湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

万葉集・カラスのまぶたはなぜ腫れたのか

前回に続き、高宮王の怪しい歌について。

 

【目次】

 

高宮王の怪しい歌

 

波羅門の作れる水田(をだ)を食む烏(からす)瞼(まなぶた)腫れて幡桙(はたほこ)に居り  (3856)

 

万葉集 巻第十六

 

つまらない現代語訳

波羅門が作った田を食うカラスは、瞼を腫らして幡桙に止まっている。

 

語釈


「幡桙(はたほこ)」は、のぼりのような旗をつけた、ほこのこと。朝廷の会議や法会(ほうえ・仏法を解いたり亡くなった人を供養するための集会のときに立てたという。


それからカラス。田んぼを食い荒らすカラスなんているのかと思ったけれど、農林水産省の「野生鳥類被害防止マニュアル」を見ると、市街地でゴミ袋を荒らすだけでなく、スズメなどと同じように、田を荒らすことがあるらしい。

 

婆羅門

 

和歌にいきなり「波羅門(ばらもん)」が登場して驚くが、小学館の日本古典文学全集(新編)の頭注によれば、この歌は、「ムツキアラヒ」という、お下品な内容の伎楽(ぎがく)に基づいて詠まれたものだという。

 

伎楽は、推古天皇のころに百済から伝えられた仮面劇のこと。飛鳥時代から奈良時代にかけて、寺院で盛んに上演されたという。

 

「波羅門(バラモン)」はインドの最上階級のことだが、伎楽では、妖しい動作でムツキ(ふんどし)を洗う芝居を演じるらしい。

 

ふんどしを洗っているということは、つまりその波羅門は、下半身が解放状態ということになる。伎楽では、崑崙(くろん)という登場人物が、男性器を模した物体を振り回して貴婦人にいいよる、なんていう演目もあるそうだ。

 

なんだってそんなものを寺院で演じたのかは、私にはさっぱり分からない。

 

人寄せのためか。それとも、儀式の上で、神聖なものを汚してみせる必要でもあったのか。
 

とにかくここまでの知識をもとに解釈すると、この歌は、

 

「下半身を大解放した姿でふんどしを洗っているバラモンの作っている田んぼを食い荒らすカラスは、まぶたを腫らし、幡桙に止まっている」


ということを言っていることになる。


全くわけがわからない。

 

一方、岩波文庫版「万葉集」(四)の解説には、こんなことが書いてある。

 

「婆羅門」は古代インドの四姓の最高位。仏法に帰依し、耕した田を僧侶に布施する檀那であった。ただし、ここは天平八年(736)に渡来したその階級出身の僧、菩提僊那(ぼだいせんな)を指すか。大安寺に住して荘田を与えられた彼は、婆羅門僧正とも呼ばれた。

 

「小田」は田の歌語。烏のまぶたは腫れたように見えることがある。烏は実際は稲穂を荒らす鳥ではないが、そのまぶたの腫れを、檀那の田を食ったことへの仏罰だとみなして戯れた。

 

万葉集」(四) 岩波文庫

 

フンドシを洗っている婆羅門は一体どこへ行ったのか。

 

ますます訳が分からなくなったので、勝手に想像させていただく。

 

 

意訳とは名ばかりの何か


俺さ、こないだ、伎楽ってのを見たのよ。
お前、見たことある?
おもしろいよな、あれ。
けっこう卑猥だし、笑えるし、
コンチネンタル系のパフォーマンスだけど
俺の好みに合ってるっつーか。

 

でな、ちょうどバラモンがふんどし洗うんで
フ●チンになったとこで、
カラスが飛んできたのよ。
それがおかしなカラスでさあ。
旗ざおに止まって、じーっと、
バラモンのナニのあたりを、凝視してるわけよ。
そしたらさ、そのカラス、
だんだん目が腫れてきてやんの。
びっくりしたぜ。
目が腫れてくるカラスなんて、
見たことねーもん。


あれってやっぱ、あれかな、
バラモンの天罰が下ったとか、仏罰とか、そーゆーのかな。
まあカラスにしてみりゃ、
つマラんもんを見せやがってって、
言いたいところだろうけど・・・

って、おい。
鼻つまむなよな、お前まで。

 

 

↓今回の歌の一つ前の高宮王の歌

dakkimaru.hatenablog.com

 

腐女子の万葉集シリーズ