇をうごかしたが、口パクだけで、声は出なかった。
奇跡のようにたくさんの言葉をしゃべってくれた日と比べると、発語がペースダウンしているのは否めない。
が、毎日確実に何らかの言葉が出ているのは確かである。
あせらずに、使用語彙の定着を地道に促していくしかない。
手遊びは、頻繁に出てくるようになっている。
手遊び歌を歌ってやると、自分で踊りはじめる。
私も一緒に手を動かすと、自分の動きは止まってしまいがちである。見ながら一緒に動く、というのは、やはり難しいらしい。
一人で踊るときは、もうすこし上手になる。完全にはなかなかいかないけれど、ポイントはきちんと押さえようとしている、という感じか。
ただ、感極まってしまうと、とにかく走りまわってしまう、という場合も多い。
・・・・・
偏食のことで、通園施設から色々と言われはじめている。
クラス担任だけではなく、もう少し偉い立場の人まで、わざわざ来てうるさいことを言うようになってきた。
うるさいのは、まあいいのだが、言うことに方針の一貫性というものが感じられない。ただただ、親のしつけが悪いということのみを強調され、指摘される。
数ヶ月前、親子通園のときに、息子のキライな食べ物を口に入れてやっていると、クラス担任がやってきて、
「とにかく自分で食べさせるように。手づかみでもかまわない。お母さんは手を出さないでください」
と指示した。それだとキライなものはいつまでたっても食べないですよ、と言うと、
「自分で食べるという気持ちが大事ですから」
との返事だった。偏食については考慮していない様子だった。
はっきりいって、施設の給食はイマイチおいしくないのである。
しかも匂いの配慮があまりよくない。肉類はいかにも生臭く、魚類はどこまでも魚臭い。ごま油など、匂いの強い調味料がサラダなどにたっぷり使われている。おやつには、好き嫌いのほとんどない長女さん(5歳)でも嫌がって食べない、香料の強烈なイチゴ味のプチダノンが出たりする。
子供のころから、お世辞にも「おいしい」とは言えない給食で鍛えられている親の世代ならともかく、感覚過敏の息子には、全般にキツい食事である。かつおとこんぶの一番だしを使った薄味の味噌汁を食べなれている息子に、煮干をぐつぐつと煮こんで、口の中がいがいがする赤味噌を溶解させた給食の味噌汁を喜んで食べろといっても、無理な注文なのだ。
それでも私は、この時は担任の指示に従って、息子の食事には一切手を貸さないことにしてみた。おかげで息子は、スプーンの使い方がたいへん上達した。それはまあ、ありがたかった。が、いつまでたっても、施設の給食は全部残している。
感覚過敏を克服するためには、それなりの覚悟を決めて、断固とした態度で臨まなければならない。つまり、苦手な味や匂いのものでも、少しづつ口にいれたり、匂いをしっかりかがせたりすることで、なれさせてやらなければならないのである。家ではそうしている。だから、家の食事はよく食べる。
けれどもあいかわらず施設では、担任の方針で、食事は自力で、ということになっている。おまけに出される給食は臭くてまずい。これでは嫌いなものはいつまでたっても食べるはずがない。それなのに、先生方の言うことは、
「家庭で偏食を助長するのを、やめてください」
である。
どーしろというの?
家でもわざわざマズいもの作れって?
おまけに、
「このごろ◯◯君が下痢ばっかりするのは、偏食のせいですよ」
とまで言われた。
冗談ではない。
ムカついたので、1週間ほど前、手紙を書いて、息子に持たせてやった。
○○先生に、偏食のせいで下痢をしているのだから、家庭で偏食を助長するのをやめろと言われましたが、家庭では十分に偏食改善の努力をしており、家の食事においては、偏食はほとんど見られません。食べないのは施設の食事だけです。はっきり申し上げて、ちかごろ頻繁に起こす下痢は、施設のプールの水を大量に飲むせいだと思います。プールの水ではなく、水道の水を飲ませてやってください。
いまのところ、手紙は黙殺されたままである。
(2001年7月31日)
※過去日記を転載しています。