明治四十一年から昭和十二年までの間に「ホトトギス」に掲載された雑詠の句を編集したもの。
最初ざっと眺めてみて、なんか古くさいなあと思った。
ちかごろは、ちょっと前衛的なにおいのする句や、都会の風景を感じさせる句に触れて引かれることが多かったので、なおさらそう思ったのだろう。現代の(私の)日常風景の中には凍鶴も獅子舞も羽子板も見あたらない。強力なエアコンのある部屋に越してきてから、視界のうちからコタツも消えてなくなった。
でもよく眺めてみると、今でも古さを感じさせない句がちらほらとみつかるのである。
時の流れとともに古くなってしまうものと、新鮮なまま残るものと、いったいどこが違うのだろうなと、考えさせられる。
(1996年2月5日)