今回は、ちょっとにおいそうな歌。
【目次】
高宮王の屎葛の歌
皂莢(そうきょう)に延ひおほとれる屎葛(くそかづら)絶ゆることなく宮仕えせむ (3855)
万葉集 巻第十六
作者は高宮王という人。
「王」とあるので皇族だと思われるけれども、詳しい系譜は不明のようで、この歌を含めて二首だけが万葉集に掲載されている。
「皂莢(そうきょう)」は、サイカチの木のこと。
マメ科の木で、私は見たことがないけれど、幹から枝にかけて、かなり凶悪な見た目のトゲがある。
「おほとる」は、毛や蔓などが乱れるという意味だと、岩波古語辞典にある。ただし用例が少なく、はっきりしないらしい。類語らしきものに、下二段活用の「おぼとる」があり、毛などがからまって乱れる意味なので、そこから類推してあるのかもしれない。
「屎葛(くそかづら)」は、ヘクソカヅラのこと。葉などをちぎって匂いをかぐと、名前から想像される通りの芳香が漂うそうである。機会があれば、勇気を出して一度体験してみたい。
高宮王は、「凶悪な棘だらけのサイカチの木に這いずりまわってこんがらかっている、臭い臭いヘクソカヅラのように、永遠に宮仕えをしよう」といっている。
素直に、宮仕えへの意欲を表明するにしては、喩えに使っている植物が特徴的すぎる。
たぶん、何か含むところがあるのだろう。
【意訳とは名ばかりの何か】
よう、久しぶり。
就職してから会うのって、はじめてだっけか。
うまくやってるかって?
ま、それなりにね。
どーせ、いつクビになるか、賭けでもしてたんだろ。
お見通しなんだよ、お前らの思いつくことなんざ。
ぶっちゃけ、居心地悪いよ、宮仕えってのは。
どいつもこいつも、トゲトケしてやがってさあ。
物言うと、なーんかすぐ、鼻つまみもん扱いだし。
俺が屁でもこいたのかっつーんだよ。
ご清潔な連中には、
俺のヒラメキの価値が、わかんねーのよ。
そりゃちょっと、
下ネタベースのジョークが多めだったけどさ。
それをやめとけって?
やなこった。
引かれようが鼻つままれようが、
俺は俺の道をクサーく行くのさ。
トゲトゲのサイカチの大木にも
しぶとくシツコくからみつく
あのヘクソカヅラのようにな。
宮中がクサくて近寄れなくなるって?
知るかよそんなこと。
悪臭上等!
くやしかったら鼻に栓して来やがれってんだ。
(2005年06月14日)
※過去に書いた文章を修正して掲載しています。