中沢 シャーマンが難産の女性のところに来て、一緒に女性に向かって歌いかけるのね。それがセラピーになってるんだけど、まずね、その女性に、あなたの産道は実際には神様の通路だって言うわけ。そこにあなたの守護霊と悪霊がいて、大きな戦いをやってるって言うわけ。
シャーマンはその女性に向かって産道を胎児が出てくる過程っていうのをズーッと歌ってやるわけです。
そのリズムと話の内容に合わせながら、女性はものすごく苦しいお産の中を守護霊とともに闘いながら無事通り抜けて出産していく。
神話と音楽が結合したセラピーですよね。
上の発言は、細野晴臣の「お誕生会」という曲のイメージに喚起されて出てきたもの。
大難産の経験者として言わせてもらえば、陣痛室で七転八倒しているときに、守護霊と悪霊がバトルする歌を聞かされたら、悪霊か歌い手が退散するまでテニスボールをぶつけまくる予感しかしない。
私がお世話になった産院の陣痛室には、「いきみ逃し」のお供用の硬式テニスボールが、100個ぐらい常備されていた。
陣痛室の定員は5人ほどで、「いきみ逃し」には一人一個あれば足りるのに、なんであんなに山盛りのテニスボールがあったんだろうと、ずっと謎だったんだけど、ひょっとしたら、何かを穏便に退散させるためのアイテムでもあったのかもしれない。
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うちにある「観光」の奥付を見ると、1990年2月27日第一刷と書いてあり、用例採取しながら読んだ形跡もある。
当時はまだ学生だったので、文庫版が出ですぐに購入して読んだのだと思うけど、内容を全く覚えていない。
当時、細野晴臣の音楽はよく聴いていたけど、好きだからというよりも、重苦しい日常を消化していくしんどさに妙にフィットする曲が多かったから、何となく選んでいたのだと思う。
中沢新一については不勉強で、著書をまともに読む機会がなかった(たしか「チベットのモーツァルト」を読みかけて、チベットスナギツネみたいな顔になって挫折したような記憶…)。
今日の一文(一月二十一日)…岡本綺堂 - 湯飲みの横に防水機能のない日記