湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

ネット小説読んだ日記

 

小説家になろう」で最近読んだ作品の感想メモ。

 

 

「冷血竜皇陛下の『運命の番』らしいですが、後宮に引きこもろうと思います〜幼竜を愛でるのに忙しいので皇后争いはご勝手にどうぞ〜」(柚子れもん著)

 

異世界恋愛もので竜族といえば、本能に導かれて結ばれる「番(つがい)」の存在がクローズアップされることが多い。

 

このお話では、本能による出会いが(「番」発見)先で、恋愛(相思相愛)がその後についてくるのか来ないのか分からないまま、ぎりぎり最後まで煩悶する竜族の有り様が、気の毒ながらも面白かった。

 

妖精国の姫君エフィニアは、竜族の帝国である皇帝グレンデルの「運命の番」だと言われ(謁見の場でいきなり首を甘噛みされたことから判明)、異種族でありながら問答無用で後宮に放り込まれてしまう。

 

成長スピードの遅い妖精族のエフィニアは、既に成人しているにもかかわらず、見た目がつるっぺたの幼女であるため、帝国では全く大人扱いしてもらえない。

 

皇帝のグレンデルも、内心では「番」のエフィニアが気になって仕方がないのに、周囲にロリコン変態男と思われたくないために、「あんな子供みたいなのが俺の番だとは心外だ」などと心にもないことを言ってしまう。

 

たまたまその暴言を耳にしたエフィニアはブチ切れたものの、属国の姫であるため勝手に帰国することもできず、皇帝の存在を無視して後宮で引き篭もり生活をすることを決意。

 

そこから二人は盛大にすれ違い続けることになる。

 

陰謀渦巻く後宮で、屋根に穴の空いたボロ屋敷に追いやられ、侍女も食事も与えられないエフィニアは、手足となって働いてくれる精霊たちを呼び寄せて自給自足生活を開始。

 

そのまま気楽なスローライフが始まるかと思いきや、エフィニアとの距離を縮めたい皇帝があれこれとちょっかいをかけてくるために、後宮に住まう有力な側室たちの嫉妬を買って、嫌がらせや強迫を受けるようになる。

 

見た目は幼女でもしたたかで豪胆な性格のエフィニアは、嫌がらせを華麗に跳ね返していたけれども、皇帝が何かと自分を構うのは、本当の寵姫を側室たちから守るためのカモフラージュだと誤解したうえで、皇帝の本気の恋を応援しようと決めて、わざわざそれを皇帝に伝えてしまう。

 

そんな殺伐としたすれ違い生活のなか、エフィニアは自分の屋敷の近くで幼竜を発見し、その愛らしさに夢中になって、熱心に餌付して愛玩しはじめる。

 

でもその幼竜の正体は皇帝その人で、変身が解けた状態で後宮から朝帰りする姿を女官に目撃されたりしたために、話がどんどんややこしくなり、ついには白昼堂々エフィニアの命が狙われる事態に至り….

 

もちろんハッピーエンドで終わるのだけど、結構「良い性格」のエフィニアと、結果的に幼女を追いかけ回して縋り付く変態みたいなことになってしまった皇帝が気に入ったので、もっと続きがあればいいのにと思いながら読了した。

 

 

 

「勘当されたので王宮で聖女はじめます」(新山サホ 著)

 

魔法の存在する異世界のお話。

全12話。

 

ヒロインのユノは、魔法使いの名門の家に生まれながら全く魔法が使えなかったために、家族に疎まれ、家の中に居場所がなかった。ユノは自分を虐げる母親や妹にまごころを尽くして働いたけれども(父親は故人)、与えられるのは蔑みの言葉だけだった。

 

こういうお話での敵役って、たいてい後妻の義母と連れ子の義妹だったりするけど、この作品では実母と実の妹なので、理不尽さが結構半端ない。

 

あるべき能力を持たないというだけで、肉親を完全に異物扱いして排除できる精神構造は恐ろしいけど、骨肉の争いなんていう言葉もあるくらいだから、人間全般にとってはありふれた感情なのかもしれない。弱い個体を見捨てるという意味では、動物的なのかもしれない。

 

そんな具合に家の中が地獄だったユノにとって、時折遊びにくるディルクという優しい少年との交流だけが心の支えだった。ディルクが保護者と共に遊びに来るときは、見栄っ張りの母親が家族の関係を取り繕って優しくなることも、ユノにとってはありがたかった。

 

ディルクも、心優しいユノを大切に思っていたようで、ある日婚約を申し込んんで指輪を渡してくれたけれども、それを聞きつけたユノの母親と妹に脅されて無理やり断らされて、指輪もディルクに送り返されてしまった。

 

婚約の申込みを拒否されたディルクは、「二度と会いたくない」という言葉を残して去ってしまう。自分のせいで愛するディルクを傷つけてしまったことを、ユノはいつまでも悔いつづけたけれども、どうすることもできなかった。

 

その後、家の財政が傾くにつれて母親と妹のモラハラは激しさを増していき、とうとうユノは勘当されて屋敷を追い出されてしまう。

 

失意のユノは王都に流れつき、王宮の下働きの侍女として何年も働いていたけれど、そこで思いがけず、恋焦がれていたディルクと再会することになる。

 

ディルクは第三王子という身分だったのだけど、一時期暗殺者に狙われされていたために身分を隠して王宮を離れていた。そのあいだにユノと出会って、相思相愛であると信じて結婚を申し込んだのに、あっさり断られたために、すっかり心を拗らせて、腹黒な皮肉屋に変貌していた。

 

ディルクはユノからの婚約拒否が母親や妹の意向だったことを知らないまま、侍女として再会したユノに辛くあたる。その度にユノは深く傷つきながらも、ディルクへの思いは深まるばかりだったので、読者としてはディルクの株価は下落の一途だったけど、短めのお話なのでどん底に至る前に挽回することになる。

 

魔法が使えなかったユノが、稀有な魔法を覚醒させて高位な貴族を救ったことから聖女と認定される。それを知った実母と妹が猛スピードで王宮に駆けつけて、ユノを支配下に置いて金をたかろうとしたけれども、ようやくユノの家庭事情を知ったディルクが王族の威光と権力を振りかざして、あっさり撃退してしまう。そして再度の求婚。一悶着あったものの、今度は思いが叶ってハッピーエンド。

 

短いお話だったけど、なんだか濃かった。

 

 

「婚約者の浮気現場に遭遇致しました……勘違いなさっているようですがお別れですよ?」(やきいもほくほく 著)

 

女性側からの婚約破棄もの。

全9話の短編で、タイトル通りの状況が語られる。

 

顔と家柄以外に取り柄のない男が、真っ裸で不貞行為を働いている姿を婚約者であるヒロインに目撃されて、見苦しい言い訳を展開するものの、あっさり破滅して終わる。

 

元々婚約相手が大嫌いだったヒロインは、浮気現場を押さえて、手抜かりなく最後通牒を突きつけたあと、上機嫌で帰宅。

 

短いお話なのでヒロインのその後については描かれていないけど、きっと元婚約者とその不貞の相手から莫大な慰謝料を搾り取ったあと、自分と同等以上の男性を伴侶に選んでたくましく生きていくのだろうなと思った。めでたしめでたし。

 

 

「公爵令息様を治療したらいつのまにか溺愛されていました」(Karamimi 著)

 

本編は24話で完結して、その後は後日談が連載されている。

 

領地の災害復旧のために没落しかけていた伯爵家の令嬢セリーナは、家族を助けるために治療師になり、町の診療所で献身的に働いていた。

 

そのセリーナの元に公爵様がやってきて、難病で全身が緑色に爛れてしまって余命いくばくもない令息を治療してほしいと頼んだことから、セリーナの運命は激変する。

 

公爵家に住み込んで治療にあたることを命じられたセリーナは、公爵令息の病気が特殊な寄生虫によるものであることを突き止め、自分の豊富な魔力と食事療法を組み合わせて根気よく治療に取り組み、病気ですっかり性格がねじけていた令息の根性も叩き直しつつ、病状を改善していく。

 

病気が治りかけるころには、公爵令息とセリーナはすっかり相思相愛になっていて、公爵夫妻もセリーナの人柄に惚れ込んでいたので、二人の婚約は何の障害もなく成立するはずだった。

 

ところが公爵令息の元婚約者だった王女が、セリーナに王宮の治療師として生涯独身を貫くことを命じて、絶対に拒否できない任命書まで渡してきたため、愛する人との結婚を待ち焦がれていたセリーナは一転して絶望に包まれることになる。

 

我が儘な王女は、公爵令息が難病で肌が爛れて醜い姿になった時には、罵詈雑言を吐いて自分から婚約を解消したのに、病気が治って美しい容貌を取り戻したと知った途端、自分のものにしたくなったのだった。

 

王女は物語のなかの「ざまぁ」対象要員だけに、なかなか悪辣だったけれども、わりと短めのお話でもあるため、セリーナの絶望は正味1日で終了。すっきりめでたしめでたしで終わる。

 

 

「悪役令嬢です。婚約破棄されましたが、邪神に執着されてSAN値がピンチです」(鈴木日万利著)

 

全30話。

 

小説家になろう」内に数多く存在する「悪役令嬢、婚約破棄もの」のなかにあって、とんでもなく異彩を放っている作品…だと思う。

 

現代日本で事故死したあと、ありがちな乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったクティアーナは、前世の知識を駆使して、婚約者の王子たちによる断罪シーンを無難にやり過ごし、死刑を回避してスローな余生を送ろうと計画していた。

 

ところが断罪の場に、なぜかクトゥルフ神話最強の邪神であるアザトースが召喚され、その場の人々が漏れなく惨殺されたばかりか、異世界丸ごと完全消滅してしまう。

 

ところが気づけばクティアーナの時間は断罪数日前に巻き戻っていた。

 

乙女ゲームでの処刑よりもはるかにおぞましい破滅的未来を体験したクティアーナは、なんとしてもそれを回避すべく、自らの惨殺とタイムループを繰り返しながら試行錯誤することになる。

 

ありふれた乙女ゲーム異世界だったはずなのに、注意深く探索すると、なぜかクトゥルフ神話の関係者がちらほらと紛れ込んでいる。

 

けれども彼らは必ずしもクティアーナの敵ではないらしく、アザトースを召還(=世界の終焉)は困るという利害一の致から協力関係を結んだりもするのだけれど、そもそも人間などに情を持つはずもないクトゥルフの神々が、クティアーナを守ろうとするはずもなく……

 

グロい恐怖シーンの多いお話だったけど、最愛の人が実はニャルラトホテプだったというのが一番恐ろしかった気がする。そんな乙女ゲームは御免だ。