kindleの読み放題(unlimited)で読んだ小説。
石田リンネ「十三歳の誕生日、皇后になりました。」
古代中国っぽい文化を持つ国で、クーデターが起きた。
その日、主人公の莉杏(リアン)は、後宮入りするために、祖父とともに皇帝に御目通りを願うはずだった。
ところが、謁見の間で待っていたのは、アラサーの皇帝ではなく、血まみれの姿をした若き皇弟、暁月だった。
暁月は、汚職と浪費で傾きかけた国を立て直すために、実兄である無能な皇帝を殺害し、いままさに帝位簒奪を成し遂げようとするところだったのだ。
皇帝に即位するためには、同時に皇后を立てる必要があった。暁月は皇后になるべき女性の到着を謁見の間で待っていたのだが、クーデターのどさくさで、その女性は殺害されてしまっていた。
何も知らずに謁見の間に上がった莉杏は、事情のわからないまま皇后になることを決められて、前皇帝の遺体の入った棺の前で行われる即位の儀式に強制参加させられた。
そこで初めて、自分が簒奪者の皇后にされたことに気づいた莉杏だけれども、護国の神獣朱雀による加護を受けるときに、危うく暁月ともども焼殺されかけるという試練に遭遇する。神獣朱雀は空想上の生き物などではなく、現実にに介入する力を持つ超常的な存在だったのだ。
帝位簒奪者を焼き殺そうとする灼熱の炎のなかで、暁月は、成り行きで巻き込んでしまった莉杏を必死で庇って逃がそうとする。暁月の冷酷さの裏にある優しさを知った莉杏は、死の瀬戸際で暁月の皇后として運命を共にする覚悟を示す。それを真実の思いと認めた神獣朱雀は、二人を新たな皇帝と皇后と認めて、加護を与えた。
その後の物語は、たった十三歳の莉杏が、持ち前の冷静な観察眼と分析力、人情を深く理解する豊かな感受性によって、皇帝暁月とその腹心の部下たちを支え、名実ともに皇后となっていこうとする、その序章という感じだった。
後宮入りするための英才教育を受けて育った莉杏が、年に似合わない知性と行動力を発揮して、宮廷に巻き起こる事件に立ち向かい、人々が抱える心の闇まで払っていく様子が痛快で、成長したら皇帝以上の傑物になりそうだった。そんな莉杏が、常に斜に構えて本心を見せない暁月に対して、体当たりの愛情をぶつけまくって、自分でも知らないうちに陥落してしまうところも、かなりツボだった。
この「十三歳の誕生日、皇后になりました。」は、どうやら「茉莉花官吏伝」というシリーズのスピンオフ的な作品らしい。
こちらは、暁月皇帝のクーデターを裏で支援していた別の国の皇帝の物語だそうだ。
面白そうなので読んでみたいけれど、残念なことに、現時点で石田リンネ氏の作品で読み放題なのは、今回読んだ「十三歳〜」だけのようだ。